(七)男色万歳!

「いい――」
私はうめいた。
65歳の男の菊座がとろけるような柔らかさで、下腹部に絡みついてくる。
湿った温かい肉筒が、私の分身を奥深く咥え込んで、吸いつき、生暖かく濡れてうごめく。まるでイソギンチャクの触手に絡みつかれたようだ。
男の直腸がもたらす極上の味に、わたしは何もせず仰向けに寝そべって、ただ受け手のもたらす悦楽を享受していた。 
下から見上げると、見慣れた小顔が幼く見える。目を閉じ、顎を反らせ気味に、開けた口から控えめな喘ぎ声が聞こえる。固太りの小柄な体が、上下動しながらしなやかに揺れ動く。結合部から漏れ出る湿った音がつづく――。

飯田洋平がゴルフの帰りに私のマンションに立ち寄り、初めて二人が結ばれてから半年が経つ。飯田は苦しみながらも、私の男をその小さな身体に受け入れて、女になる悦びに目覚めた。以来、月に一度は私のマンションにやってきて、私の情を受けてきた。
飯田は彼本来の勉強熱心さを発揮して、ウケの有り様を色々と調べていた。
ネットのゲイ動画を見たり、その種の書籍を読み漁ったり、はたまたディルドを使って自分の身体で試してみたり――。
そして今や、私があれこれと指示しなくても、どうやればタチの私が悦ぶか、方法を会得したようだ。
今日も昼過ぎにやってきて、さっそく男色快楽の世界を楽しんでいた。それでも夜の本番に備えて、最後まではやらない。途中でやめるのは非常な克己心を要したが、シャワーを浴びて熱した気持ちを静めた。

新しい衣類に着替えて、飯田がコーヒーを入れてくれた。快楽の汗をシャワーで流し去って、すっきりした気分だった。
今日は私の69歳の誕生日である。そして飯田のプレゼントは、飯田本人の身体だった。それで昼間から、彼のプレゼントを味わっていたのだ。
「年を取ってから、誕生日はあまり嬉しくなくなったが、今日のようなヨーヘイのプレゼントを貰うのなら、来年が楽しみだ」
私が言うと、飯田が微笑んだ。
「ターさんに喜んでもらえて、私も嬉しいです。来年と言わずに、いつでも私のプレゼントを受けてください」
私たちは世間体を考えて、いとこ同士ということにしていた。名前もターさん、ヨーヘイ、と呼び合っている。
しばらくして飯田は、部屋の掃除を始めた。彼は、私のマンションに来たとき、セックスだけでなく、几帳面に掃除や洗濯もやってくれる。それは、ものぐさな私にとって、大いに助かることだった。

夕方から馴染みの居酒屋に行った。飯田と一緒なので、前日、店に予約を入れたところ、店の親父が「それならアンコウ鍋がいい。ちょうどアンコウを仕入れたところだ」と言って勧めてくれた。
店に行くと、顔見知りの先客が数人いた。奥のテーブル席が、私たちのために空けられていた。すでに鍋セットが置かれていて、あとはガスコンロに火をつけるだけだ。
私たちは席に着くと、まずはビールで乾杯した。

そのとき紺の制服を着た、年配の男が二人、店に入ってきた。腰のベルトに警棒と拳銃のケースを付けているところを見ると、警官のようだ。
男たちは店の親父と何やら話して、ときおり私たちのほうを見ている。それからおもむろに、こちらのほうに向かってきた。
先頭に立つ恰幅の良い男が、声をかけてきた。
「そこの二人、ちょっとこちらに来て」
命令口調だった。もう一人の頭の薄い男は、用心するように少し離れて、腰の拳銃ケースに手を添えている。
私と飯田は顔を見合わせて、戸惑いながらも立ち上がった。
恰幅の良い男は、私に質問した。
「二人はどんな関係だ?」
なんでそんなことを聞くんだ、と思ったが、私は素直に答えた。
「いとこ同士です」
年配の男は疑い深そうに、私と飯田を交互に見た。
「あまり似てないな」
「まあ、いとこは4親等ですから――」
私が言うと、男はすかさず訊いた。
「不純な関係じゃないだろうな?」

(うん?)私は何となくおかしい、と気づいた。男たちは一見、警官風だが歳を食いすぎている。恰幅の良い男は白髪が多く、どう見ても私より年上のようだ。
もう一人も頭の禿げ具合から、現職警官の年代には見えない。
そこで私は逆に質問した。
「あのう――あなたたちは、どちらの交番の方です?」
恰幅の良い男は、わずかに動揺した表情を見せたが、すぐに立ち直った。
「そこの派出所の者だ。――実は、先ほど派出所に泥棒が入って、拳銃が盗まれた。目撃情報によると、その泥棒があんたの背格好に似ているんだ」
「――?!」
呆気に取られて、私は飯田と顔を見合わせた。飯田は蒼白な顔色をしていたが、口をぽかんと開けている。
「あんた、拳銃を隠し持っていないだろうな?」
男は言うと、近づいて、私の股間をぎゅっと握った。
「このでかいのは何だ!立派な凶器じゃないか」
途端、爆笑が沸き起こった。店にいた全員が、手を叩いて笑っ
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