談話室B「男色のめぐり逢い」

Q.1 貴方の男色への切っ掛けをお教えてください。
本名薫ですが今は”かおる”です。
60歳で宮仕えはきっぱり、収入は半減ですが自分を大切にできて少しは世の中に役立てる仕事をと介護に転身しました。
やりがい生きがいはあるのですがそれはそれでどんな仕事にも大変さはあってお年寄りは好きなのですが深入りすれば避けられないのがお別れのあることの気持ちの負担です。
そういう中で知り合ったのがお父様を介護してあげた息子さん。
私より二つほど年下、独り身で優しい方です。
少し認知が進んでますが大人しい穏やかな方ですが体格が良くて女性ではお世話しきれず私が担当することになりました。
お爺ちゃんは大好きですし喜んでお世話しましたがお付き合いはわずか1年半、元気に明日またねとお別れして翌朝眠るように息を引き取られていたとか、通常は参加しないのですがお通夜と告別式に参加しましたがご親族も少なく息子さんに強く乞われて火葬までお付き合いをいたしました。
その縁がこうなって今ではお仏壇にお線香をあげるのは私の役目。
お仏壇の中で仲良く並んだ二枚のお写真に手を合わせています。
私も独身、彼も独身、つきつめてみれば二人ともこちらの世界の住人であったわけでお礼にと誘われたお食事でズバリと告白されそれが私へのお気持ちの吐露でもあったわけで結局お仏壇にそれをご報告することになり毎朝のお線香のお供えになったわけです。
私は65,彼は63,年上ですがお父様同様に巨漢巨躯の彼に頭一つ小柄な私はようやく安住の場を得たように溶け込めています。
お仏壇の戸を閉めて彼の待つ寝間にいきますと太い腕に絡み取られるように引き込まれ浴衣の裾を割られます。
いつものことなので下履きはつけていませんからはだけた身体は意のままでやがて巨躯に似合った腰のものを宛がわれて苦悶の儀式。
もう幾たび彼のもので満たされたことか、大きな体に包み込まれ時は乗せられ時には背に乗せて女の身体で務めを果たします。
男にかしずくことに安堵の思いをいだきながら男社会のなかで男を演じ地位を得て地位を守る、それに疲れ果てて捨てた宮仕えです。
ひとつ二つ年下であっても男社会を生きれる強い男にかしずいてしまうと脱ぎ捨てた男の仮面と鎧はもう身に着けれません。
一歩退き男をたてて男に身をゆだねる、もう戻らない覚悟でそれに甘受してその幸せを守る、そらが今の私です。
同居を承諾する条件に心だけでなく二人だけの空間での身なりも女を装うことを承諾させました。
女装願望を願ったのではありません。
覚悟として男を捨てることを願ったのです。
ですから身なりは殊更に女性ではありません、かといって男ではないから微妙ですが男っぽい服装ではないという程度。
化粧はします、それは老いを隠すため、少しでも若々しくありたいという願いですからケアを中心としたもので紅を入れても極々薄くです。
閨での様子は女を隠しません、女の恥じらい、女の喜びをあらわにして彼の男を受け入れます。
男色の世界は不思議というよりなるようになれば帰結は所詮男と女にいきつくようです。
男と男、それは傍目の話で、当人同士からみれば性の交わりは男と女の行為にいきつきますから抱かれる男は当然女になります。
女にされた男と女にした男の行為の先に生活があれば当然女の役目があって男の役目があるわけでそこからは世の夫婦となんら変わりはなくて人から見れば男同士でも本人達の意識は普通に夫婦。
まして60を超えてのふたりですから色恋の生臭さは消えて同類相哀れむ或いは相慈しむで愛しみ合うの熱を取れば慈しみ合っての終の棲家、そんな感じでしょうか。
幸いまだ生臭さが消えず、というより互いに水を得て羽ばたき合っている始末、彼も余程自分を抑えて生きてこられたのでしょう。
その点で荒れていないというか未使用或いは荒い使用はしていないようで例えれば碌に走行しないまま保管されてたクラシックカー。
エンジンをかけてみればなかなかの排気量で痛んでないから馬力もそこそこ、無理はできないけれど大切に乗ればまだまだ走れます。
仏壇の戸を閉めながら大きな体ニコニコ微笑まれていたお爺ちゃんを思い出しながら手を合わせています。

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