鳴り続けるベルの音に、国広泰平はようやく起き上がった。
頭の芯が痛い。昨夜は、中学同窓会の二次会でさんざん飲んで、家に帰りついたのも覚えていない。
目覚ましをオフにしてベッドから抜け出した。よろけながらトイレに行って小便をし、ついでに顔を洗うと、少しは気分がましになった。
山家先生の姿はない。朝の散歩にでも行っているのであろう。
氷入りの水を飲んでいると、先生が散歩から戻ってきた。
山家昌輔――高校時代の恩師である。問題児だった泰平は、なにかと騒動を引き起こしたが、そのたびに山家先生が面倒を見てくれた。
母子家庭で育った泰平にとって、先生は父親のような存在だった。
社会人になった泰平は、定職が身につかず、雑多な職を次々と変えた。それでも人並みに妻帯できたが、1年と経たずに別れた。
山家先生との縁は続いていた。それがどこでどう間違ったのか、二人はデキてしまった。結果、どちらも一人住まいだったので、同棲を始めた。泰平が55歳のときだから、もう10年以上続いている。
散歩から戻った先生は、浴室に向かった。ジャージ姿の身体から、かすかに汗の匂いが漂ってくる。
泰平はたちまち発情した。
「センセー、ちょっとこっちに来てよ」
「ダメ、これからシャワーを浴びるんだから」
「その前にやろうよ。俺、センセーの汗の匂いが好きなんだ」
強引に先生の身体を抱きしめたところで、携帯が鳴りだした。所長の有栖二郎からだった。
「もしもし――」
――タイへー、出かける用意をしてろ。すぐ車で寄るからな。
「ダメ、これから先生とハッピータイムを過ごすんだ」
――朝っぱらからなに盛ってる。昨夜は飲みすぎだろ、お前が立たない方に賭ける。だから早く服を着ろ!
「裸になったばかりだ。なんと言われようと、やるからな」
――だったら5分で済ませろ。もう近くまで来ている。
「無茶言うな。俺はそんなに早撃ちじゃない」
ピンポーン!玄関のチャイムが鳴った。
かまわず心地良いピストン運動を続けていると、ピンポン、ピンポン、ピンポン、チャイムの連打が始まった。
これじゃあ気が散って、やってられない。
断腸の思いで先生から離れて、足音も荒く玄関ドアを開けに行った。
外には有栖二郎が立っていた。
「今日は浅草に行くと言っていただろうが。忘れたのか!」
大園とかいう依頼人の調査開始だと分かっていたが、高飛車に言われて、泰平はカチンときた。それで思わず言った。
「朝っぱらから大声出すなよ――この短小」
パンツ一枚姿の下腹部を見下ろして、二郎はせせら笑った。
「短小だと?俺のチ○ポをしゃぶってみろよ。顎を外すぜ。――だいたい、短小なのはお前のほうだろうが。バツイチのくせに」
「ふん、結婚したこともない人間に言われたくないね」
泰平は言い返したが、どだい役者が違った。
二郎はのうのうと返した。
「俺の性的成熟期はまだ先だ。今は発展途上男子。あと10年はかかるな」
二郎の運転する車で浅草に向かいながら、二人は調査方法を確認した。
「まずは、大園が連れ込まれたホテルがウタマロかどうか、それを確かめる」
「てことは、俺たち二人が客としてウタマロに行くってか――嫌だよ、ジローさん。だったら俺、センセーを連れて行くよ」
「そうかい、残念だな。調査ついでに、タイへーのお肉がたっぷりと付いた尻に突っ込みたかったけど」
「ジローさん!」
「ハハ、冗談だ。まあ、どうやってホテルに入るかは、様子を見て考える。ウタマロの親父は、一人でフロントにいるはずだ。親父の目さえ逸らすことが出来れば、何とかなるだろう」
車を有料駐車場に入れると、二人は歩いてホテル・ウタマロのある街区をぶらついた。ポルノショップや風俗営業の店が立ち並ぶ、いかにも妖しい通りだった。朝なので人通りはなく、店もほとんどが閉まっている。
ホテル・ウタマロの前で小太りの男が、掃き掃除をやっている。丸顔、額が大きく禿げあがって、小ずるそうな顔は、ちょいと泰平に似ている。
「あれがオーナーだ」
二郎は言って、なにやら考えている。
ホテルのある路地に直行した通りに派出所がある。その手前には小さな公園があり、10歳くらいの男の子が二人、所在無げにたむろしている。
二郎は公園のほうに歩いて行って、子供たちに話しかけた。
「おい、ぼうずたち、学校はずる休みか」
大人に声をかけられて、子供たちは挑戦的に顔をしかめたが、一人がぶっきらぼうに返事をした。
「違うよ。今日は休校日だ」
「ふーん、そうか」
二郎はうなずいて、のんびりと話しかけた。「ところで、ボクたち、小遣い稼ぎをしたくないか?」
「何をやればいいんだい?」利発そうなほうが聞き返した。
「あの路地に入ったところに、掃き掃除をしている禿げのオヤジがいるだろ。
ほら、ここからも見える。派出所に行ってポリ公たち
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