あけぼの建設・東北支店長の植田叉次は、身長160センチにも満たない小柄な体を大きな革張りの椅子に沈め、なにやら難しい顔つきをしていた。小顔かつ愛らしい風貌なので、眉をひそめた様子は、気難しさよりもむしろ微笑みを誘う品がある。
彼が難しい顔をする原因のひとつは、支店収支の悪化だった。年々、建設の受注額が先細りするばかりで、このままだと経営赤字になるのも避けられない状況である。
もうひとつの原因は、本社の大野常務からの電話だ。常務は、叉次から今期の見通しを聞いたあと、おもむろに切り出したのだ。
「そこできみに相談だが、部長をひとり、きみの処に送りたい。もちろん、きみが反対なら、この話は無かったことにするが――」
人件費を考えれば、部長より、活きの良い若手社員が欲しかった。しかし、厭も応もなかった。敬愛する大野常務の提案だからだ。
叉次が了解すると、常務はいかにも嬉しそうに言った。
「吉田くんは優秀な人間だ。きっときみの期待に応えてくれるだろう」
その部長が今日、支店に赴任してくるのだ。しかも、叉次が住んでいる社宅に、同居する予定だった。
電話を切る前に、常務はさりげなく言ったのだ。
「きみだけには伝えておくが、吉田くんは、そのう――バツイチなんだ。だから単身赴任なので、きみの社宅に入れてもらいたい。もちろん、きみが了解すればだけど――」
これも断りようがなかった。叉次は3LDKの一戸建てに、ひとりで住んでいた。長年彼を献身的に支えてくれた妻を2年前に亡くし、子供はすでに巣立っていた。
常務の提案は、経済的に見ても合理的なのは分かっている。しかし、家族の思い出の残る家に他人が入り込むのは、決していい気持がしなかった。
叉次は小さくため息をつくと、机上の書類に手を伸ばした。
オー マイダーリン オー マイダーリン
オー マイダーリン クレメンタイン――
のどかなアメリカ民謡を聞きながら、車窓を流れる景色を眺めていた吉田和之は、新幹線が減速するのに気付いた。イヤホンを外すと、まもなく仙台駅に到着するというアナウンスが流れていた。
和之は大きく伸びをした。真面目と素朴をないまぜにしたごく平凡な顔立ち。短髪の頭は、黒髪の裾が白くなり始めている。彼は50歳になる。若いころ柔道をやっていただけあって、中背だが分厚い胸とどっしりした腰回りをしている。
東北支店に行くのは初めてで、資料による予備知識しかなかった。
以前見た社友誌の記事で、植田支店長の写真が掲載されていた。背が低く愛嬌のある体つき。すっかり白くなった頭髪に丸っこいおでこ。薄い眉毛と、眼鏡の奥で優しそうに輝くつぶらな瞳。いかにも温厚で、人に好かれる風貌をしている。初めて植田支店長の写真を見たとき、和之は淡いときめきを覚えたものである。
人事部から得た略歴によれば、支店長は現在65歳、現職に就いて12年になる。そろそろリタイアしていい年齢だ。
そして大野常務――常務のことを思うと、体の芯が熱くなる。でっぷりと肥った豊満な体型と、優しい父性を感じさせる赤ら顔。
和之はその重役と、人に言えない親密な関係にあった。昨夜もホテルの一室で、お別れのひとときを過ごしたばかりだ。
常務は仰向けに寝た和之の下腹部にまたがって、緩やかに茶臼をひきながら話した。
「――しばらくきみと楽しめなくなると思うと、寂しいかぎりだな。でも会社のためだ。きみが東北支店に行けば、きっと植田くんも大助かりだと思うよ」
ビチュ、ブチュ、ジュブブ――。
豊満な尻の小動きに、結合部から濡れた音が漏れ出る。
和之は、やわらかい感触を楽しみながらも、常務の真意を量りかねていた。ひょっとして常務は、植田支店長ともねんごろなのでは――。
というのも、植田の話をするとき、常務の顔はいつになく和んでいるように見えたからだ。
和之はそのへんのところを、慎重に探った。
「常務は、そのう――なんて言うか――植田支店長とは永いのですか?」
そこで和之は、思わずうめいた。「ああっ!いい――」
大野常務が肛門括約筋を引き締めながら、尻を大きく上下させた。それから、和之の言わんとするところを見抜いて、ほがらかに笑った。
「ハハハ――あいにく植田くんは、お堅いことで有名だ。まったくのノンケだな。でも奥さんを2年前に亡くしている。それに一軒家の社宅に、これからきみとふたり住まいだ。ひょっとしたら、寂しさのあまり、きみと親密な関係になるかも知れん。そうなったら私に知らせておくれ。植田くんを抱いてみたいと以前から思っていたんだ」
和之は、重役の言葉を素直には受け取れなかった。
(海千山千の大野常務のことだ、きっと今回の転勤には裏がある――)
そんな憶測を飲み込んで、和之は本格的に重役の体を慰めはじめた。
まずは常務をうつ伏せにして腹の下にクッシ
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