(10)そして現在

潔と廉は那須の別荘地に来ていた。
すでに中秋に入った那須は、紅葉が進んでいた。
潔の所有するログハウスは、家具や調度品もすっかり整って、ここで生活するに何の不自由もなかった。それに潔の家族もたまに使っていたので、違う調度類も増えていた。
ここでは望外の発見もあった。藪を抜けた先の河原に、露天風呂があったのだ。切り立つ岩盤の亀裂から湯が湧き出て、石で囲んだ窪地に溜まっている。湯温はかなり熱めだが、すぐそばの川から水を引き込んで、温度調節が出来るようになっている。
別荘に廉が来たときは、二人してよくこの天然の露天風呂に入りに行った。他の人間がやってくることは、滅多にない。いわば、二人だけのために用意された、別天地なのだ。

紅葉の進む自然を身近に感じながら、二人はのんびりと湯に浸かっていた。ひんやりとした風が流れ、清澄な湯水に透き通って、白い裸体が揺れている。
潔70歳、廉62歳――。8つの年齢差があったが、こと性欲に関しては、年齢が逆転したようだった。
廉は60代に入った頃から、精力の減退を感じていた。それに対して潔は、古希の歳になっても、セックスに対する意欲はまだまだ旺盛だ。
それでも愛の形は変化していた。前は一方的に、潔が廉を可愛がる形だったが、近ごろは、廉が男の役割を果たすこともあった。
二人だけの行為では、コンドームなど使ったことがない。もう何年越しかの慣れた行為なので、ラブオイルもほんのちょっぴり使うだけだ。
廉は勃起した自分の股間を見て、ときどき思う。(ぼくはウケとタチ、どちらがいいんだろうか)でもそれは、キーさんに愛されるときの光景を想像すれば、考えるまでもなかった。(――ウケがいいに決まっている)



ログハウスに戻ると、共同作業で夕食の準備にとりかかった。
ここではゆったりと時が流れていく。二人はお揃いのエプロンを身に着け、手順を楽しみながら料理をした。
そしてワイングラスを傾けながら、作った料理をじっくりと味わう。
食後、暖炉の前でのひととき――。思いつくままぽつぽつと会話をして、静かな時が流れていく。
そして生命を絞り出す、夜のひとときが始まる。

全裸になってベッド上でうつ伏せになる廉は、これから起こる期待に打ち震えていた。山林の夜の冷気が、剥き出しの肌を覆い包む。
ベッドに両膝、両手をついた廉は、さらに腰を持ちあげられ、秘所を晒した格好になった。その秘所をキーさんに見られているのを感じて震えた。
男を屹立させたキーさんが、開かれた両脚の間に割り込んできた。
「あっ!」
狭間の蕾に、熱い先端が触れた。
敏感な肉襞の集まりを、先端から滲みだす粘液が、ヌルヌルとなぞりだす。
なぞられる感触に、廉の肉体が反応を示す。すぼまっていた肉襞が、透明な粘液でこねられているうちに、淫らに弛みだした。

キーさんの動きに突きが加わった。
「あっ!いい――」
恍惚と目を閉じていた廉は、新たな快感を覚え、四肢の緊張を弛めた。と同時に肉の襞で形取られた菊の花がひらいた。
柔らかさを増した肉筒に、キーさんの男が入ってくる。
「ああっ!あああ――」
廉は尻を突き出し、シーツに顔を押しつけて、くぐもった悲鳴をあげた。
関門をくぐり抜けたところで、強烈な締め付けが待っていた。
「うっ!いい――」
キーさんが呻き声を洩らした。
廉の内奥は蠕動する生き物と変わり、キーさんを引きずり込もうとするかのような動きをした。
それでいて、キーさんが腰を押し進めると、廉の内部は押しだそうと抵抗する。退けば、今度は放すまいと肉襞がからみついて、男をキュウっと搾りたてる。
その締め付けは、女陰の比ではなかった。
男と男でなければ味わえない陶酔だった。

「キーさん、もっと――もっと虐めて」
淫らに下肢をくねらせながら、廉が欲しがった。
求められるまま、キーさんが攻撃を加えた。
「ああ、いいっ!――いいっ」
廉が伸び上がって、あごをのけ反らせた。
腹腔のうちに硬い異物が収まっている。それが腸壁を通過しながら摩擦する。
「ひ、ひいーっ!こわれるゥ」
悲鳴をあげながらも、廉の内部は搾りあげ、吸い上げ、うねり続ける。
「いい――いいぞ」
恍惚としたキーさんが、なおもサディスティックな美味を楽しもうと、激しく責め立てた。
「ああっ!あっ、あっ、あああ――」
感極まった廉が、咽ぶように泣き出した。
つながり合った二つの肉体が、争うようにもつれ、揉み合って、この世のものと思われぬ、深い愉悦の世界にもぐりこむ――。

――*――

麻布のワンルームマンションに戻った潔は、書きかけていた旅行誌の作成にとりかかった。これまで既に5版を重ねて、売れ行きはまあまあ順調だった。お陰でいい小遣い稼ぎになったし、手伝ってくれるレンちゃんにも、そこそこの報酬を渡せるようになっていた。

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