(1)
長谷千佳子は堀部長の体の下で、絶頂を迎えようとしていた。彼女のあえぎ声が絶え間なく、そして甲高いものに変わっていった。部長が腰をぐいと押しつけると、彼女はひときわ大きくあえぎ、その体が弓なりに反り返った。
「ああーっ!あっ――」
強烈なエクスタシーに、彼女の肉体がぶるぶると震えた。少し遅れて堀も到達した。男の分身がグッと膨らみ、弾けるように震える。最高に感じる瞬間だった。彼女は部長の体にしがみ付いたまま、体内で脈打つオトコを味わっていた。
息が治まったあとも、二人は長年連れ添った夫婦のように、ひっそりと抱き合っていた。
千佳子は部長に抱かれながら、ふと榊原剛を思った。彼と別れて二年になる。原因は彼のほうにあった。榊原は根っからの浮気者で、彼女に飽いたのだ。
それでも彼女は、今もって彼のことが忘れられなかった。ひとひねりもふたひねりもある会話。思い出すだけで顔の赤くなるような、ベッドの中での行為。
榊原は、彼女の右太腿の内側にある赤い痣が、男を興奮させるのだと言っていた。
彼といっしょにいる時は、いつも刺激と興奮が伴った。どことなく屈折した大人の心と、妙に母性本能をかきたてる子供の心――それがまた榊原に惹かれるところだった。
それに比べ、堀幸男は大いなる父性で、彼女を暖かく包み込んでくれる。考え方もオーソドックスなら、男女の行為もオーソドックスだった。彼女は堀といっしょにいると、安心感と充足感を強く覚えた。頑丈な船に乗って、ゆったりと波に漂うようなやすらぎだった。それに彼女の見込み通り、堀は立派なオスの機能をもっていた。そのお道具で、彼女の体の隅々まで満たしてくれる。それでも彼女は、榊原と比較して、心の片隅に物足りなさを覚えていた。
もともと彼女は、榊原を忘れるために堀と寝たのだ。新任の上司が女性に飢えているということは、目つきで分かった。朴訥で生真面目な欲求不満の初老男を、自分の部屋に誘い込むのは簡単だった。
朝早く部長の事務机の上を拭いたり、給茶のサービスをしたり、控え目に部長に気のあるそぶりをする。そして機が熟すと、さりげなく言う。
「部長、お寿司が好きだそうですね。私、安くておいしい店を知っています。よろしければ、ご一緒しませんか」
そして寿司屋まで行けば、あとは彼女の意のままだった。アルコールが入って普段の鎧を脱ぎ去った堀は、ほんのひと触れで、男の本能をよみがえらせたのだ。
「私はそろそろ帰るよ」
堀がベッドサイドの時計を見ながら言った。
(奥さまが恐いのね)千佳子は思ったが、黙って男の体から離れた。
(私のことを奥さまに知られたら、部長はどうするのかしら?)
彼女は服を着て、部長を見送りながら、ぼんやりと思った。
そのときの彼女は、まさか自分の部屋に隠しカメラが仕組まれていようとは、夢にも思っていなかった。
――◇――
円堂昌輔は、週末のゴルフ旅行で貝山先生のお供をした。相手は平和銀行の若井頭取と、その子会社であるアスカビルの神山社長だった。彼は、神山の若さに驚くとともに、その整った顔立ちに、密かに抑えていた男好きの血が騒ぎだした。
それにしても、若社長の傍若無人ともいえる言動にはとまどいを覚えた。高名な貝山先生を、屁とも思っていない様子だ。
ゴルフ場の風呂場で神山の裸体を目にしたときは、息が止まるほどの興奮を覚えた。筋肉質のすんなりとした上半身、クリッと締まった尻。そして、ふてぶてしいほど発達した男の道具――。
昌輔がその神山の部屋を訪れたのは、夜の10時ごろだった。貝山先生が昌輔のマッサージ技術を話題に出して、それに神山が乗ったのだ。
「おっ、来ましたか。お待ちしていましたよ」
神山は昌輔の見ている前で、浴衣を脱いだ。彼がパンツ一枚の姿になったとき、昌輔はどぎまぎした。
神山はベッドの上でうつ伏せに寝そべった。昌輔はおずおずとベッドに上がり込み、神山の体に覆い被さるようにして、手を這わせた。夜中に若い男性とふたりきりでいる事を、彼は強く意識した。
「じょうずじゃないですか。とてもいい気持ちだ」
神山が心地良さそうに言った。
昌輔は相手の肌に直に触れ、鼓動の高まりを覚えていた。彼がときどきマッサージをする先生の太った体とは大違いだった。神山の体は贅肉ひとつなく、筋肉が発達してしなやかだった。彼は両手の親指で、逞しい背骨伝いに押していった。目の前には、締まったウエスト、そして薄い布に覆われたヒップの膨らみがあった。彼は興奮から、喉がからからになった。
「よし、もういいですよ」
神山はうめくように言うと、仰向けになった。そしてふいに、昌輔の手首をつかんだ。
「さあ、こんどはこの柔らかい手で、別の凝ったところを揉んでほしいな」
こちらを向いた神山の股間では、テントを張ったようにパンツが盛り上がってい
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