飯田俊之は新潟の米所で生まれた。上に姉が二人いる、ごく平凡なサラリーマン家庭だった。男の子がひとりだったので、彼は多少甘やかされて育った。とにかく可愛らしくて利発な子だった。
幼い頃、母親に手を引かれて出かけようものなら、必ず人が寄って来る。それは単に童人形のような可愛らしさだけでなく、ちょっとした仕草や笑顔に、思わず惹きつけられてしまうのだ。
俊之が小学生になると、父親は、あまりにも可愛らしい息子を見て、将来虐められることを心配した。そこで町内にある合気道の道場に通わせた。
合気道は、人体の仕組みを理解して編み出された技だ。相手の力を利用してバランスを崩し、そこに自分の力を加えて技をかける。
相手と優劣や勝敗を決めるための試合や競技はなかった。稽古では、技をかける「取り」と、技をかけられる「受け」を交代して行い、心身を鍛錬していく。
この分野で、俊之は意外な才能を見せた。体は小さいのに、技の切れ味は抜きんでていた。相手の力を利用する方法も、まるで本能で、人体の仕組みを熟知しているような動きを見せた。
小学6年生のとき、俊之は合気道の模範演技の大会に出た。彼が、大人を相手に演技したとき、会場内が騒然とした。
「なんだ、あの動きは?」
「まるで作られた動画だ」
「いったい何歳なんだ?」
俊之は可愛らしい顔をして、背もクラスで一番低かったので、年齢以上に幼く見えた。年端もいかない子供が、大人顔負けの活躍を見せたのだ。
俊之の人気全盛期は、小学生までだった。中学校に入ると、クラス仲間の背が急激に伸びた。足が長くスタイルの良い子に人気が集まった。合気道の技を披露する場もなく、俊之が仲間に誇れるのは学業成績くらいだった。
高校生になってようやく背が伸びてきたが、それでもクラスでは一番低かった。それに級友たちの中には、体毛が生えて男らしくなる者も増えたが、彼の体毛は極端に薄いままだった。
東京の大学に入学したとき、俊之は初めて親元を離れ、単身で生活することになった。このとき彼の性癖に、大きく影響する事件が起きた。
大学のキャンパス内を、一人で歩いている時だった。通りかかった男子学生が、いきなり俊之の腹を殴った。不意打ちに息を詰まらせていると、男は俊之を抱えて、近くの部活小屋に引きずり込んだ。抵抗する間もなかった。ズボンとパンツを引き脱がされて、下半身スッポンポンの姿にされた。
その学生は体育会系らしく、逞しい体格をしていた。男はズボンの前を開き、図太いイチモツを掴み出すと、孝志の下腹部を凝視しながら扱きだした。
その間、終始無言だった。そして呆気ないほど早くのぼり詰めた。白い液体がほとばしり、体液の強烈な匂いが鼻を突いた。男は性器をズボンに納めたあと、「悪かったな」とひと言謝って、小屋を出て行った。
俊之が同性から性の対象にされた、最初の出来事だった。そのときは、恐怖で震えていたが、同時にドキドキする気持ちもあった。握った指の先から見え隠れするチ〇ポの様相は、今でも生々しく思い出される。そして不思議なことに、乱暴を働いた男に対しては怒りを覚えなかった。むしろあっさりとした男らしい態度に、好感を覚えるほどだった。
そして、この事件にはつづきがあった。
俊之は大学2年の春を迎えていた。華やいだサクラの花が散って、キャンパス内は新緑の季節に入っていた。陽気がいいので、なんとなくルンルン気分になる。
ラグビー部の部活小屋の側を歩いている時だった。俊之はドキッとする光景に出くわした。なんと一人の学生が素っ裸になって、ホースの水を浴びていたのだ。
慌てて俊之は。近くの木の陰に隠れた。
男はラグビー部の選手と思われる、肉厚の逞しい体格をしていた。顔や手足の赤銅色と、尻や腹のまぶしいほどの白さの対比が、妙に艶めいて見えた。それに股間の黒々とした陰毛からぶら下がる性器――。その生々しさに胸が騒いだ。
背後から声がした。
「おい、なにを見てる!」
横縞のラグビー服を着た学生だった。
男は俊之の腕を掴んで引っ張った。俊之は無意識に、合気道の技で男を投げ飛ばした。
「あっ!こいつ」地面に転がった男が声をあげた。
裸の男がこちらに気づいた。「おい、どうした?」
「こいつがお前の裸をのぞき見していたんだ」
男二人に詰め寄られて、俊之は絶体絶命のピンチだった。相手は自分よりはるかに図体のでかい男二人だ。
「こいつ、可愛らしい顔してるぜ」
「男の裸が好きなら、ちょっと可愛がってやるか」
男たちは下卑た笑みを浮かべて迫ってきた。
そのとき、別の男の声が聞こえた。
「おれのダチだ。勘弁してやれや」
声の主を見て、俊之は驚いた。去年、彼のズボンを脱がせて、自慰をした男だ。
「あ、森田さん。お知り合いですか?」
俊之を囲んでいた二人の男は、丁寧な態度で言うと、離れ
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