朝からなんとなく胸騒ぎがしていました。
それでも、昼休みのとき、若手社員を相手に剣道でひと汗かいて、シャワーを浴びると、すっきりとした気分になりました。
奈井須凱(ないすがい)は50代半ば、御居処(おいど)カンパニーの営業部長で、皆から信頼されている真面目で律儀な男です。それに、子供の頃から剣道をつづけているおかげで、姿勢の良い立派な体格をしていました。
今日は夕方から、取引先との会食が予定されています。
予定の時刻になって、凱は部の社員に声をかけました。
「じゃあ、これから行ってくる」
「あ、お車を呼びますか」
「大丈夫。今日はお客さまの車だ」
ビルの玄関先に行くとすでに取引先の車が待っていました。老いたプロレスラーのような体格をした運転手が、凱のために後部ドアを開けてくれます。
凱は175センチありますが、この運転手はそれ以上に大きいのです。
車の中で、満面の笑みが凱を出迎えてくれました。
阿礼会長――この老人を見ると、口にこそ出しませんが、凱はいつも和尚さんを思い浮かべます。でっぷりと肥って、艶やかな禿げ頭と、仏さまのように柔和な顔立ちをしています。
凱は腰を下ろしながら、会長に微笑みかけました。
「すみません、お待たせしちゃって」
「いえいえ、まだ約束の時刻前ですよ」
会長が言って、いかにも親密そうに凱の手に、自分の手を重ねました。
車中でのんびりと会話していると、ふいに軽い衝撃がきました。
すぐ前には黒塗りの大型車が止まっています。中から黒服を着た、いかにもその筋の男たちが出てきて、こちらの車を取り囲みました。
「すみません、うっかりしてぶつけちゃいました」
老運転手が申し訳なさそうに言いました。
そのあとは万事が目まぐるしく動きました。車に乗っていた3人は、男たちにせき立てられて、近くにある大きな屋敷に押し込まれました。
老運転手は別室に連れていかれ、凱と阿礼会長は奥の座敷に通されます。
部屋には白髪の老人がいました。日本刀の手入れをしています。
(真剣だな。しかも刃をつぶしていない)
剣道をやっている凱は、即座に見抜きました。そしてゾッとしました。
(いったい、これから何をされるのか――)
老人は黙って黒服の男の報告を聞いていました。どうやらこの老人は、危ない筋の親分らしいのです。聞き終わると、老人は鋭い目付きで凱たちを見ました。それから静かに口を開きました。
「あんさんたち、まずいことをしてくれたな」
阿礼が、神妙な口ぶりで返答しました。
「申し訳ないことをしました。すぐ保険会社を呼びます」
「保険で済むことやないっ!」
鋭い叱責に、凱はすくみあがりました。
「金の問題じゃないんや。お前たちの誠意を見せてくれ」
「は?誠意とおっしゃいますと?」
「見たところ、あんさんたち、いいコンビしてるやないか」
「――」
「面白いもん見せてくれや」
「――面白いもんとおっしゃいますと?」
と阿礼会長が訊きました。
凱は白髪の老人と阿礼会長のやりとりを聞きながら、ふと思い当たりました。
(今朝の胸騒ぎは、このことだったんだな――)
そのとき、親分は奇妙なことを言いました。
「お前たち、わしの前でアレをやってくれや」
「はあ?」
阿礼会長と凱が顔を見合わせていると、ふたりの耳に、老人の声が聞こえてきました。
「男同士がヤルのを見るのは久しぶりや。さ、シャワーを浴びて準備してこい」
(なんでそんなことしなくちゃならないの)
さすがの凱も抗議しようとしました。
と、そのとき、どこからか老運転手の悲鳴が聞こえてきました。
「んぎゃーっ!ああっ、許してくださいっ!痛いーっ!」
阿礼会長が、思わず凱の腕にしがみつきました。そして性急に言いました。
「奈井須部長、言われるとおりにしましょう」
うす暗い寝室のベッドの上で、凱と阿礼会長は全裸になっていました。脇の椅子では白髪の老人が腰掛けて、期待に満ちた目でふたりを見ています。
まず阿礼会長が、凱の股間に顔を埋めました。
やわらかい手が凱の逸物をつかみ、湿った温もりが先端を覆います。
「ああっ!」
意識とは裏腹の快感に、凱は思わずあえぎました。
意外にも、会長は慣れた仕草で口淫を続けています。ぽってりとした唇に呑み込まれて、先端に舌がねちっこく絡みつき、カリの膨らみから茎につながる窪み、それから鈴口へとねぶります。
器用な舌とやわらかい口腔の感触に、凱の欲情は急上昇しました。いつしか彼は目を閉じて、自ら腰をうねらせていました。
阿礼会長が四つん這いになって、迎え入れる体勢をとったとき、凱はすっかり野生の本能をたぎらせていました。男色行為は未経験でしたが、どうやればいいか男の本能でわかります。
(ここまでくれば、相手が男だって構やしない――)
彼は固く膨れ上がった自分の逸物を握り、
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