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(6)女社長攻略 |
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「何度もお願いに伺ったのですが、伊田社長は頑として受け入れられません。年寄りは駄目、若者しか使わないと言われて――」
シルバー人材センターの担当者は、悔しさを滲ませて報告した。 話題の伊田社長は現在52歳、小柄な女性ながらエネルギーの塊である。また、金儲けに関しては独特の嗅覚を持っている。どんな政治力を使ったか不明だが、隅田川沿いの広大な緑地を国から借り受けて、ハーブ園に変えた。 それが、今や浅草の観光名所のひとつになっている。 有栖一郎は公約のひとつとして、「高齢者の就業機会の確保」を掲げている。そして件のハーブ園は、シルバー人材の活用では、うってつけの所である。警備員や清掃員、それにハーブの手入れにも。 しかし伊田社長は、大学のアルバイト生など、若者しか使っていない。 まあそれはそれで若者の生活費援助という意味で良いのだが、若者はとかく面倒くさい仕事を嫌がって、従業員の入れ替わりが激しいと聞く。 台東区はそれをカバーする意味で、根気や経験、専門知識などを持つ、シルバー人材の採用を勧めていた。 この日は、シルバー人材センターのほかに、観光課や広報課の職員も集まって、あれこれアイデアを出し合ったが、らちが明かない。一郎はいったん検討会議を打ち切った。 水曜日の昼下がり、今日のディック探偵社は、いつもと様子が違った。普段なら昼飯で腹が満ち足りて、将棋を指すか、ソファーに寝そべって雑誌を見ている。要するにだらけているのだ。 それが今日は、朝から拭き掃除をしたり部屋の片付けをしたり、滅多にないことだが、花瓶に花を活けて受付カウンターの上に置いたりしている。 なんとなれば、有栖区長が初めて事務所を訪れるのだ。区長は二郎の実兄だが、従業員たちはいつになく緊張しているようだ。 そんな様子を見るにつけ、自分と兄の格の違いを見せつけられているようで、二郎はあまりいい気分ではなかった。 有栖区長がやってきた。お付きがいず、単独行動である。さっそく泰平が出迎えて、うやうやしく応接室に通した。柄にもなく礼儀正しい。 有栖兄弟がソファーに落ち着いたところで、83歳の山家老人がお茶を持ってきた。こちらも神妙な顔つきで、お茶をテーブルに置くと、チラッと上目遣いに区長を見る。まるで神社でお参りしているような神妙さだ。 二郎は内心、舌打ちした。神様でもないのに、まったくどいつもこいつも。 「で、調べはついたのか」 二人きりになると、一郎はさっそく打合せを始めた。 シルバー人材の件で行き詰った一郎は、弟の二郎に相談した。伊田社長を篭絡するには、お堅い役人より二郎のような商売をしているほうが、色々とアイデアがありそうだと思ったのだ。 「ああ、大体は。あの女社長、相当の食わせ者だぜ。アルバイトの若者たちは、ハーブ園で働くだけでなく、夜のご奉仕もさせられてるようだ」 二郎はこれまで密かに、伊田社長の人となりを調べていた。 「それで、何かアイデアが浮かんだのか」 「ああ、まあね。最初は若い従業員たちを何人か懐柔して、セクハラやパワハラで伊田社長を告発させ、揺さぶりをかけようと考えたけど――」 二郎は頭を振った。「あまり効果がないだろう。なにしろ、敵さん、煮ても焼いても食えない女狐だ」 「じゃあ、打つ手なしか」 「それが、あるんだな――シゲルだ。あいつを伊田社長にぶつける」 木原繁は、母方の従兄弟である。52歳の独身、恰幅の良い肉体と父性愛溢れる顔をしているが、根っからの女タラシである。 一郎は顔をしかめた。 「あいつが、こちらの言うことを素直に聞くか?」 「俺は兄貴と違ってワルだからな。シゲルとは気が合う。それにおそらく、あいつが断り切れない人物が、うちにいるんだ」 二郎は立ち上がると、ドアを開けて声をかけた。「教授、ちょっといい?」 小柄な老人が顔を見せた。今日の為に呼ばれていた。 二郎が紹介した。 「電子工学の専門家、大石昇さん。ときどきうちの仕事を手伝ってくれてる」 二人を引き合わせると「教授、ありがとう。もういいよ」 老人がいなくなると、一郎は訊いた。 「あの老人が何だって言うんだ」 「シゲルの生い立ちに関係するんだ」 二郎は説明を始めた。 ――繁の父親は鉱脈の発掘技師で、日本中あちこちの山で試し掘りをしていた。試し掘りしたのは山だけではなかった。結果、料理屋の娘を孕ませ、生まれたのが繁である。ところが娘の父親は、家に殆どいない男に見切りをつけて、二人を別れさせた。そして自ら、孫の父親代わりをしだした。 繁と爺さんは、いつも一緒だった。夜寝るのも、風呂に入るのも、学校の行き帰りも。そんな爺さんだったから、繁は心底信頼していた。その爺さんが死んだときは、この世も終わりと言わんばかりに嘆き悲しんだ。そして大石老人は、その爺さんと瓜二つと言えるほど良く似ている。 話を終えると、二郎は兄に向って言った。 「とにかく、俺に任せてくれ。教授を連れて、シゲルに会ってくるよ」 木原繁の住まいは、鶯谷のアパート、2階にあった。だからディック探偵社から歩いて行けた。 玄関ドアの前に立つと、微かに女の悲鳴のような声が聞こえてくる。二郎と大石老人は顔を見合わせた。気を取り直してインターホンを押すと、女の声が止み、しばらくして男の声がした。 「誰だ」 「二郎だ。ドアを開けてくれ」 「仕事中だ。あと10分待ってくれ」 ふたたび女の声が聞こえだした。その声はじょじょに大きく、ついには切迫した悲鳴になった。そして、不意に止んだ。 しばらくして玄関ドアが開き、中年の女性が出てきた。どこにでもいるような、おばちゃんだった。顔がまだ上気して、足元がおぼつかない。 ![]() 木原繁は浴衣姿で出てきた。はだけた胸に汗が滲み出ている。 「よお、待たせたな」 そこまで言って、二郎の背後にいる大石老人の顔を見て、目を見開いた。 「爺ちゃん――」シゲルの口から、小さな声が漏れ出た。 二郎は予想通りの反応に気を良くして、老人を紹介した。 一週間後、木原繁はディック探偵社に向かって歩いていた。 肉付きの良い艶やかな顔に小さな優しい目、鼻翼のふくらんだ太い鼻が、精力的に見える。そのうえ恰幅のよい体だが、52歳の年齢以上に老けて見える。外見には、どこかの裕福な旦那衆と思われがちだ。 しかしさんざん放蕩した挙句、資産家だった祖父の代からの財はほぼ使い尽くし、家屋敷も借金のカタに売り払った。今はその余剰金で、細々と生活している。 若い頃は東京都の職員だったが、何人かの女性と不倫関係に陥り、結局懲戒免職となった。そのあとはトラック運転手をしたり、酒場の店主をしたりしたが、いずれも長くはもたなかった。 彼には何のとりえもないが、唯一誇れるとしたら精力の強さだろう。だいたい、有栖兄弟もそうだが、母方には精力絶倫な人物が多い。中でも繁は、異常体質と言えるほど精が強かった。 事務所に着くと、総員で出迎えてくれた。しかも繁が苦手とする、いとこの有栖一郎までがいる。 なんで区長がこんなところにいるんだよ――。 一郎は柔なデブに見えるが、合気道をやってただけに、鋼のように強靭な精神の持ち主だ。これまで繁は一郎を甘く見て、何度か痛い目にあったことがある。 「シゲル、お前だけが一縷の望みなんだ。よろしく頼む」 区長がざっくばらんに話しかけた。今日は当の女社長に会う予定である。 (ハイハイ、つまりハーブ園の女社長を垂らし込めばいいのね) 繁は内心とは裏腹に、おとなしく頭を下げた。 ついで事務所の皆が声をかける。 「グーでパンチしたくなっても、堪えるんだよ」 「そうそう、敵さん、国宝級の毒舌家。何を言われても手を出すなよ」 (手は出さないが、真ん中の足は出すけどな。たぶん――) ふと頭に浮かんだ冗談を呑み込んだ。 最後に大石老人が「頑張ってください。あなたを信頼しています」 ひたむきに、いじらしい子犬のように見つめてくるので、胸が熱くなった。 繁は思わず言っていた。 「ええ、約束します。きっと成功させますよ――お爺ちゃん」 実際に会った伊田社長は、聞きしに勝る女性だった。自分と同じ52歳、小柄ながら結構若く見えた。 繁は、ディック探偵社で渡された、急ごしらえの名刺を差し出した。名刺には、台東区役所のシルバー人材センター、嘱託、木原繁とある。 女社長は名刺をチラリと見て、開口一番、まくし立てた。 「あら、今度はいい男が来たわね。でもだめよ。年寄りを雇うなんてダメ。私は年寄りが大嫌いなんだから」 「でも、経験豊富ですし、今のお年寄りは、昔と違って――」 説明を始めたそばから、女社長は遮って持論を唱える。 「だって、オッ立てることできるの?大体男って40を過ぎたころから――」 そこで繁を見て「あなた、何歳になる?」 「はあ――52になりますが」 「あら、私と同級生?それにしては老けてるわね。もう、アチラのほうは不自由してるでしょ?」 「はあ――相手次第だと思います。社長のような方がお相手なら――」 「私がお相手なら、何だって言うの?」 繁はおもむろに答えた。 「はあ、私は熟れたほうが好みでして――」 女社長がニヤリとした。 「あらあなた、鈍感なようでよく言うわね。これからホテルに行く?」 こうなれば繁の得意分野である。 さっそく二人してラブホテルに行き、コトに及んだ。 耳元で囁きかけながら、ソフトタッチで女社長の感じるところを探っていく。 スイートスポットが分かると、そこを重点的に刺激する。舌と指を総動員して、じらしながら――。 ――ねえ、早く――早く入れて。 小さな身体を捩らせて、女社長が喘ぐ。 ――了解。 ひと声上げると、脹れあがった亀頭を割れ目に合わせてから、小刻みに腰を前後しながら、巨根を根元まで埋め込んでいく。 ――ひいっ!いいいーっ! いよいよ壺にはまると、今度はハードタッチでズポズポと――。 延々1時間近く熱戦に及んで、ようやくフィニッシュした。 女社長は息も絶え絶えに、ぐったりとして言った。 「――降参。こんなに完膚なきまで弄ばれたのは初めて。――いいわ、あなたの言うことは何でも聞く」 これで一件落着、繁はおおいに男をあげたのである。 その後、木原繁は台東区のシルバー人材センター嘱託社員として、正式に採用された。もっとも担当は、伊田社長のハーブ園専属だが。 ある日、繁がディック探偵社に立ち寄ったとき、有栖二郎は訊いた。 「先だってお前のアパートに寄ったとき、表札が消えてたけど――」 「ああ、アパートは引き払った」 繁はバツが悪そうな顔をした。「そのう――大石爺さんの家に引っ越したんだ。これからは、一緒に住むことになった」 二郎は、従兄弟の顔をまじまじと見た。 「あ――いやらしい。出来ちゃったんだ。お前、女専科じゃなかったのか?」 「そんなこといつ言った?俺はホモに偏見なんて持ってないぞ」 「ふーん、じゃあ俺のキューピットの矢が刺さったんだ」 横から泰平が言った。 「違うよ。シゲルさんのことだ、強引に太い矢じりで、教授のお尻をこじ開けたのさ」 |
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24/06/24 05:45 神亀
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