(7)

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ガシッ!鈍い音とともに、ボールは低い弾道で飛び出し、緩い楕円軌道を描いて右の林のほうに向かっていった。
ギャラリーのため息が洩れた。
あきらかにミスショットだった。貴史は心の中で舌打ちをし、うつむいたままフェアウエーに向かって歩き出した。
4日目のスタートホールで、貴史はプロになって以来、初めてトップに立っていた。
しかし、それもほんの一瞬のことだった。3ホール目でOBを叩いてダブルボギー、次のホールもパーパットがカップに蹴られてボギー。あっというまに3位に転落していた。
その日はティーショットが不調だった。とくにこれといった原因はなかったが、ボールがスライス気味に右にぶれるのだ。そして今も、右の林に打ち込んだばかりだった。
近づくと、ボールのライはよかったが、グリーンに向かって20ヤードほど前方に、こんもりと葉の茂った木の枝があった。グリーンを直接狙うには、大きくスライスを掛けなければならない。しかしスライスが掛からなければ、真っ正面に大きな池が待ち構えている。
勝負に出るか、それとも刻んでいくか。貴史は迷った。

そのとき、ボブが声をかけた。
「タカシ、刻みで行こう。ここはグリーン手前に、深いガードバンカーが待ち受けている。うまくスライスが掛かったとしても、バンカーに捕まる可能性が高い」
「しかし刻んでもスリーオンするかどうか分からないぜ。ここはグリーンが小さいんだ」
「大丈夫だ。アイアンのストレートボールは切れがいい。チャンスは必ずくるよ。だからここは我慢しよう」
結局、貴史はボブのアドバイスを取り入れて、刻みでいくことにした。
ボールをフェアウエーにいったん出すと、気を取り直して、6番アイアンで第3打を放った。打った感触で、ナイスショットだと分かった。ボールはグリーンに向かって、真っ直ぐに飛んでいった。しばらくして、グリーン周辺にいるギャラリーから歓声が上がった。
振り返ると、ボブがニンマリとして、白い歯を見せた。貴史はそのホールを、なんとかワンパットのパーでしのいだ。

次のティーグラウンドに向かうとき、ボブが冷静な口調で言った。
「タカシ、さっきの6番アイアンの感覚を大切にするんだ。あれは最高のショットだったよ。それから、今日はティーショットが右にぶれているようだけど、気にすることはない。そのうち調子が戻るよ」
「調子が戻ったときには、ゲームが終わってたりしてな。でもどうしてスライスが出るんだろう?グリップもスタンスも、ちゃんとチェックしてるのに」
貴史はぼやいた。
ボブが明るい声で言った。
「きみのスイングはいつもと変わらない。強いて原因をあげれば、左膝に疲労がたまって、スイングのときに微妙なずれが生じているんだと思う。でもそれは、ほんのわずかなずれだよ。だから気にすることはない」
「いつものボビーらしくない発言だな。今日はえらく楽天的じゃないか。でも膝の疲労が原因なら、この先、もっと悪くなるかも知れないぜ」
「それは意識しないほうがいいよ。ゴルフで恐いのは、神経質になることだからね。でも――心持ちボールを右に置いたらどうだい?ほんの気持ちだけね。スライス防止の応急処置だよ」
次のホールのティーショットは、やっと満足のいくものだった。貴史はボブのアドバイス通り、ボールをほんの少し内側に入れてショットをした。
それをきっかけに、彼のショットはやっと本来の調子に戻ってきた。胸のうちのモヤモヤしていた思いが、すっきりしてきた。

そして最終ホールを向かえたとき、貴史はスコアを取り戻して、トップと2打差に迫っていた。
そのホールはグリーンの手前に大きな池のある、美しいロングホールだった。オーナーだった貴史のティーショットは、まあまあの当たりだった。
2打目の地点で、貴史はふたたび迷った。残りの距離はスプーンで届く距離だった。優勝を狙うには、ツーオンのイーグル狙いしかない。しかし失敗して池に入れれば、2位の座も危うくなる。トップの選手はすでに2打目を打ちおわって、池の手前にボールを運んでいた。
ボブがこともなげに言った。
「ボールのライはいい。タカシ、狙うんだろう?」
「おい、ボビー。今度は強気だな。5番ホールでは刻めといったのに」
ボブがいたずらっぽくウインクした。
「だって優勝を狙うんなら、強気で攻めるしかないよ。この先、試合はたくさんあるんだ。ここで刻んだら、悔いが残るだろう。――あのとき攻めていたら、優勝できたかもしれないってね」
「そうだな、我慢に我慢を重ねてきたことだし、今がいざというときだ。よし、失敗してもともとだ。チャレンジするか」
「その調子だ。大丈夫だよ。タカシのショットは上がり調子で、良くなっている」
貴史はスプーンを受け取ると、池の向こうのグリーンを見た。白く輝く池の先に、バンカーを挟んで
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