第9章 年下の愛人

第9章 年下の愛人

春の異動で、職場に飯田という社員がやってきた。年齢はちょうど40歳。やや背の低い中肉体型、いかにも育ちの良さそうな童顔である。
前の職場の上司が書いた資料によれば、気は弱いが頭は良いとのことだ。そこで飯田には業務課長の国見の下で、予算や資料作りなどをやらせることにした。
飯田と初対面のとき、私は何となく予感した――この男は、女よりも男を好む、私と同じ側の人間ではないだろうか、と。
それほど、この男の容貌は中性的だった。薄い眉毛と臆病そうな目つき、小作りの鼻と口、頬は女もうらやむような、肌理の細かい、すべすべとした肌をしていた。
彼のウブっぽい顔立ちは、まさに同性愛者のものだった。その証拠に、40になって結婚歴もない。無口で弱気なのも、自分の性癖に対する後ろめたさなのだろう。
それでも私は、このお稚児さんのような社員に、触手を伸ばさなかった。私は元来、フケ好みで、これまでお相手した男性は、私よりずっと年長の者ばかりだった。飯田はと言えば、私より10歳近く若かった。
そんなことから、この年下の社員にはさほど興味を持っていなかった。

何かの都合で、朝の通勤電車に乗った時だった。
満員電車の中で、偶然にも私のすぐ前に、飯田がいた。彼はまだこちらに気づいていなかった。電車の揺れに、彼は倒れまいと必死に踏ん張っていた。
その時、私は性的な接触を覚えた。ズボンの前に押しつけられた飯田の臀部から、刺激的な感触が伝わってきたのだ。
ちょうど私の逸物が、尻の狭間の上部位置にあった。
そこは妙に吸引力があった。卑猥とも思えるほどだった。
ズボンの前の膨らみをやわらかく受けとめ、包み込むような感触――居ても立ってもおられないほどのざわめきを覚えた。
ズボンの中で、分身がみるみる隆起してくるのを覚えた。
柔らかい肉の誘惑は、抗しがたいほど圧倒的だった。ふっくらとした双丘、その狭間の吸いつくような軟らかさ――。私はそのすべてを知覚した。まるで衣服を脱ぎ捨てて、直に接触しているようだった。
そっと飯田の様子をうかがうと、髭のない滑らかな頬がピンク色に染まっている。
気がついているのだ。
そのことに意を強くして、私は背後から密着すると、つかの間の快楽を味わった。

その日の仕事が終わると、飯田を晩飯に誘った。朝の感触が忘れられなかったからだ。
飯田は私とふたりきりで、緊張しているようすだった。それを解きほぐすために、ビールをすすめた。彼は下戸だった。コップ一杯で顔を赤らめていた。
会話の中で、飯田の家庭を知った。ひとり息子で、父親は海外出張が多く、家では母親といることが多い。おそらく母親に、大事に大事に育てられたのだろう。
頃合を見計らって、私はさりげなく言った。
「きみは恋人がいるのかい?」
飯田は驚いたようにこちらのほうを見て、「いえ、いません」と小声で言った。
まるで世の中の穢れを知らないような、飯田のうぶっぽい顔を見ていると、私はふと、この男は童貞ではないかと思った。
私は質問した。
「経験はあるのかい?」
飯田の怪訝そうな表情。私は具体的に質問した。
「つまり、女とやったことがあるのかと聞いているんだ」
飯田は黙ってうつむいた。そのこと事態が答えになっていた。予想していたこととはいえ、40才にもなって童貞とは驚いた。そこでもう一歩踏み込んだ。
「童貞なんだ。――じゃあ、男と寝たことは?」
「ありませんよ」
飯田は怒ったように言って、泣き出しそうな顔になった。こぢんまりとしたあごが、かすかに震えていた。
「怒るなよ。ちょっと聞いてみたまでだ」
私は笑った。「私は同性愛に偏見を持っていない。私だって男色嗜好はあるからね」
飯田は驚いたように、私の顔を見た。
初心っぽい童顔を見ながら、私は話をつづけた。
「きみは男に好かれるタイプだ。それに今朝、電車で偶然きみと出会ったけど――素敵なお尻をしてるじゃないか」
飯田はハッとしたように私の顔を見て、すぐにうつむいた。
私はさりげなく訊いた。
「私がきらいか?」
飯田があわてて否定するように、頭を振った。頬が赤く染まっている。
私はそれ以上、彼を追及することをやめた。

店を出ると、通りかかったタクシーを止めた。それから当然のことのように、飯田を車に押し込み、私のマンションに向かった。
私の部屋に入るとき、飯田は不安とはにかみの交錯した、複雑な表情をしていた。
「あしたは休みだろう。今夜はここに泊まっていきなさい」
私は命令するように言った。有無を言わせず従わせるほうが、相手の了承を求めるより効果があると思った。
案の定、飯田は私の強引な誘いに従って、じゃあ母に電話します、と小声で言った。

まず風呂を勧めた。
飯田が風呂に入っているあいだに、私は寝室に行って用意をした。シーツを整え、オ
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