(7)白人の養父

私の養父は白人である。養父は日本に帰化したときマイケル・アモットからマイケル亜門と名前を変えている。親しい仲間は彼をマイクと呼んでいる。
マイクはアメリカ大使館で働いていたが、日本の風土が気に入って、日本文化を学ぼうと東京の大学に入学した。卒業後大学に残り、日本文化を研究する一方で、英語教師として働きだした。
それから10数年が経った頃、同じ大学の体育教師だった、私の父と知り合った。父は母と離婚し、当時5歳だった私を抱えて苦労していた。それを見かねてマイクは、私の父と同棲生活を始めた。
後年知ったが、マイクと私の父はゲイ仲だった。当時、42歳と33歳のカップルだ。
マイクはアメリカ人にしては背が低く、ほっそりとした体形をしていた。いたって温厚で、飄々かつのんびりとした性格をしている。一方、私の父は、ひと言で言えば野武士タイプである。武骨で口数が少なく、立派な体格をしていた。
男ふたりと子供ひとり、一般家庭とは少々異なるが、幸せな毎日が続いた。
しかし私が13歳のとき、父は体育大会の遠征先で交通事故に巻き込まれて急死した。
そのとき、マイクは日本国籍を取得していたので、私を養子としたのだ。マイクはすでに50歳になっていた。

私が18歳になったとき、養父がゲイであることを初めて知った。
18歳といえば、人間の生殖活動最盛期である。私も例外ではなかった。夜ごと5本指を使って、自らを慰めた。
ある夜、いつも通りに耽っていると、養父が部屋に入ってきた。
「ケイ、不自由しているようだね。父さんがやってあげよう」
養父は手慣れた動作で、手と口を使って私の性器に刺激を与えだした。私はあっという間に昇りつめ、養父の顔面に噴出した。
それが養父と秘密の関係になる始まりだった。

大学に進学してからも、毎晩のように養父と交わった。
養父の性器は、日本人の私のモノと違って、根元から先端まで寸胴で、白い皮がすっぽりと覆っていた。皮を剥くと、ピンク色の可愛らしい坊やが顔を覗かせる。
お尻も可愛らしかった。色白の双丘を縦に割る淡いピンク色の谷間、その中心部にひそむ慎ましやかな菊座。指で押し開くと、きれいなピンク色に輝く肉襞が現れる。
養父は私に、男性同士の性交のイロハから教えてくれた。どこをどのように刺激すれば、相手が悦ぶか。そのテクニックを使われると、私は意識が遠のくほど悶え狂った。
それに、白人の菊座は柔軟なのだろう、私の怒張した性器をやすやすと呑み込んで、自由自在に締め付けたり、弛めたりした。

私は大学を卒業して、テレビ局に就職した。
養父との夜の行為は続いた。私は30歳を過ぎても女性との浮いた話は無く、当然のことに結婚話など及びもつかなかった。
日本語が話せて日本文化にも詳しい白人――養父は行く先々で人気があった。その人気の秘密に気づいたのは、後のことである。
馴染みの店に行ったとき、養父はときどき店の客と姿を消した。そして私が店を出るころに戻ってくる。私は、養父の素行に疑いを持ち始めた。ひょっとして複数の男たちと、束の間のセックスをしているのではないか、と。
養父が72歳、そして私が35歳のとき、決定的な場面に出くわした。
何かの用事で、日中家に戻ってきた私は、養父の善がり声を聞いた。寝室を覗くと、養父と寿司屋の親父が行為の真っ最中だった。荒い息づかいや甘ったるい善がり声、湿った卑猥な音――。
その夜、私は養父を詰問した。しかし養父には、罪の意識は全く無かった。人生、気持ち良いことをやって何が悪いか、と。
私は、そのとき初めて悟った。養父は、日本人以上に日本的なところはあるが、西洋人のDNAは変えようがない。日本人にあるウェットな心情が無いのだ。私は養父の浮気性をなじったが、片や虚しさも感じていた。
次の日、会社から帰宅すると、食卓の上に二つ折りの白い紙切れが乗っていた。開いて見ると「しばらく外に出る。いつか戻る。マイケル」と書かれている。
すぐ心当たりに電話したが、養父はどこにもいなかった。

――*――

今のスーパーは、小パックの総菜も売っているので、単身者にとっては便利だ。
羽鳥英治は、魚のコーナーで特売品のブリ、総菜コーナーできんぴらごぼうのパックを籠に入れ、忘れずに卵と大根を継ぎ足した。
買ったものを荷台の籠に入れると、自転車で家に向かった。
羽鳥は67歳、中背小太り気味だがいたって健康体だ。2年前に妻が病死し、一人娘は北海道の牧場に嫁いでいる。ひとりぼっちの生活も、ようやく慣れてきた頃だ。
江戸東京博物館の敷地を抜けて自宅の近くに来たとき、閑散とした公園のベンチに年寄りの白人がひとり、ポツンと腰掛けていた。その姿が悲哀を帯びていたので、英治は思わず声をかけた。
「どうした、爺さん。何か困ったことがあるの?」
その外人、マイケル亜
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