(3)にわか雨

(ええっ?嘘だろう――)
パチンコ店から出た陽三は、空を振り仰いでつぶやいた。あれほど晴れていた空が、黒い雲でおおわれている。と見る間に、大粒の雨がぱらついてきた。
(仕方ないな)
陽三は傘を持たずに、歩きだした。アパートまでは、歩いて20分。なんとかなるだろうと歩き始めたが、読みが甘かった。急に土砂降りの雨に変わった。
「なんだ、これは!」
陽三は悲鳴を上げた。
あっという間に、シャツやズボンがびしょ濡れになった。バケツの水をぶちまけたような激しい雨に、思わず通りかかった民家の軒先に飛び込んだ。

大慌てで洗濯物を縁側に取り込んだ昭彦は、ほっとため息をついた。
(やれやれ、なんて天気なんだ)
彼はぶつくさ言いながら、縁側にロープを張って、洗濯物を吊るした。作業を終えると、台所に行った。
(昼飯は素麺にするか――)
ぼんやりと考えながら、出窓のサッシを少し開けた。外は相変わらずのひどい降りだ。
そのとき玄関の軒先に雨宿りする男の後ろ姿が目に止まった。中背、どっしりした体格。びしょ濡れのシャツと綿のズボンが、太めの体にへばりついている。
(可哀想に、急の雨に打たれたんだな)
なぜかその男が気になった。短く刈った灰色の頭髪から見て、自分と同じくらいの歳だろうか。肉の厚い立派な体格。図太い腰回りには、満々と精力が貯えられて、しぶとい力がみなぎっていそうだ。
雨宿りする男を見ていると、好き者の血が騒ぎだした。

雨の降りが少し小さくなった。
(どうせ濡れたんだ。雨の中を歩いて帰るか)
陽三は軒先から出ようとした。そのとき玄関の格子戸があいて、和服を着た初老の男が顔をのぞかせた。
「急の雨で、お困りのようですね」
顔つき同様、おだやかな声だった。
「あ、すみません。軒先をお借りしました」
陽三は頭をさげた。
「いえいえ、どういたしまして」
家の主は鷹揚に手を振った。「よろしければ、シャワーでも浴びませんか。服が濡れているようですから、その間に乾かされてはどうでしょう」

どうしてそんなことを言ったのか?昭彦は自分でも驚いていた。とにかく男の顔を見た途端、自然に口をついて出た。
最初のうち、男は昭彦の申し出を丁寧に断っていたが、強く勧めると人が良さそうに従った。
「脱いだものは、カゴに入れてください。すぐ洗って干しますから」
男は従順に、昭彦の前で服を脱ぎ始めた。筋肉に代わって脂肪が付き始めていたが、肉太の立派な体格だった。それに色白のきれいな肌をしている。
最後にブリーフを脱いだとき、皮を被った太い性器が垣間見えた。
男の姿が硝子戸の向こうに消え、まもなくシャワーの音が聞こえてきた。昭彦は洗濯しようと、LLサイズのブリーフを手に取った。なぜか心がときめいた。彼は型ガラスに映る男の様子を窺って、手にしたものをそっと鼻に押し当てた。男の親密な匂いがした。
(私は何てことをしてるんだ!)
彼は慌てて、下着を洗濯機に入れた。
洗ったものを縁側に持っていって、ロープに干した自分のものと並べて吊るした。空調を入れて除湿にし、それからキッチンに戻った。

シャワーのぬるま湯が気持ちよかった。陽三は、頭から肩、腕、胸へとシャワーをかけた。生き返った心地がする。股間を洗っているとき、健康的な肉太の男根がむくむくと頭をもたげかけた。



(しまった。シアリスを飲んでたんだ!)
陽三はあわてて性器から手を離した。そのとき、浴室の片隅にある見慣れたものが目に止まった。青いゴム製の直腸洗浄器――生前の義父が使用していたものと同じタイプだ。
何でこんなものが?ひとり住まいのようだが、家の主が使っているのか?またもや股間で陽物が持ち上がる。
(いかん!)
あわてて妄想を断ち切って、浴室を出た。
洗面台の上に、ユカタと白いフンドシがきちんと畳まれて置かれていた。下着は見当たらないので、それを着ろということらしい。褌を身につけるのは初めてだが、義父が着けるのを手助けしたことがあるので、やりかたは知っていた。丈が短くて前垂れの布が寸詰まりだ。ユカタも小さすぎて、足が大きく突き出ている。鏡に写った姿は、まるで以前見た映画の山下清だ。

キッチンに行くと、家の主は食卓の上に、食器類を並べていた。彼は陽三のユカタ姿を見て、おどけた表情をした。
「やっぱり、あなたには小さすぎましたね。まあ、服が乾くまでの辛抱です、どうぞお掛けになってください」
勧められるまま椅子に腰掛けると、主人は陽三の前にグラスを置いて、ビールを注いだ。自分のぶんにも注いで、グラスを掲げた。
「さあ、湯上りの一杯です。乾杯!」
「――乾杯」
陽三は相手の陽気につられて、グラスを口につけた。喉越しの冷えたビールは最高だった。彼は一息ついて、改めて礼を言った。
「有難うございます。大変お世話になった上に、ビール
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