(7)

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3人の重役たちが社長室に入ったとき、神山薫は電話中だった。
やがて電話を終えると、薫はソファーで待つ重役たちのほうに振り返った。
「よう、じいちゃんたち、今日はまたお揃いで何だ?」
藤沢は、社長がソファーに落ち着くまで黙っていた。その顔は血の気が引いて、白っぽくなっている。
「社長、今日はお話があって参りました」
薫はじれったそうに手を振った。
「それは分かっている。早く話せ、覚」
「社内風紀のため、そして私たちの精神衛生上からも、社長にお願いがあります。駄目なら、私は会社を辞めることも、いといません」
「おまえが会社を辞める?それは困る」
薫はあわてた。「まだおまえには、身体の報酬を貰ってないぞ」
「その冗談は、私が暇なときに笑っておきます。今は真面目に話を聞いてください」
藤沢は、にこりともせずに言った。
「わかった、覚ちゃん。さあ、話せ」
「まずひとつは、その覚とか名前で呼ぶのはやめて、姓で呼んでいただきたい」
「どうして?アメリカじゃあ、親しくなると皆、ファーストネームで呼び合ってるぜ」
「ここは日本国です」
「あ、そう。で――ほかには?」
「私たちの存在価値も認めていただきたい。社長からご覧になれば、私たちは凡人です。でもみんな、この会社をよくしようと精一杯働いています。社長は優秀な方です。だからこそ、からかい半分ではなく、私たち凡人に対しても、真面目に接していただきたい」
「おれが優秀?それでおまえたちが凡人?それって、ひょっとして皮肉か?」
「どう受け取られようとかまいません。それから――」
藤沢は突き放すように言った。「もっと真面目に、人間をやってください」

途端に気色ばんで、薫は藤沢をにらんだ。
「もっと真面目に人間をやれだと!どういう意味だ!」
「あなたの人間性を疑っているのです。あなたの性道徳はどうなっているのですか?この二人になんてことをしたのですか?」
藤沢は声を震わせた。「まるで盛りのついた牡ネコのように――」
横にいる大友と伊室の緊張が高まった。彼らはいつ社長が爆発するか、と身構えた。
しかし予想に反して、神山社長は急におとなしくなった。そしてぼそりと言った。
「あれは衝動的にやったことだ。おれは若いからな」
「若いって――もう38歳になるじゃないですか」
藤沢は厳しく言った。「ちっとはお父上のお気持ちも、察したらどうですか?」
薫は怪訝そうに顔を上げた。
「親父の気持ち?どういうことだ?」
「あなたのお父上は、お孫さんたちと一緒に暮らしたいのです。それが週に一度、ほんのわずかの時間、会えるだけで――」

そこで藤沢は、神山一郎との約束を思い出してハッとした。彼らが会っていることは、息子の薫には内緒のことだった。しかし後の祭りだった。
「親父がおれの子供たちに会ってるだと?おれの女房はいたのか?」
藤沢はしかたなくうなずいた。しかし神山社長の考えていることは、藤沢のまったく予想さえしないことだった。
「親父のやつ、どこか尚子に下心があると勘ぐっていたが、やっぱりな。畜生、どうしてくれよう――」
藤沢はあっけにとられた。社長の考えていることは、あまりにもばかばかしくて、彼は声も出せなかった。
「それでどうだ。尚子は親父に対してどんな様子だった?」と社長が訊いた。

「馬鹿なことを聞かないでください!」
藤沢は声を荒げた。「なんて方だ!父親と自分の奥さまの関係を疑うなんて。言っておきますが、あなたの奥さまもお父上も、あなたよりはるかに立派な方たちです。実際、あなたには、もったいないくらいだ」
反撃すると思ったのに、若社長は静かになった。
「分かった。それで、もう話はおわりか?」
「言いたいことはたくさんあります。それに私だけでなく、大友や伊室もあなたに言いたいことは、山ほどあるでしょう。でも、今日はこれくらいでやめておきます。あとは、あなたのご返事をいただくだけです」
「分かった――」
薫は小声で言った。「はっきりと言ってくれてありがとう。おかげで、自分がどんな人間かよく分かった。それにみんなが、おれのことをどう思っているかもな」
彼は妙にしおらしく微笑んだ。
社長の殊勝な返事に、藤沢はきつく言いすぎたことを、少し後悔していた。いまこの若い社長は、部下たちに反旗をあげられて、すっかりうろたえているのだ。わがままで自分の言いなりに育った彼にとって、こんなことは初めての経験なのだろう。
藤沢は思わず言っていた。
「社長、言い過ぎたことは、お詫びします」
「お詫び?そんな必要はない。おまえの言ったことは、すべてごもっとものことだ。今晩家に帰ったら、一人で押し入れに閉じこもって、さめざめと泣きながら反省するよ」
「社長〜っ!」
藤沢は声を荒げた。「ほんとうに、真面目に考えているのですか!」
「ああ
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