(3)

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翌朝、わたしは泰平さんの運転する車の助手席に座っていた。朝食のとき、琵琶湖を舟から見たいと何気なく言ったら、それならいい人がいると泰平さんが言って、知り合いの家に行くことになったのだ。
昨夜、房事のあと寝物語に、父のことをすっかり聞いていた。泰平さんは、わたしの父に抱かれたことがあると言うのだ。
父も男色家だったのだ。これで、両親が別れた理由が、なんとなく分かった。母は、夫の性癖に気づいたのだろう。
わたしは複雑な心境だった。わたしが男好きなのは、父の血筋のようだ。
しかし、父と違うところがひとつある。わたしの性癖は、女房に気づかれていない。子供もふたりいるが、片親にはしていないことだ。

それにしても、一晩いっしょに過ごしただけで、泰平さんは、すっかりわたしに親しみを覚えたようだ。というよりも、まるで従僕のように甲斐がいしく、わたしの世話をしてくれる。朝食を用意したり、わたしの下着――フンドシまでも洗濯して、裏庭に干したりしてくれた。
昨夜、わたしは泰平さんと結合して、最後までいっていなかった。それだけに、あとのお楽しみが残った。今夜はじっくりと、泰平さんの豊満な肉体を味わってやる――そう思うだけで、朝から興奮してきた。



今度の訪問先も、大きな屋敷だった。母屋のほかに作業場もある。
出迎えたのは、泰平さんと同じ年頃、白髪、小柄な老人だった。顔の肌がつやつやとして、きわめて血色がよかった。
「お早うさん、イッちゃん」
泰平さんは老人に声をかけ、わたしを紹介した。「昭三さんの息子さんだ。東京から来らっしゃった」
イッちゃんと呼ばれた老人は驚いたように目を丸め、両手を合わせて拝む仕草をした。
「ひゃあ、えらい人が、こんなむさくるしいところに来らっしゃって、恐縮です」
わたしは苦笑した。
「わたしは、えらい人じゃないですよ。それに、むさくるしいどころか、立派なお屋敷じゃないですか」
わたしの言葉に、イッちゃんは照れくさそうに微笑んだ。
笑うと白い歯がこぼれ、小さな目がますます細められて、かわいらしい表情になる。
わたしはたちまち、この小柄な老人の笑顔に魅了された。

わたしたちは庭先の縁側に腰かけて、イッちゃんの奥さんが持ってきたお茶をすすりながら、のんびりと初対面の会話をした。
そのうち泰平さんが立ち上がって、イッちゃんに言った。
「そろそろ、出かけたほうがいいよ。イッちゃん、頼んだよ」
今度はわたしに向き直って「3時頃、迎えに来ます」と言った。

さっそく、イッちゃんの舟に乗ることにした。
舟は5、6人乗れそうな手漕ぎ式で、船尾に小さなモーター動力のスクリューが、補助的に取り付けられている。
イッちゃんは、老人とは思えないてきぱきとした動作で、船出の準備をした。腰を屈めてもやい綱を解く老人の後姿は、丸っこい尻が張りつめて、わたしの好き心を刺激する。
浜で泰平さんが見送るなか、わたしとイッちゃんは、琵琶湖周航の旅に出かけた。

イッちゃんは慣れた手つきで櫂を操っている。老人の小柄な肉体が、のびやかに動く。湖面に細い筋を引いて、舟は滑るように走った。
顔つやのよさから見て、イッちゃんは泰平さんより若いと思っていたが、実際にはひとつ年上の68歳だった。老妻とふたり暮らしだが、子供3人、孫7人がいて、すぐ隣には娘家族が住んでいると言う。
老人は口数が少なくて、おっとりとした物腰をしている。ところが釣りの話題となると、にわかに活気づいてくる。小さな目をきらきらと輝かせ、身振り手振りを交えて熱弁をふるう。よほど釣りが好きなようだ。

沖合いに出てひと休みしているとき、船縁に腰をおろしたイッちゃんが、おずおずと話しかけてきた。
「きのうは泰平さんを、抱いてやったのですか?」
わたしは聞き間違えたかと思って、老人の顔を見た。見るからに純朴そうな顔が、多少恥ずかしそうにこちらを見ている。
急に老人の肉体を意識した――ランニングシャツに着古した作業ズボン、胸や腕はテロッとして体毛がなく、健康的に日焼けしている。
わたしが黙っていると、イッちゃんはとつとつと話しだした。
「泰平さんが言ってました、あなたはお父さんに似て、お上手だって。それに――すごく立派なお道具を持っているって」
(なんておしゃべりな爺さんだ――)
わたしは胸のうちで、泰平さんをなじった。しかし、泰平さんが話したということは、この老人もお仲間だということになる。
にわかに、老人の肉体に対する興味が湧いてきた。

イッちゃんを見ると、その目は熱っぽく輝いて、わたしの股間のあたりに注がれている。わたしは、単刀直入に質問した。
「じゃあ、あなたもわたしの父と――」
イッちゃんは、恥ずかしそうにうつむいた。
「ええ――でも、お情けを受けたのは、ほんの数回だけ。昭三さんのお稚児
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