(5)
香奈の家は本所の外れにある、御家人用の屋敷だった。家屋は小さいが、庭には食用となる野菜類を植えている。
髪の白い老武士が二人を出迎えた。彼は香奈を優しく睨んだ。
「帰りが遅いので、心配しておったぞ」
「お爺さま、ごめんなさい。ごろつきに絡まれ、この方に助けていただきました」
香奈は謝って、長三を紹介した。一瞬、老武士は警戒するように長三を見て、すぐ丁寧に頭を下げた。
「孫を助けていただいて、かたじけない。拙者、平林藤兵衛と申します」
これで香奈と老武士の関係が分かった。長三は、「いや、たいしたことは」と言って頭を下げた。
白めしにみそ汁、ふろふき大根、青菜の辛子和えが出た。みそ汁には刻んだ人参とネギが入っている。これらを老武士が作ったとは驚きだ。
長三は努めてゆっくりと味わいながら食べた。空腹であることを割り引いても、美味かった。
それにしても――二人は祖父と孫としているが、藤兵衛の様子を窺うと、香奈に対して遠慮があるように思えた――まるで主従関係のような。
――*――
泰山の屋敷に住むようになり、翌朝から家屋の痛んだ箇所を修理し始めた。
蒸し暑い梅雨時である。朝から始めて夕七つに作業を終えると、全身汗でしっとりと濡れていた。
陽平爺がやってきて、「旦那さまが湯から上がりました。どうぞ長三さんも、汗を流して下さい」と言う。
そう言う老人も作業の手助けをしたので、丸っこい身体が汗で濡れている。
長三は誘った。「じゃあ、陽平爺も一緒にお入り」
二人は交互に湯船につかり、洗い場で背中を流し合った。
陽平は異質なほど色の白い肌をしていた。それがほっこりしたふくよかな身体と相まって、艶めいた雰囲気がある。肌艶が良いため歳が読み取りにくいが、聞くと六十二になると言う。
陽平の背中を布で擦ってやっているとき、尻置きから横に膨らんだ白い尻を見て長三の血が騒ぎだした。考えてみれば、このひと月ほど精を抜いていない。
それに、風呂に入ったときから気づいていた、陽平の目つきは、大奥の女どもが長三を見る眼つきと同じだった。
「今宵はわしの部屋においで」
思わず長三は言っていた。驚いたことに、陽平は素直にうなずいた。
その夜、行燈のほの明かりの中で、二人は衆道の契りを結んだ。
長三は入れる前に、陽平の菊座をまさぐった。触られた秘門は、くねくねと卑猥な感じで動いた。いかにも入れてください、とねだっているようだ。
事前に香油を塗り込んでいるらしく、いい香りがした。穴の中に指をゆっくりと潜り込ませると、陽平がすすり泣くような声をあげた。
充分ほぐれてくると、陽平爺を四つん這いにして、後ろから挿入した。
すこしずつ亀頭が埋まっていく。カリの部分が入ると、ゆっくり抽送させながら奥へと進む。陽平の肉筒は、ヘノコの大きさにすぐ馴染み、気がついたときには太い陰茎を根元までくわえていた。
陽平爺がすすり泣きはじめた。なにしろ長三の性技は、女でも男でも善がり狂わす、百戦錬磨の技だ。
長三は老人のすすり泣きを聞きながら、心地良く腰をうねらせた。
その最中でも襖越しに人の気配を感じていた。(見られている)しかし、殺気はないので、そのまま続けた。
亀頭が秘肉のなかを深くえぐり、陽平爺が声を上げて泣きはじめた。
かまわず長三は、腰の動きを速めていった。
(6)
紫陽花の花がいっせいに咲き始めた。屋敷のあちこちで葉の緑を背景に、淡緑色の色彩が出現した。近隣で紫陽花屋敷と呼ばれる由縁だ。
香奈はときどき絵を習うため屋敷に来て、泰山と二人きりで奥座敷にいた。
長三は口を利くことも出来ず、たまに遠くから姿を見るだけだった。
一方、屋敷には弥太郎という三十代の男がいた。歌舞伎の女形のような顔立ちをしている。長三は、この男と陽平爺が衆道の関係にあると睨んでいた。
ある晩、長三は屋敷を抜け出し、闇を縫って香奈の家に忍び込んだ。香奈と老武士の世を捨てたような暮らしが、気になっていたのだ。
屋根裏伝いに進んでいると、藤兵衛と香奈の声が聞こえてきた。
「若、人前で娘になるのは、お辛くありませんか」
「確かに辛い。出来れば男子として過ごしたい」
「いかに世間の目を欺くとはいえ、お労しや。世が世であれば、予之介さまは、征夷大将軍になられるお方なのに」
「爺、それを言うな。わたしは爺と二人きりの、今の生活で満足している」
天井板の隙間から、夜具に仰向けになった予之介の姿が見えた。衣の裾が割れて男の道具が覗いている。すんなりとしたすぼけ(包茎)である。
仰向けのまま、予之介が言った。
「しばらく気をやっていない。爺、わたしを吸ってくれ」
その後は、長三の予想さえしない光景が見られた。なんと藤兵衛が、予之介の前を開いて、若いヘノコを口に含んだのだ。
老若二人の艶めいた行為を
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