(4)

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桂樹と白取部長は、向陽不動産の大貫会長たちを接待して、鬼怒川温泉に泊まりがけのゴルフに出かけた。行きの電車の予約席は、彼ら専用のボックスシートになっていた。
大貫会長は、向かいの席で大股開きにどっかりと腰掛けて、突きでた丸い腹をなでなで、いかにも満足そうにおしゃべりをつづけていた。その横では内村部長が、窮屈そうにかしこまっている。
まったく大貫の話は退屈させない。
まずは女の話から始める。その女は、同じ町内の小野小町の再来とも噂されるほどの美女で、大貫は以前から女に気があった。しかし、亭主がいることだしと控えていたところ、この春先に亭主が死んだ。それじゃあと女の家に出向いて、意を通じてみたら、後家さんはウンという。さっそく心地よくいたしていたら、だれもいないはずの仏間から、チーンと鐘を打つ音が聞こえてきた。

「あのときは、さすがにゾッとしたな。わしの剛刀も、すっかり萎えてしまったわ」
そう言って、今年67歳になる大貫は、ひとり悦にいって、カラカラと笑う。
そんな彼に口を挟もうことなら、どえらいしっぺ返しを食うことになる。しかしそのときの桂樹は、ハイな気分だったし、いつもの注意力が散漫になっていた。
「あのう、会長――剛刀って、もっと荒々しくて、硬いモノをいうんじゃないですか?」
桂樹は思わず軽口をたたいた。
あわてて白取が、桂樹の脇腹を肘で突ついたが、あとの祭りだった。
一瞬、大貫会長は黙り込み、それからふんぞり返ると、眠そうな目で桂樹を見つつ、フ、フ、フ、と無気味な含み笑いをした。
「高山くん、今日はさえてるね」
「――」
「それでなにかい、わしのモノが柔らかいとでも言うのかい?」
「いえ、わたしは別にそんな――」
「こんどきみのお尻を貸してごらん。実験してみようじゃないか」
そのあと鬼怒川に着くまで、大貫の嫌味が延々とつづいた。桂樹はぼんやりと大貫の顔を見ながら、ひたすら嫌味に耐えていた。

「高山くん、営業の仕事は順調か?」
夕食後、旅館の一室でくつろいでいるときだった。大貫が桂樹に訊いた。
桂樹は歯切れの悪い返事をした。
「それが――初仕事をなかなか取れなくて」
「そんなことはない、きみは新規事業の画期的な提案をしたじゃないか」
横から白取部長が助け船を出した。
それを聞いて、大貫が興味を示した。
「新規事業?どんな事業だね」
桂樹にかわって、白取が説明しだした。

話を聞きおわると、大貫が大きくうなずきながら言った。
「とても面白い話だ。特定共同事業については、うちも研究しているところだ。よければその話に、うちも加えてもらえないか?」
思いがけない申し出だった。白取は一も二もなくうなずいた。
「それは願ってもないことです。不動産プロの向陽さんに加わっていただければ、事業もぐっと現実味を帯びてきます」
「しかし、そんな難しい事業方式を高山くんが提案したなんて、俄には信じ難いな」
「あの、会長。それはどういった意味でしょうか」
大貫のいやみに反応して桂樹が言うと、大貫はなんでもないというように、手を振った。
「なに、他意はない。ところでゲイルは元気にやってるか」
桂樹は一瞬、沈黙した。最近、ゲイルとの間には、冷ややかなものがある。彼は何食わぬ顔で言った。
「元気ですよ――元気すぎるくらいです。会長は、ゲイルと気が合うようですね」
「それはそうだ。わしとゲイルは、鯉の吹き流しのようなものだからな」
「なんですか、それは」
「知らないのか、きみは。江戸っ子は五月の鯉の吹き流し――口は悪いが、腹には何もない。さっぱりしてるってことだ」
桂樹は少し考えて、おもむろに言った。
「吹き流しの姿を想像しますと、口先ばかりで内容が無いって意味にもとれますね――」

「面白い――」
大貫がふんぞり返った。それから、部下の失言に恐縮している白取のほうをちらりと見て、ついで桂樹に向きなおった。
「きみに忠告しておくが――きみはもうちょっと、口に気を付けなければ、営業の仕事は取れないよ」
「はあ――」
「それから、目上の者を敬う気持ちだ。奉仕の心もな」
とたんに桂樹が顔を上げて、明るい声で言った。
「ですからこうやって、会長に鬼怒川までお越しいただいて――」
「それに謙虚な気持ちだ」
若者の言葉を遮って、大貫は続けた。「押し付けがましくしないことだ」
桂樹は、おおきくうなずいた。
「もちろんです。今年に入ってゴルフを7回もお付き合いしたから、仕事をくれなんて、押しつけがましいことはひとことも言ってません」
「今、言ってるじゃないか!」と大貫。

そこで桂樹はずけずけと言った。
「――そうですか。じゃあついでに言わせていただきます。はっきり言って会長には、ずいぶん貸しがあります」
「なんだ、貸しってのは?」
「前にアメリカ大使館で、会
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