頭隠して尻隠さず

男に対する私の好みは、体毛の薄い、肌の滑らかなタイプだ。それにどちらかと言えば、太めの方が良い。かく言う私も、少し太めからすると、類は友を呼ぶ、あるいは、同類あい憐れむ、ということか。
大柄なでっぷりタイプ。背の低いぽっちゃりタイプ。私の付き合う友人に、こんな体型が多いのは、お仲間意識が働いているのだろう。
――と思っていたところ、全く違うタイプの老人に恋をした。

北海道は洞爺湖温泉に行ったときのことだ。
週初めなので、温泉宿は空いていた。さっそく宿自慢の、露天風呂に入った。
岩を組んだ広々とした露天風呂を中心に、沢のような湯の溜まりも配されている。まだ陽が高いので、全てがくっきりと見える。
可愛らしい老人を見かけたのは、その時だった。
老人は60代半ばくらい。孫らしき5歳くらいの男の子を連れていた。七三に分けた白髪に小細い目鼻立ち、体毛の無い小さな肉体。まるで、思春期前の子供のような体つきをしている。
老人は明るい性格らしく、茶目っ気のある仕草で話しかけては、孫をしきりに笑わせている。その内、孫を縁石に腰掛けさせて、老人は立ち上がった。
次に老人の取った行動に、私は仰天した。なんと老人は、オットセイのように、水飛沫をあげて湯の中に飛び込んだのだ。



ほんの一瞬、老人の開いた尻だけが見えた。湯の中で、ポッカリと浮かび上がった小島のように、すんなりとした白い双丘と、初っぽい菊座――。その光景は私の脳裏に、強烈な印象を焼き付けた。
よほど普段から摂生に務めていなければ、あんな身軽なことは出来ない。
大喜びの孫を連れて、次の湯に向かう小さな後ろ姿を目で追いながら、私はその老人に恋をした。あの可愛らしいお尻を、是が非でも我が物にしたい。その思いは、圧倒的だった。
でも現実の世界は非情である。その老人は孫に目が無い全くのノンケで、私の付け入る隙は皆無だった。

旅行から戻ったあとも、しばらく老人の小柄な姿が目蓋に浮かんだ。
頭隠して尻隠さず――老人の取ったそんな姿態が、一時的な催淫剤となり、私に恋心を抱かせたのかも知れない。
ともかくそれ以来、老人に対する私の好みの枠が広がったのは、確かである。
18/08/01 07:29更新 / 神亀


[7]TOP
[*]感想
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35b