「蓼食う虫も好き好き」と言うように、人の好みは千差万別である。だから男と男の愛、それも熟年男性同士の愛もありだと思う。
さてここに、同棲生活を続ける二人の熟年男性がいる。
家主の矢都木芳郎は70歳、画壇では知名度の高い洋画家である。
色白やや面長の顔に切れ長の目――そのみやびた顔立ちは、遠く先祖をたどれば京の公家ではないかと思わせる。食糧事情の悪い、戦中生まれにしては珍しく、欧米人のようにスマートで堂々たる肉体をしている。
撫肩、胸囲が小さい割に腰回りと尻が大きい、下重心の体型なので、なんとなく親しみの湧くまったりした雰囲気がある。
いっぽう寺井裕二は55歳、地元の市役所に勤める公務員である。
男にしては小づくりで、あまり見栄えがしない。二重瞼の可愛らしい目と几帳面そうな顔立ちだが、些事にこだわらない飄々とした性格をしている。
二人が出会ったのは上野のホモバーである。共に歳を食って独身であることからすぐ身体を許す親密な関係になった。
惚れ込んだのは大きい身体をした芳郎の方だった。裕二を家に囲い込んで、それこそ大事な宝物のように扱っている。
通常、男同士の性愛関係は、タチとウケに分かれるが、誰が見てもタチは身体の大きな芳郎と思うだろう。ところが事実はその逆、裕二のほうがタチである。
チビの太マラとはよく言ったもので、裕二は思わず見とれるような巨根の持ち主だったのだ。
今夜も二人は芳郎の寝室で、久しぶりの艶めいた行為を始めようとしていた。
全裸になった老画家がベッドに寝そべって、誘うように尻を見せている。
老いたとはいえ、見応えのある裸体だった。沁みひとつない色白もち肌で、壮年の張りと艶を保っている。横幅のある尻は、後ろにも肉が付いているので、老人特有の薄っぺらさがなく、全体に豊満な丸みを帯びている。
その尻に続く無毛の足は、白くてすんなりと伸びて、異国人の血が混じっているのではないかと思わせる。
「さあ、おいで――」
芳郎の誘いに、裕二がベッドに上がりこんだ。
二人はお互いの身体に腕を回して、戯れるように口づけを繰り返した。
裕二の身体は小さいので、母親に甘える子供のようだった。しかし身体の一点、股座でふすぼける逸物だけは、立派な大人だった。平常時でも十分大きいので、怒張時のことを考えると空恐ろしくなるほどだ。
いつもサービスするのは裕二だった。裕二はたっぷり時間をかけて、画家の感じるところを探索して、老いた身体が潤ってくるのを待つ。
募る快感に堪え切れなくなって、老画家が腿をよじらせながら懇願する。
「ねえ、ユーちゃん、早く入れて――」
そこで裕二はおもむろに、白桃のような尻を割って挿入行為に移る。
硬く脹れあがった先端をあてがい、じんわりと力を加える。
すぼまっていた肉壺が広がっていく。まるで処女の蕾が愛する男のために、開花の兆しを見せるような感じだ。
頭が半ば埋もれたところで、ズググと奥まで押し込んだ。
「ひいーっ!」
脳天を突き抜ける痛みに、芳郎は喘いだ。
これまで何度交合しても、この痛みはいつもの通過点なのだ。
そして――その後に続く、えも言われぬ快感。安心と幸せと充実が、一遍にやって来たような悦び――。
芳郎はこの瞬間が好きだった。
体内で息づく肉根。その全長をぴっちりと押し包む腸壁を通じて、壮年男の生気が沁み込んでくる。
老画家が肉体に打ち込まれた男根の感触を楽しんでいると知ってるので、裕二はすぐには動かず、じっとしていた。
ときおりいきんで、嵌め込んだ性器をびくつかせる。
画家が敏感に反応する。
「ああっ――動いてる」
おもむろに裕二は抽送運動を開始した。
最初はゆるやかに、全長を使って大きく――。
それだけで芳郎は、気が飛んでいきそうな快感を覚えた。我知らず、善がり声が口をついて出てくる。
動きがじょじょに速くなる。押して、引いて、捩じって――。
体位も変化させる。後ろから、前から、横から――。
二人の性行為は、いつも長時間に及んだ。先を急がず、じっくりと性感覚を味わい、疲れてくれば小休止して、そしてまた交わる。
それはひと月に1度か2度行われる、濃厚な愛の交歓だった。
二人の住む家は老朽化して、あちこち不具合が出てきた。そこで思い切って家を建て替えることにした。
裕二の幼馴染で、矢内源造という設計事務所をやっている人間がいた。お互いに「ユウ」「ゲン」と呼び合う気安さもあり、家の設計を頼んだ。
20畳大のリビングに2つの寝室、予備の寝室、画家の使う12畳大のアトリエと書斎――二人住まいなのに50坪ほどの規模になった。
施工会社は矢内の推薦する工務店に決まり、いよいよ新築工事が始まった。
矢内の指名により、工務店からやってきた大工の棟梁は、大谷憲三という67歳の男だった。中肉中背、がっしりした固太りの
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[*]
感想