(2)学園の愛

小林一成の食事は、いつも2階に行って、小穴洋平の作った料理を食べる。
今朝も2階で、みそ汁と焼いたアジの開き、それに卵かけご飯を食べた。
二人は、昨晩久しぶりに艶めいたことをやったので、食事の間中も、なんとなく生温かいムードが漂っていた。
食事のあと、そろって1階の喫茶ルームに降りて行った。
洋平が玄関ドアの鍵を開け、手際よく外の掃き掃除を始める。
普段は何もしない一成までが、珍しく窓のカーテンを開け、テーブルの拭き掃除にとりかかった。昨夜は洋平が頑張ったので、ずっと気持ちいい思いをした。
それで今朝は気分が良いのだ。

喫茶店の掃除が終わったところで、若い男が花を持ってきた。綿シャツにジーパン姿、背がひょろりと高い。
「お早うございます!生け花を持ってきました」
洋平がすかさず答える。
「おはよう、カズちゃん。いつも早いね。花はカウンターの上に置いて」
「了解!」
若者はてきぱき動いて、洋平から代金を受け取ると、丁寧に頭を下げて店から出て行った。
青年の後ろ姿を見ながら、洋平がつぶやくように言った。
「感じの良い青年ですね。若いって、いいなあ」
一成がからかうように言った。
「おい、また、自分の若い頃に似ていると言うんじゃないだろうな」
「それが、横顔のあたりがちょっと――」
一成がせせら笑った。
「似てない。それを言うなら、わしのほうが――」
洋平はさりげなく家主のでっぱった腹を見て、「それはないでしょう」と小声で言った。

内村数馬は毎朝、大学に出かける前に、母親のやっている花屋を手伝っていた。客のところに花を届ける仕事だ。
店は駅前広場に面したところにある。母のアイは42歳、背は低いが肉付きがよく、あっけらかんとした明るい性格をしている。夫と早くに死別し、女手一つで数馬を育ててきた。
集金袋を渡してアパートに戻ろうとすると、母が声をかけた。
「カズちゃん、お爺ちゃんが寝てたら、起こして。仕事に送れちゃうから」
祖父の栄之進は72歳になるが、今もってマンション管理人の仕事をしている。毎朝5時に起きて町内を散歩する。それから朝食を済ますと、よくうたた寝することがあるのだ。

駅前から歩いて5分ほどのアパートに戻ると、案の定、祖父はソファーに寝そべってうたた寝をしていた。
祖父は背が低くてでっぷりと肥っているが、学生時代レスリングをしていただけに、固太りの弾力のある身体つきをしている。
肉付きの良い丸顔に団子鼻と小さな目――数馬はお爺ちゃんが大好きだった。
祖父は、数馬が思春期に入ると、よく女の話をした。祖父にかかれば、男は皆、女好きと言わんばかりに――。
祖父の話を適当に聞き流していたが、数馬は複雑な心境だった。というのも、彼は女に興味が湧かなかったからだ。むしろ祖父のような、年配の男性に心惹かれた。それも早くに父親を亡くした影響かも知れない。

祖父の無邪気な寝顔を見て、そろそろ起こそうと思ったとき、股間の膨らみに気づいた。夢でも見ているのか、明らかに大きくしている。
ふと高校生のとき、学友が言っていたことを思いだした。
――お前の爺ちゃん、栄之進って言うんだろう?
――ああ。
――俺の伯父さんが、よく知っててな。お前の爺ちゃん、若い頃はすごいスケベで、破天荒な人だったって。町の女どもに嵌めまくっていたらしいぜ。
――!?
――だから、お前と俺は、ひょっとしたら血がつながってるかも知れん。

数馬は、祖父のズボンに浮き出た膨らみを見た。(これがぼくの生まれた根源になるんだ)
朝っぱらから淫らな気分になった。彼は我知らず手を伸ばして、祖父の膨らみに触れた。温かくて柔らかい感触――。
形をたどっていると、膨らみがこわばってきたように感じた。
そのとき祖父が身じろぎして、数馬はあわてて手を離した。

うたた寝から目覚めた栄之進は、艶めいた夢が尾を引いていた。ざわめく股間を押さえて、20歳になる孫に向かって言った。
「数馬、お前、女にもててしょうがないだろう」
「そんなことないよ」
「ふん、もったいぶりおって。ひとりくらい、わしに紹介してくれ」
数馬は怪訝な表情をした。
「紹介してどうするんだい」
栄之進はぬけぬけと言った。
「朝、ヤルと元気が出るんだ。散歩のとき足が軽くなってな」
「お爺ちゃん――いい年して、そんな話しないの」

内村数馬は、山賀教授の授業は欠かさず出席していた。彼の所属するゼミの担当教師であるが、それよりもっと個人的な理由があった。
いわゆる、一目惚れである。
山賀先生は英文学の教授で、現在58歳。中肉中背のスマートな身体に、いつもセンスの良い服装をしていた。ロマンスグレーの頭髪を七三に分け、男の甘さを含んだ顔立ちをしている。それに独身であった。
数馬はこの先生の前に立つと、肌の泡立つ思いがする。先生がニコッ
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