その4 おいちゃん

その4 おいちゃん

8月に入り一気に暑くなりました。
こうなるともう、外に出るのがおっくうで、クーラーのきいた自宅か喫茶店で、高校野球の熱戦でも見ているのが、賢い夏の過ごし方です。
しかし玄じいさんは、薄地のズボンに半そで柄シャツ、野球帽を被って、ひとりブラブラと歩いていました。
(今日はどの親父のモノを賞味するか)
おそらく、そんなことでも考えながら、街をぶらついているのでしょう。

公園に入って、日陰を縫って歩いているときでした。背後から、年配の男性の声がしました。
「おう、玄坊。久しぶりやな」
振り返る前から分かっていました。声を聞いたとたん、胸がドキドキと波打ちだしたのです。この場合、ときめく動悸ではなく、いやな動悸でした。
「――あ、おいちゃん、お久しぶりです」
玄じいさんは努めてなにげなく返事をしますが、この場から逃げたい気持ちが、声の調子に滲み出ています。75歳の玄じいさんを坊や扱いするこの人物は、いったい何者なのでしょうか。

実はこの老人、玄じいさんの叔父にあたる人なのです。正確に言えば、玄じいさんの父親の弟であり、12人兄弟の末っ子なんです。
85歳、でっぷりと太って、どことなくタヌキを思わせるくせのある顔つき。
そして尊大な態度をしています。
「見たところ元気そうやのう」
「おいちゃんこそ、元気そうですね」
「それは見かけだけや。近ごろ肝心なモノが、満足に立ちよらんわ」
「――」
年齢は10歳しか離れていませんが、玄じいさんにとって、おいちゃんは老師のような存在でした。
なにしろ彼がコノ道に入ったのも、おいちゃんの教えがあったからです。
それにしても、85歳でシモの話をするとは、まだその方面の欲望があるということでしょうか。

おいちゃんは恰幅の良い身体をぐっと寄せてきて、ふいに玄じいさんの股座を、ごつい手で鷲掴みにしました。
「相変わらず男漁りをしとるんやろが」
突然急所を掴まれて、玄じいさんは喘ぎました。昔なら雨後の筍のように、ムクムクと生い立たせたのでしょうが、75歳の今は変化なしです。
おいちゃんもそれに気づいたのか、こんどはもう一方の手で、玄じいさんの肉付きの良いお尻をなでなでして、谷間の窪みに指をグッと押し付けました。
思わず、ウッ!とする玄じいさんの反応を見て、おいちゃんはニヤリとします。「ほほう、今はこっちのほうがいいんか」
通りかかったご婦人が、ふたりのほうを怪訝そうに見て、歩き去りました。
しかしおいちゃんは、通りがかりの人の目など、気にかけません。昔からそうだったのです。そして、潰した声で言います。
「どや、たまにはわしの家に遊びに来いや」
誘うというより命令する口調です。
一瞬、断ろうかと思いましたが、そんなことできるわけがありません。玄じいさんは、気弱そうに返事をしました。
「えっ――あ、はい――そのうちお伺いします」
そこにはいつものふてぶてしい、玄じいさんの姿はありませんでした。
「そうか。じゃあ楽しみにしてるぞ」
おいちゃんは満足そうに言うと、じゃあと言うように、玄じいさんのお尻をぴしゃりと叩き、ふんぞり返って歩き去りました。

じっと立ち尽くして、おいちゃんのずんぐりむっくりした後ろ姿を見送る玄じいさんの表情は、悲哀が漂っていました。
おいちゃんの家に行けば何をされるか。
(近ごろ満足に立ちよらんと言うことは、玩具を使うってことかなあ?)
玄じいさんはその昔、徐々にディルドを太くしながら、秘門を拡張された情景を思い出して、肌をブルッと震わせました。

――*――

玄じいさんが49歳のときでした。その頃は――信じる信じないは読者の勝手ですが――超真面目な独身サラリーマンでした。
亡父の法事があって、その夜、おいちゃんが家に泊まりました。
法事に集まった親戚を送り出して、ようやく一息ついたふたりは、遅い風呂に入って汗を流しました。
「ほほう、玄坊はおなごのようにきれいな肌をしてる。尻もむっちりと肉がついて、ちょうど食べごろの季節やな」
椅子に腰かけて身体を洗っていた玄さんは、おいちゃんの声に横を向いて、息が止まるほどの衝撃を受けました。
なんと、すぐ目の前に、生々しいずる剥けの男のお道具があったのです。
土手が盛りあがって、ふてぶてしいほどカリの張った亀頭が、黒々とした陰毛を背景に、目に迫ってきました。湯に濡れて、テラテラと明かりを反射させるほどに力を漲らせているのです。

思わずゴクリと唾を呑み込みました。ソレから目を逸らそうとしても、まるで強力な磁力でも働いているように、目を逸らすことができません。
「ほれ、遠慮せんでいい。しゃぶってみい」
声と共に後頭部に手を添えられ、ぐっと引き寄せられました。
禍々しい男の凶器がアップで迫りました。
仕方なく唇を開いた途端、肉の塊
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