第2章 初老の天使

第2章 初老の天使 

大阪のつぎに赴任した博多の街は、私の実家に近いこともあって、住み心地の良い都市だった。食べ物はうまいし、生活費も安い。それに博多の人たちは、のんびりとして明るい性格の人が多かった。
仕事の関係で、川井という年配の男性に出会った。エネルギー会社の営業所長だった。
50代半ば、背は160センチにも満たない。小さな丸顔になで肩、小太り気味で、腹と腰回りが大きく、なんとなく愛嬌のある体型をしていた。

私が川井に興味を持ったのは、接待を受けたゴルフのとき、浴室で彼の裸体を目にしてからだ。名門のゴルフ場だけに、入浴客は年配者が多く、いずれも美食に慣れきって、脂肪のついた生白い肉体をしていた。
その中でも、川井の裸はひときわ目を引いた。しみ一つなく健康的な色白で、ぬめるようにしっとりとした肌理のこまかい肌をしている。肩や手足は幼児のように頼りないのに、腹と腰回りはふっくらとして、大人と幼児が融合したような体型だった。
私は湯に浸かって、浴槽から出る川井の後姿を見守った。
贅肉のついた脇腹のまろやかなふくらみ、大人の図太さをもつ腰とその背後の幼児のようにあどけない臀部の合わせ目。歩くにつれ、臀部から腰に至るつけ根の左右に、えくぼのような淡い窪みが浮かんでは消えて、それがまた私の好き心を刺激する。

風呂からあがって更衣室に行くと、先にあがっていた川井が腰にバスタオルを巻きつけて、鏡の前で整髪していた。彼は私に気づき、控え目に微笑みかけた。
そのときの目つき――私の股間を素早くチェックし、あわてて目を逸らすそぶりは、私の期待を膨らませる。
(この人も大阪の前原さんと同類なのだろうか?)
私は素っ裸で年配者の横に立ち、ドライヤーで髪を乾かした。川井は私の股間を意識しているのか、どことなく落ち着きがなかった。

ゴルフ場から戻ったあと、私の住まいに近い料亭に寄った。
ふぐ鍋に炭火焼きのタラバガニ、私の大好物だった。熱いヒレ酒が、胃の腑にじんわりと染み渡った。そしてアルコールの酔いが、私を好色な気分にさせていた。
向いに座る川井は、食事の世話を焼きながら、穏やかな声で話し続けている。
箸を持つ小さな手は、色白ふっくらとして、指の付け根に淡い窪みができていた。
川井の手を見ていると、むずむずしてきた。小さな手が私のズボンの中にもぐりこみ、やわらかい指が絡みつく――頭の中で淫らな想念が渦巻いた。
「きょうはお疲れさまでした」
別れるとき、川井が握手をするように手を差し出した。
その手を握った。骨細で小さくて、とろけるように柔らかい。私は予感した――いつかはこの男と、親密な関係を結ぶときがくると。

取引業者たちと年に二回行われる、懇親ゴルフ大会があった。夏時期の今回は、宮崎で開かれ、その前日からゴルフ場に近接したホテルに泊まった。
時間の都合ですぐ宴会が行われた。関係企業の出席者はみな年配者ばかりで、若いのは私ひとりだった。酔っぱらって騒ぎ立てる者もなく、おだやかな宴会だった。
川井が主催者側の席に来て、支店長や私の上司たちに挨拶したあと、端に座る私のところにやって来た。前にゴルフをした親しさから、私と川井の話は大いに弾んだ。
宴会がおわると、スナックで酒を飲む者、町に繰り出す者、ホテルの大浴場でゆったりする者と、みなそれぞれに散っていった。
私は川井と示し合わせて、大浴場に行った。私の脳裏では、前に見た彼のふくよかな肢体が焼きついていた。

浴場は地下階にあった。壁の一面が大きなガラス張りで、海に面していた。
夜になっていたので、室内はひかえめな照明に照らされて、どことなく妖しい雰囲気を醸し出していた。
川井のふっくらとして肌のきれいな裸体が、湯けむり越しにぼんやりと見えた。私は湯の中で立ち上がり、前を顕わにしたまま川井に近づいた。
そのときの川井の表情、驚いたように私の股間に視線を走らせ、あわてて目を逸らす仕草を見て、私の期待が膨らんだ。

湯からあがって浴衣を着たところで、川井の部屋で飲み直そうということになった。川井はさほど強くないが、酒をたしなむ雰囲気で話をすることが好きだった。
エレベーターに乗ったとき、私は川井の背後の位置にいた。後ろから見下ろすと、薄い頭髪は地肌が透けて見え、腰を締める帯の下で、臀部がやわらかく盛りあがっている。
一階でほかの客たちが、エレベーターに乗り込んだ。その混雑で、川井の身体が密着してきた。年配者のやわらかい臀部の膨らみが押し付けられて、必然的に私の前の部分が反応しだした。
そっと見ると、川井の頬から耳にかけて赤くなっている。尻に押し付けられた硬い膨らみが何であるか、気づいているようだ。それでも彼は、体の位置をずらさなかった。

川井の部屋は、ひとり部屋にしてはゆったりとした広さがあった。
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