談話室B「男色のめぐり逢い」

Q.1 貴方の男色への切っ掛けをお教えてください。
やんわりと真綿で包まれるように男を知りました。
こんな60間近を落としにかかるなんて酔狂な人、考えてはいなかったと言えば嘘になりますが、随分手間暇をかけていつの間にかその気にさせていた、気が付いてはいたけれどまさかと思えば半信半疑でそれが妙に心をざわめかせて楽しんでいたのは事実。
そういう気配が濃厚になって何かありそうな、そんなある日。
温泉でも行かないかのいきなりのお誘い。
断る理由もないから、いいねぇと即答。
伊豆の海はきらきら夕日を光らせて海を臨んだ露天風呂は最高。
これだけ親しくしてたのに一緒のお風呂は初めて、露天の大浴場は流石の絶景と心地よい湯加減、富士山が夕日に染まって大感激。
振り向いたら立ち上がって眺める二人の体も夕焼け色。
股間が目に入りいきなり鼓動が早くなる、夕焼け色の股間も絶景。
男同士、なんの変哲もない光景だけど胸に早鐘が鳴り響く。
海のもの満載の食卓、お酒も進みいつもの気の合った同士の会話。
ひと休みして仲居が布団を敷きに来る。
もう一風呂浴びてくれると入れ替わりで出ていく彼。
仲居が去り私は内風呂、露天では洗えなかった隅々を丁寧に磨く。
見よう見まねでシャワーのヘッドを外し湯温を落とす。
繰り返し湯を出し入れして高まる臨場感、自分の年齢を忘れ胸を高鳴らしてしまう。
ほんとうにそうなのかな、いざとなって不安が湧いてくる。
部屋に戻りテレビをつけるが上の空、彼はまだ長湯のまま。
隣室に並んだ布団が艶めかしい。
蒲団同士の間隔を詰めて先に横になる。
随分待たされた、目は冴えているから半分テレビ半分上の空。
ようやく帰ってきたけれどどうして良いかわからない。
暫く間が空いて彼が意を決したように立ち上がり枕元に立つ。
浴衣を落とすと下は履いてない、夕焼け色を残したものが半分首をもたげていました。
私は布団の片側を上げて灯りを消してと言いました。
声がかすれて裏返ったよう思えました。
男と男が性の行為を交わす、理解はしていましたが頭の中のこと。
でも男のものは熱くて固く、それ以上に厚い胸と筋肉の固さに風呂上りとはいえ熱すぎる体に驚きました。
唇にも筋肉があるかのようで厚い舌にも男、なにもかも男です。
そして彼が男に成ろうとするまでに私は自分の男を棄て去っていた
いたようで唇を吸われ乳首を吸われ男の頭を掻き抱いてあられもない悶えと痴態の渦に巻き込まれていました。
でも男の体を変えるのは大変なこと。
頭ではわかっていたつもりでも言葉だけのこと、まして60を前にした体です、容易に受け入れられない。
それを毅然と譲らず慣れた様子で目的を果たそうとする男、こんなことならと後悔しても後の祭り、時間は掛かりましたがグリッと頭が入ってしまい私は全身を硬直させ耐えきれず抜いてのお願い。
苦痛が治まるまでの長い時間、抱きすくめられたまま、逃げること叶わず再挿入されて私は男を失いました。
男と男、男同士には不思議な安堵感があります。
そういう資質と言われればそれまでですが私は男同士が好きです。
気のおけない空気感というか男と女にはある種の緊張感があってそれが異性の不可解さ異性だから肌身で理解しかねる感情の起伏があって私はそれに疲れてしまうようです。
それが男同士だと男の生理として感情だけでなく肉体の起伏まで理解できるというか安心感があります。
だから彼とは気の合う友人として、さらに気を許せる相手として自然体でいられという心地よさを持っていました。
そこに男と男での性の行為があって、性の行為ですから行為としては男と女、女となった男は男を女の目でも理解し受け入れようとします。
そこに以前から培っていた男同士のわかり合いがあります。
男色は不思議な絆を生みました。
今の私は彼を男として見て男として接していて彼を理解するのは男の目男の目線での理解です。
そしてその理解の表現は女、反応も女です。
男に拓かれた身体は女になって身体を女にすると心も女です。
でも彼を理解するのは薄れたてはきましたが男だった時の目線ですしその目線で男の生理を理解してしまいます。
男色の不思議さは男であって男を失いながらも男を生理的に理解できる男であることを残していることにあると思います。
間もなく60、よい歳をして男色を知って男を失った男の述会です。


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