第7章 財団法人の二人
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私は本社に戻って部長に昇格した。それとともに、会社の仕事以外に、業界や関係団体の理事を務めるようになっていた。
そのころ私が非常勤理事を勤めていた財団法人に、織部という年配の理事長がいた。年の頃は70歳近く、小太り気味の体型と温厚な性格をしていた。
そして、思わず振り返って見るほどの、仏さまのように穏やかな容貌をしていた。
しわひとつない色白の顔と丸く禿げあがったおでこ、慈愛に満ちた眼差し、品の良い鼻と無垢な口元――およそ俗世間の穢れとは無縁のような顔立ちである。
それは裏を返せば世間知らずともとられるが、東大出というところから、高度な頭脳を持っているのは間違いないだろう。
それに若いころラグビーをやっていたというだけあって、いたって壮健そうだった。背は低い方だが、胸の筋肉が落ちた分、腰回りや臀部はでっぷりとして、ふつふつとした精力が貯えられていそうである。
理事長に会うのは、私の楽しみのひとつになっていた。織部は見かけだけでなく、世俗にまみれていない純真な心を持っていた。話し方ものんびりとして、味のある声で一言ひとこと考えながら、ゆっくりとしゃべる。
織部は無類の酒好きで、私たちはプライベートでもよく夜の街に繰り出した。
そして、つきあいの中で、老人の多くを知った。現役のときは都庁の幹部職員。ひとり娘は結婚して、今は女房とふたり住まい。私生活では女房に操縦されるまま、大変な恐妻家のようだ。
オフィスの応接室で、相好をくずして話す理事長は、いかにもほほえましかった。私はこの老人のまろやかな肉体に密かな欲望を抱いたが、いっぽうで、無邪気でまっすぐな老人の性格が、その抑止力になっていた。
理事長と一泊旅行で箱根温泉に行くことになったとき、私は淡い期待を抱いた。
連れは同じ財団法人の理事、依田という男だった。小柄な50代半ばの男で、ナスビのような鼻とリスのように黒目勝ちの小さな目をしていた。いつもニコニコとして笑みを絶やさない、いたずら好きの子供のように憎めない性格をしていた。
箱根に向かう電車の中で、向かいの席に座る理事長は、遠足にでかける幼稚園児のようにわくわく気分だった。
その横では小柄な依田が、寄り添うように座っている。
私は適当に会話を交わしながら、老人の肉づきのよい体を見ていた。
いつものスーツ姿ではなく普段着の老人は、体の線をあらわにしていた。丸っこい肩から胸のふくらみ、ぽってりと突き出た腹を覆うポロシャツ。太い腰まわりから太ももをぴっちりと押し包む、薄い布地のズボン。開いた太ももの付け根は、モッコリとふくらんで、まるでなにかを、ズボンの下に潜ませているようなボリュームだった。私は思わず、そのふくらみの中身を想像した。
仲良く並ぶ織部と依田の様子は、二人の仲を疑うほど親密そうだった。依田は話しながら、無意識なのか、理事長の肉付きの良い太ももを撫でていた。
宿に着くとさっそく風呂に入ることにした。
服を脱ぐとき、織部と依田がともにフンドシをしているのに気づいた。男色者にフンドシ愛好者が多いとは聞いていたが、まさかこの二人がそんなではないと思った。
露天風呂に入ると、日はまだ高かったので、すべてが透明感に包まれていた。もうもうとした湯煙と透き通った湯。さほど熱くなく、心地よい温度だった。肩まで浸かっていると、心身ともにのびのびとしてくる。
湯気の向こうに、湯に浸かる理事長の姿があった。お坊さんのように丸い頭は、きれいなピンクに色づいて、半白の薄い毛髪がへばりついていた。つややかな頬と二重になりかけた上品なあごの線が、私の好色を誘う。
私が見ている前で、老人は縁石に足をかけて湯からあがった。その後姿を見て、にわかに心臓の鼓動が高まった。むっちりと左右にはりつめた白い双丘、狭間に潜む淡い窪み、重々しくぶらさがる淡紅色の玉袋、白っぽい性器の先端――が、かいま見えた。
そのとき依田の肢体が視界をよぎった。
体毛のない子供のような肉体だった。小さな肩も胸もうっすらと脂肪の層で覆われていて、およそ男性的とは言いがたい体つきだ。腹だけがぷっくりと半円球に膨らんでいる。
しかし、しもの小丘は黒々とした茂みがあって、頭を覗かせた逸物は、小さな体つきとは裏腹に、正真正銘の大人の持ち物だった。薄茶色にふすぼけて、ふてぶてしいほど雁高なシロモノだった。
以前この男が、無類の艶福家だということを小耳に挟んだことがある。そのときは、なんでこんな小男が、と思ったが、今はなんとなく納得した。
入浴後、宿の食堂で名物の鍋料理を食べているときも、浴場で目にした理事長の白い肢体がちらついていた。
理事長はいつもの飄々とした温顔で鍋をつつき、酒の杯をあけていた。でっぷりした肉体を包む浴衣が腰帯のところではりつめ、襟元から
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