孝志はホテル住まいしながら会社で働き、休日はアパートを探し求めた。幸い、浦和でたまたま顔見知りになった老人が、自分の家を安い家賃で貸してくれることになった。
浦和駅から歩いて5、6分のところにある3階建てビルで、1階は喫茶店、2階にワンルームの部屋が3つ、3階は老人が一人で住んでいた。孝志は2階の奥の広い部屋を借りた。階段脇に共用の洗面トイレとユニットバスがあったが、他に住人はいないので、孝志専用で使えた。キッチン設備はないが、外食すれば済むことだった。
新しい部屋に引っ越したころ、長女から電話があって、会いたいと言う。
次の日曜日、4人の娘たちが孝志の部屋を訪ねてきた。4人では狭いので、彼女らを屋上に連れて行った。そこはちょっとした庭園になっていた。
めいめいベンチに腰かけて、まず長女が、4人を代表して口を開いた。
「こちらに来る日にちを4人合わせるのは大変だったの。それはともかく、二人が別れた理由について、お父さんの口から直接聞いていないわ。今日はそれを聞くために皆で来たの」
予想されたことだったが、答える前に娘たちの顔を見た。成長した4人の娘たちと一堂に会するのは、ずいぶん久しぶりのような気がした。
「母さんは何て言ったんだ」
逆に探りを入れてみた。
「たいして話さなかったけど、性格の不一致とか、当たり障りのないこと言ってたわ」
「母さんが言ったのなら、そういうことになるのだろうな」
孝志が言うと、次女が文句を言った。
「なによ、それ!父さんの考えはないの?たぶんお母さんが一方的に、離婚宣言したんでしょう?」
どう返事をしようかと考えていると、だしぬけに末っ子が口を開いた。
「おじいちゃんが原因でしょう?」
驚いて末っ子を見ると、彼女はずけずけと言った。
「おじいちゃん、生きているとき、口癖のようにお父さんが好きだって言ってたから、お母さんは面白くなかったのよ。おじいちゃんが男好きだってこと、お姉ちゃんたちも知ってたでしょう?」
彼女は姉たちを見渡すと、話をつづけた。「だから、おじいちゃんが死んだので、別れましょうってことになったのよ」
次女がまた口出しした。
「それってボーイズラブのこと?」
「年寄り同士だから、オールドボーイズラブよ」と末っ子。
長女が冷静な口調で孝志に訊いた。
「それで、お父さんは、女より男のほうが好きになったの?」
「――女姓も好きだよ」
孝志が戸惑って言うと、長女が追求してきた。
「女姓もってことは、男が好きだってこと、否定しないんだ」
孝志は開き直って言った。
「ああ男が好きだよ。というか、この歳になって、今さら女性を愛すなんてもうできない。母さんを裏切りたくないからね」
「だったら父さんは、男性専科ってこと?」
孝志はあわてて言った。
「誤解しないでくれ。今現在、好きな男なんていないんだから」
孝志の性格に一番近いと思われる三女が、初めて口をきいた。
「わたしはゲイに偏見がないわ。だからお父さん、無理をしなくてもいいのよ。お父さんが男性専科でいくって言うのなら、わたしは容認するわ」
「あ、わたしも賛成」「わたしも――」
娘たちは、かしましく自分の意見を言い合ったあと、「じゃあお父さん、元気でね」と言って、たいして孝志の話を聞かずに帰って行った。
あとに残された孝志は、しばらく呆けたようになっていた。娘たちのあっけらかんとした逞しさと鋭い洞察力には、驚かされるばかりだ。これでは彼が男好きだとカミングアウトしたのと同じだった。
女房と離婚したことで、孝志は会社で肩身の狭い思いをしていた。
しかし、総務課長の飯田だけは、逆に孝志に対して、好意的な態度を取るようになった。彼は社内旅行のとき、孝志にむりやり犯されたことで、騒ぎ立てることもしなかった。それどころか二人は、仕事帰りに、夜の街に繰り出すことも増えた。飯田は可愛らしい風貌の割に、アルコールに強かった。
飯田の住まいは神奈川方面にあったが、ある夜、勢いのままに孝志の住む浦和までやって来て、飲み直した。
店を出たときは深夜だった。結局、孝志の部屋に泊めてやった。ひとつの部屋に男二人が寝るとなると、単身者同士、やることは決まっていた。
二人はバスルームで身を清めると、部屋に戻って生まれたままの姿になり、だれはばかることなく絡み合った。このとき孝志は、女房とも義父ともやったことの無い、淫らな指使いで飯田をもてあそんだ。
ムチッと肉付きの良い尻を開けるだけひらいて、ピンク色に染まった開口部を、指の先で撫でたり揉んだりする。飯田が焦れて、尻をうねらせると、意地悪く声をかける。
「うん、どうした、飯田くん。ここをどうして欲しいのかね」
――ああ、入れて――おねがい――。
すぐには入れなかった。ラブオイルを使って、じっくりと拡張作業をつづける。ときおり
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