第7章 葛竚マ(エピローグ)

(エピローグ)

白取英彦の正式加入で、銀狐も俄然、活性化してきた。メンバーが退屈しない程度の仕事が、定期的に入ってくるようになったからだ。
これで、一成ひとりが仕事を求めて駆けずり回らなくて済むし、英彦の愛を一身に受けて、万事めでたし、めでたし――のはずだった。



確かに英彦は、ポニー時代のコネをフルに活用して、有望企業に次々とアプローチした。しかし、実際にその企業を訪問して商談を進めるのは、一成の役割だった。
どういうわけか、英彦が懇意にしている企業の有力者は、変人が多かった。訪れた一成を、絶好の暇つぶしが来たとばかりに、もてあそんだり、いたぶったりするのだ。
これは一成にとって、精神衛生上、はなはだ宜しくなかった。
しかし、英彦は言う。これはイッちゃんに対する愛の鞭である――決してSMプレーのことじゃないよ――イッちゃんが楽をして、これ以上、肥満体にならないため、それに精神修養のためだ、と。
「肥満体にならなくても、不満体になっちゃうよ」
と、ふてくされる一成だったが、英彦は歯牙にも掛けない。
「ま、そのオジイギャグは、暇なときに笑っておくから、とにかく頑張ってよ」

ところで、歳を取ってくると、タチの値打ちは急上昇するものである。銀狐でも同じ傾向にあった。
従来の銀狐のタチトリオは、北井修一郎、槌谷則平、太田謙二だった。
最初は、野本の毒牙にかかった修一郎が、マゾのウケに転向した。次は、同じ犠牲者の謙二だった。彼は目下のところ、タチとウケの狭間で微妙に揺れ動いている。
残るは63歳の則平ひとりだが、生憎、取り柄は元気の良さだけである。性格はねじくれてるし、性技も独り善がりで、あまり上手ではない。
そんなところに、タチの理想形とも言うべき、英彦が加わったのだ。当然のことに、誰もが虎視眈々と新参者を狙っていた。
そしてまた、性の対象を女性から男性に宗旨替えした英彦本人は、人一倍の博愛主義者だった。――来るものは拒まず。それが英彦の身上なのだ。
しかも、けしからんことに、知り合いの堀田弁護士まで銀狐の顧問に引き込んで、共に漢の道を歩み始めたようなのだ。
その上あろうことか、一成が最も苦手とする叔父の斎田宗春までが、銀狐に顔を見せるようになった。もちろんお目当ては白取英彦である。

こうなると面白くないのは、それまでヤリ放題だった槌谷則平である。自慢の逸物も、男日照りで干からびてしまいそうだ。
しかし、こういった問題も、英彦の博愛主義が救った。英彦のほうから歩み寄ってご機嫌伺いしたところ、則平は英彦の豊満なお尻を所望した。
気立ての優しい英彦は、断りきれなかった。
その夜、元気印の則平の相手をして、生まれて初めて後ろを犯されながら、タチの征服欲の犠牲になったウケの心境を、しみじみと噛みしめたのである。

こういった状況であるから、大島一成が、英彦の愛情を独占することなど、端から望めないことだった。
しかし、このお人好しの楽天家は、自分の幸せのため(結果的には、他の爺さんたちを幸せにしているのだが)、毎日を精一杯に生きている。
そして一成の率いる銀狐も、悲喜こもごも。人生第三ステージに入った爺さんたちによって、今日ものどかに運営されている。
                                   おしまい
17/02/24 07:55更新 / 神亀

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