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その年のリーグ戦は終わった。ジャイアンツは余勢をかって、日本シリーズでも西武を4勝2敗で下し、日本一の座に輝いた。新生、長嶋ジャイアンツの優勝に、日本中が湧きに湧いた。
いっぽうでは、シローと貴史の二人の若きヒーローの出現に、マスコミが騒ぎ立てていた。その年のMVPはセ・パ両リーグとも、優勝チーム以外の選手、シローと貴史が選ばれた。シローは打率4割を逃したが、前人未踏のシーズン2百本以上の安打を達成していた。
貴史もそれに遜色のない成績だった。ホームランを53本、盗塁を67個、もちろん2位以下を大きく引き離してのトップだった。それに新人王、しかも打率と打点は3位、いずれもトップと僅差だった。
テレビは特別番組を組んで、セ・パ両リーグの若きヒーローを取りあげた。
シーズン前は二人ともさほど話題に登っていなくて、無名に近かった。それが驚異的な活躍をして、しかも二人して、肩に力が入ることもなく、ひょうひょうとしている。
テレビの前で、臆することもなく淡々と受け答えする彼らの姿は、多くの若いファンを魅了した。
「お二人は、いい意味でのライバルだと思いますが、その点、高山さんは、シロー選手のことをどう思っていますか?」
「男前ですね。テレビで見るより実物のほうが、ずっといい。ぼくが女だったら、ぜったいシローくんを放っておきませんね」
「ハハ――シローさんは高山選手をどう思っていますか?」
「すごくハンサムな人だと思っています。ハリウッドの映画スターといっても通じるでしょう」
「そうですか――なんだか、二人してわたしの質問をはぐらかしているようですが――」
夜の野球ニュース番組で、貴史はシローと初めてのテレビ対談をした。
局からは、川井キャスターが出ていた。彼は身長160センチそこそこの中年男で、若い長身の二人の間では、小男に見えた。当意即妙のアドリブとなめらかな語り口が持味で、スポーツ関係のアナウンサーとして、目下売り出し中だった。そんな彼も、ずっと年下の若い二人を相手にして、いつもの調子をとりもどせない様子だった。
「シローさん、おたがいのプレーを技術的に比較して、どう思われますか?」
と川井が聞いた。
「リーグが別で、直接対戦がないんでよく分かりませんが、オールスター戦のとき感じました――高山さんは肩が強いし、足も早い。まあ、守備と走塁は、ぼくと共通点が多いと思います。根本的に違うのは、バッティングです」
「どんなふうに違うんですか?」
「そうですね――ぼくは非力なんで、体重移動と振子の延長線上でボールを捉えますが、高山さんは体の軸を固定して、強靱なバネの捩り戻しの1点でボールを捉える。あんな打ち方は、よほど柔軟で強靱な体力と、天性の勘がないとできませんよ」
「そうですか。高山さんはシローさんをどう見ています?」
「天才的な選手ですね。技術のシロー、腕力の高山ってところですか。まあ、二人のバッティング技術は違いますが、どちらが上だとも言えない。おたがい、自分の体力と運動神経に合った打ち方を編みだしていく。頭で考えるより本能でやる――それでいいんじゃないですか。
よく決まりきったバッティングの型に、はめようとする人がいますが、ぼくもシローくんも幸運だったのは、監督やコーチが自由にやらせてくれたことです。もしもぼくらが、管理野球で有名なあのチームにはいっていたら、こんな成績は残せなかったと思います」
「あのチームってどこですか?」
「ノーコメント。それを言っちゃうと、プロ野球界からはじき出されちゃいますから」
「――ところで高山さんは、頭であれこれ考えず、本能的にやっているとおっしゃっていますが、シローさんも同意見ですか?」
「さあ、よく分かりません。ぼくの場合は、打席に立つ前から、あれこれ考えることが多いんですが――」
「ほう――そうですか?初めてお二人の、意見の相違をお聞きしました。言われてみれば、確かにお二人を拝見していますと、そのへんの違いがあるように思えますね。やはり高山さんは本能の世界ですか」
川井アナのいつものとぼけた口調が始まった。
その横で、貴史はあくまで新人らしく、生真面目な表情で言った。
「なんだか、ぼくが頭を使わない動物のように聞こえますが――川井さんって、けっこう新人いじめのところがありますね」
川井は素知らぬ顔をして、話題を変えた。
「その話はこれくらいにして、お二人のご趣味をお伺いしましょう。シローさんは?」
「えっと、音楽を聞くこと。あとはドライブかな」
「で、高山さんは?」
「早寝早起き――部屋の掃除、洗濯など家事全般――」
「――あの、高山さん、だいぶ無理をしていません?」
「どうしてですか?ぼくは目下、独身生活を送っていますし――あっ、忘れてた。それから、川井さんのスポーツニュースを
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