Robert71
ニューヨークでは、セントラルパークに近いアパートの一室を借りた。玄関ホールに年配のガードマンがいるリッチな建物だが、家賃は会社持ちなので経済的な心配はいらない。英語も普通に話せたし、アメリカでの生活は何不自由のないものだった。
それに仕事自体も、さほど負担ではなかった。私はバイスプレジデントとして、アメリカ人の経営責任者をサポートすればいいのだ。
こちらでも日本人の集まるパーティーはたくさんあったが、私はあまり積極的に参加しなかった。せっかくアメリカに来たのなら、ネイティブたちとの付き合いを優先したかったからだ。
休日は、ニューヨークの街をそぞろ歩いた。北米はゲイが多いと聞いていたが、確かに街の至る所でそれらしき人物を見かけた。
中には堂々と手をつないで歩いているゲイのカップルもいたが、若い男が多かった。
しかし、若い男にはまったく興味が湧かない。私が惹かれるのは、人生経験を積み重ねて熟成されたシニア層の男性だけだ。
ときどきハッとするような、白髪の素敵な紳士を見かけることがある。そういった男性に限って、婦人連れが多かった。
私は母国でひとりの男しか知らなかったが、こちらでは他の男と付き合うチャンスがあるのだろうか?異国の街をぶらつきながら、いつも淡い期待を抱いていた。
そして、そのチャンスは意外にも早くやってきた。
ある週末、会社の仲間たちとゴルフを楽しんだあと、彼らと別れて会員制のサウナルームに寄った。営業部門担当の重役、ボブの紹介だった。
そこはニューヨーク郊外にあるリゾート風のクラブで、温水プールもあった。しかも男性専用らしく、従業員を含めて女性はひとりもいなかった。
ロッカールームで服を脱いでいるとき、ひとりの白人男性の姿に目を奪われた。
男は小腰を屈めて、ちょうどパンツを脱ぎ終わったところだった。私のほうからは、ふっくらとした形の良い尻が見えた。完全な球形に近く、後ろにもむっちりと肉の付いた豊満なヒップ――日本人には無いタイプの尻だ。
男はバスタオルを腰に巻きつけると、一言「失礼」と言って、私の脇を通り過ぎた。
白髪で中背小太り気味、穏やかな顔立ち、年のころ70前後の男だった。私はしばらく、歩み去る男の後ろ姿を見送っていた。
高級クラブらしく、年配の客、それもコーカサス人種が多かった。彼らは美食と好色に慣れきって、あごも肩も腹も丸々として、ふくよかな肉体をしていた。私は毛深いのが苦手だが、ここには体毛の薄いなめらかな肌の白人もいて、おおいに目の保養になった。
サウナで汗を流し、そのあとバーカウンターで休憩した。そのころになると、私もなんとなく気付いていた。ここはリッチなゲイの集まる高級クラブだと。
ビールを飲んでいて、ふと人の視線を感じた。そちらを見ると、素敵な尻をしたあの年配男性と目が合った。――いかにも裕福そうな顔立ちと、まどろむようなグレーの瞳。
男は私に向かってグラスを掲げ、微笑みかけた。それから立ち上がると、ボトルとグラスを持って、私のほうにぶらぶらと近づいてきた。「横の席にいいか」と聞く。
私がうなずくと、男は腰を下ろして、自己紹介した。
「ハイ、ロバートだ。日本人かい?」
私も男に合わせて、ファーストネームだけを告げた。
「イエス、ノボルだ。よろしく」
私たちは握手した。男の手は肉が厚く、驚くほど柔らかかった。
ロバートは、持ってきた白ワインを私に勧めた。すっきりとした飲口だった。聞けばカリフォルニア産だと言う。
「日本人は大好きだ。礼儀正しくて、親切だから」
ロバートは、私に向かってウインクした。「実際、日本に行ったこともあるんだ。ノボルは東京から来たの?」
「イエス。それで、ロバートは日本のどこに行ったんだい?」
「東京や京都。どちらもすごく素敵な都市だったよ」
ロバートは親日家で話し好きらしく、次から次に日本の話題を持ちかけてくる。
私も、この老人に親しみを覚え、時の経つのも忘れて話に付き合った。彼の持ってきたボトルも、いつの間にか空になっていた。
そのうち、ロバートの態度が変化した。彼は親しみを込めて私の太ももに手を置き、灰色の目で私を見上げるようにしてささやいた。
「ここはホテルもあるんだ。部屋はすぐ取れる。そちらで休憩しないか?」
思わぬ申し出にとまどった。まさかこれほどの急展開になろうとは。
ロバートは、期待に満ちた目で私を見ながら、艶っぽい唇を舌先でゆっくりとなぞっていた。
部屋に入ると、さっそくロバートが抱きついてきて、濃密なキスをした。
もちろん白人の男性とキスをするのは初めてだったが、ロバートはうっとりとするほど、キスが上手だった。
最初は、じゃれあうように唇と唇を軽く触れ合わせる。唇を開いて舌を絡ませる頃から、じょじょに熱を帯びてきた。長い舌が口蓋の隅
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