(3)

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いよいよ旅行に出発する前の日、桂樹はゲイルにどう切り出そうかと迷っていた。夫婦はハワイ旅行のことを、まだゲイルに話していなかった。桂樹は若干、良心が咎めていた。
「G・G、ちょっと話があるんだ」
「なんだい、桂樹」
ゲイルが、無邪気な笑顔を浮かべてやってきた。
「じつは、そのう――」
桂樹は口ごもった。「あんたの娘と孫に、たまには家族サービスをしようと思っているんだ」
「それはいいことじゃないか」
「それで、そのう――ハワイ旅行に行こうと思って――ぼくたちだけで」
桂樹は言いにくそうに言った。部屋の向こうから、アンリが心配そうに、こちらを見ていた。
「そう――」
ゲイルは驚きもせずに言った。「それでいつ出かけるんだい?」
「明日の夕方――」
とたんにゲイルは目を丸めて、驚いた表情をした。
「Oh my God !偶然の一致だ。じつは、わたしも前々から言おうと思っていたんだが、明日からハワイに行くんだ」
「――?」
桂樹はしばらくポカンとして、義父の顔をみつめていた。アンリが、わたしは話していないわ、と言うように首を振っていた。

じょじょに桂樹の顔が赤くなってきた。
「駄目だ!3人分しか席はないんだ。今回は、G・Gがどう駄々をこねようと、無理だからな!」
ゲイルはあっさりと言った。
「べつに駄々をこねていないさ。わたしの切符はあるよ」
桂樹は拍子抜けした。
「ある?いつ手に入れたんだ」
「わたしはアメリカ大使館に勤めているんだよ。便宜を図ってくれる人物は、いくらでもいるさ」
「向こうの宿はどうするんだ?」
「もちろん、手配してるよ」
「――?」
桂樹は訳が分からずに、呆然として義父の顔を見ていた。

翌日、成田空港に着くと、驚いたことに堀田正俊が待っていた。ジャケットを着た軽装で、足元にはトランクケースとバッグが置かれている。
「アレッ、堀田さんもご旅行ですか?」
堀田の温顔がほころんだ。そしてバツが悪そうに言った。
「ギャザウェーさんに誘われました。ハワイへゴルフ旅行です」
桂樹は後ろを振り返った。ゲイルがアンリの後ろに、こそこそと隠れる姿が見えた。
桂樹は堀田に聞いた。
「ゴルフバッグはどうされました?」
「向こうで借ります――ギャザウェーさんに言われまして」
桂樹はふたたび振り返って、ゲイルを手招きした。
「オーケイ、G・G、ちょっとこっちに来てくれ」
ゲイルはいたずらを見つかった子供のように、おずおずとやって来た。桂樹はゲイルの丸っこい肩に腕を回すと、おどすように言った。
「G・G、いろいろと手回しのいいことだな。それで、ぼくたちの旅行の件は、だれから聞いたんだ?」

そのとき、聞き慣れた声がした。
「よお、待たせたな」
向陽不動産の大貫会長が手を上げて、こちらに向かって歩いてきた。背後には、大きなトランクと旅行バッグを持った男が、付き従っていた。
大貫は桂樹のところに来ると、背後の男を振り返った。
「よし、ここでいいぞ。ご苦労さん」
連れの男が立ち去ると、桂樹は大貫にたずねた。
「会長――まさか会長もハワイに行くのでは」
「なにをとぼけたことを言ってる。きみが誘ってくれたのだろうが」
「わたしが誘ったって?」
そこで桂樹は思い当たって、ゲイルのほうに振り返った。義父はいつのまにか、少し離れたアンリの後ろに戻っていた。
桂樹は大貫に聞いた。
「この前、電話を頂いたそうですが――」
「ああ、日亜電気の神山さんのところにお伺いしたとき、きみの話が出てね。きみは神山さんとも懇意らしいな」
桂樹は、だいたいの状況が呑み込めてきた。
「それで、電話に出たわたしの義父が、ハワイ旅行の件を知って、会長をお誘いしたんですね?」
「ああ、ゲイルはわしが一緒に行けば、きみの慰めになると言った。失業の件では、きみはそうとう落ち込んでいたそうじゃないか」
「――?」
エッと思ったが、桂樹は念を押すように言った。「ハワイの宿泊先は、日亜電気のビレッジですよね」
大貫は、なんだ、こいつは、という顔つきで桂樹を見た。
「当たり前だ、神山さんにお願いした。神山さんは都合がつかないので、2日遅れだ」
「と言うことは、神山さんも、ハワイに来られるということですね」
「なんだ、いちいち確認するな。きみを励ます会だぞ」

桂樹は、ふたたび義父を手招きした。
「G・G、ずいぶん役者になったじゃないか。ぼくの知らないところで、いろいろと活躍したようだな」
ゲイルは腕時計を見ながら、せわしなく言った。
「桂樹、そろそろ時間だぞ。早く手続きを済ませないと――」
「わかった。話は飛行機の中だ。7時間もたっぷりとあるからな」
「それが――」
ゲイルは申し分けなさそうに言った。「わたしたちの席はファーストクラスなんだ。きみたちはエコノミーだろう」
追い討ちをかけ
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