第6章 駐車場の老人
私は、千葉の営業支店に、支店長として異動した。前の職場で、老嘱託のやわらかい肉体によって再燃した男色嗜好は、ますます膨れ上がっていた。
そして新しい職場でも魅力的な老人たちはいた。ビルの地下にいる3人の管理人だった。彼らは、地下駐車場の横にある管理人室を拠点に、業者を使って建物設備の維持管理をしたり、社用車の運転手をマイクで呼び出したりの仕事をやっていた。
3人とも、筋肉に代わって脂肪の層におおわれた肉体をして、しかも人生の風雪を耐えぬいてなお穏やかな笑顔を忘れていない。
しかし私はまだ、植田老人の死から立ち直っていなかった。だから積極的な行動には出ず、自分を押さえて彼らに接していた。
私は外出先から戻って車を降りたあと、横にある管理室によく立ち寄った。そこで老人たちと世間話をして、ひとときのくつろぎを得ていた。
最初の頃、老人たちは私の前ですこし緊張していた。それでも、たまに彼らを誘って居酒屋に連れて行き、日頃の労をねぎらってやっていた。
半年が過ぎたころ、彼らはすっかり打ち解けていた。私の前で下ネタ話もするほどだった。年老いた彼らは、しなやかに、したたかに生きていた。
老人たちの中で最年長の椙田は、早くから私に親愛の情を示していた。恰幅のいい体格をして、いつも顔をあわせると、にこにこと微笑みかける。ふたりきりの酒にも付き合ってくれた。冗談まじりに尻を叩いたり撫でたりしても、いやな顔ひとつしなかった。
それでも、私と同じ嗜好の持ち主ではなさそうだった。年相応に肉付きのよい顔は、およそ裏世界とは無縁の、おだやかな表情をしていた。また、ほかの二人のように下ネタ話もすることはなかった。
しかし私は、この老人の血色のよい福々しい顔や、でっぷりとした柔らかそうな尻を見るにつけ、密かな欲望を抱いていた。
ある日、椙田が支店長室にやってきた。その日、七十歳を迎えて、退職の挨拶だった。
老人のおだやかな顔を見ていると、急に喪失感にとらわれた。そして思わず言っていた、個人的に送別会をしてあげるから今夜つきあってくれ、と。
その夜、椙田とふたりで、もつ鍋料理を食べた。店ではなく私のマンションでだった。
ちょうど福岡にいる女房から、たまには郷里の味覚でも、と手紙を添えて、もつ鍋の食材をたっぷりと送ってきていたのだ。
椙田は、目も口元も和ませて、鍋をつつき、酒の杯を受けていた。老人の血圧が高いのを知っていたので、酒は2合ほどにしておいた。
女のいない男所帯の雰囲気だった。私がそのことを言うと、椙田は、支店長と親子だなんて畏れ多い、とかしこまった表情をした。
食事が終わるとリビングに席を移し、お茶を飲みながら雑談した。私は迷っていた。このまま何事もなく老人を帰すのか、それとも――。
椙田の福々しい顔はピンク色に染まって、信頼しきった穏やかな目が私を見ていた。
そんな老人を裏切る行為は、気が引けた。それでも、老人のぷっくりした唇を見ていると、アナルのふくらみを想わせて性的な気分になった。
私は老人に風呂を勧めた。
椙田はちょっとためらいを見せたが、素直に立ち上がった。
脱衣室で私が一緒に服を脱ぎだすと、椙田はとまどった表情を浮かべたが、黙っていた。老人の裸体はピンク色をして、予想以上に太っていた。妊婦のように膨らんだ腹、贅肉のたっぷりとついたわき腹、股間にぶら下がる逸物は、すっぽりと皮をかぶって、柔らかいゴム製のように丸まっていた。
私は背後から、老人の背中を洗ってやった。丸っこい背中からわき腹へと、液体石鹸を手の平で擦りつけながら、ふっくらとした肌の感触を楽しんだ。
椙田はかしこまって、じっと私の手の動きに身をゆだねている。
私が立ち上がって、洗面器の湯で、椙田の体から石鹸を洗い流しているときだった。
ふと横を向いた彼は、私の股間の状態に気づいた。私は勃起させていた。
あわてて目を逸らす老人に、私は半ばやけくそに言った。
「私は単身赴任ですから、なにかと不自由でして――それでつい、スギさんのふっくらとしたお尻を見ていて、よからぬことを考えてしまいました」
椙田は迷っているようすだった。彼はうつむいて、しばらく考え込んでいた。それから、ぽつりぽつりと言いだした。
「――じつは昔、自衛隊にいたころ、上官にオカマを掘られた経験があります。私の尻がかわいいと言いまして――それも一度ならず何度も――最初はすごく痛かったのですが、そのうち慣れてきました――支店長なら、お慕いしていますし――こんな老いぼれの体でよろしければ――」
青天の霹靂だった。まさか老人に男色経験があり、しかも今、私を受け入れる気持ちを言うとは――。
それから10分後、私たちはリビングルームにいた。
ソファーの横で、椙田は私の逸物を口に含んでいた。老人がここま
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[*]
感想