(二十二)万事休す
昌三たちは、二人ワンセットで手首に玩具の手錠をかけられ、床にべったりと尻をつけていた。ゴリラ男に後ろを犯された康太郎だけは、尻を庇って横座りしている。
それを取り囲む、敵方の男たち。社長の盛山と税理士の鳥井。そしてゴリラ男たち三人の部下。しばらく姿を見せなかった、弁護士の堀田もいる。
場所は、昼間来た高級マンション。康太郎たちが監禁されていた部屋だ。
「これでようやく、役者が出揃ったってわけだ」
でっぷりとした体をソファーに沈めて、盛山が満足そうに言った。その様子は、いかにも満ち足りた肥った猫を思わせた。そのうち、ゴロニャアと鳴き出すのでは、と思えるほどだ。
「自己紹介しなくても、お互い、よく分かってるな。おっと、あんたとは初対面か」
盛山は昌三のほうを見て、大げさに驚いた表情を作った。「これはまた、素敵なお父さんだ。もうひとりの肥ったお父さんとは大違いだな」
昌三が微妙な表情をする横で、康太郎が鼻を鳴らした。それを無視して、盛山は話をつづけた。
「ところで――」
彼は、床に座る捕虜を見渡した。「どうしてお前たちの居場所が見つかったのか、聞かないのかい?」
昌三が、おずおずと聞いた。
「どうしておれたちの居場所が、分かったんだ?」
康太郎が、昌三を叱った。
「バカ、そんなこと、いちいち聞くな!」
盛山がすかさず言った。
「ハイ、そこのハゲ親父、減点10点」それから昌三を見て「あんたは、ボーナス10点だよ」
深夜の2時過ぎにもかかわらず、盛山はすっかりハイな気分のようである。
「それで昌三さんだっけ、あんたの質問に答えると、それは辛抱強い池内のおかげだよ。彼は新宿駅で、ずっと見張っていたんだ、いつあんたたちが現れるかとね。池内に感謝だな」
それに応えて、角刈りの男がわずかに頭を下げた。
「それから、そのアイデアを出したのは、鳥井先生だよ」
盛山と仲良く並んでソファーに座っていた鳥井が、おどけたように肩をすくめた。
「まあ、お前たちのおかげで金も戻ってきたし、万々歳と言いたいところだが――」
盛山はねっとりとした目つきで床の4人を見た。「あとはお前たちを、どうするかだな」
それを聞いて、国見がごくりと音を立てて唾を飲みこんだ。
「ずいぶんこちらの情報も、手に入れたんだろうな」
盛山が弁護士のほうをちらりと見て言った。堀田が着心地悪そうに俯いた。彼はすっかり憔悴した顔つきをしていた。
「まあ、命まで取るとは言わない。いくらなんでも、4人一緒に消しちまえば、こちらもやばくなるからな」
盛山は薄ら笑いを浮かべたが、床の全員は笑う気分ではなかった。4人まとめて事故死ってことも、あり得るじゃないか――彼らは、暗い気分で考えていた。
「まあ、お前たちのことは明日考えるとして、今夜は遅いからお休みにするか」
そこで盛山は思い出したように「あっと、金は先生の部屋に運んでくれ。この男たちが、オイタをしないとも限らんからな」
さっそく角刈りと茶髪が、部屋の隅に置いてあったトランクを運びだした。
「社長、現金じゃ何かと不用心だ。今回のこともあるし」
税理士の鳥井が、盛山にそっとささやいた。
「それもそうだな。で、どうする?」
「銀行口座に入れておきましょう。匿名口座にして」
「ああ、先生に任せるよ」
そこで盛山は、鳥井の耳元でささやいた。「損害保険の手続きをしているのでね。金は出てこなかったってことで――」
「ああ――じゃあ、分散して預けることにしましょう」
「お任せするよ。それで、誰に手伝わせる?」
鳥井は、隅で心細そうにこちらを見る、堀田のほうに顎をしゃくった。
「堀田先生にお願いしますよ。それから、ボディーガード役に、池内を連れて行きます」
「分かった」
盛山はうなずくと、床の捕虜に向かって言った。
「じゃあ諸君、お休み。今夜はゆっくりと眠ってくれ」
エレベーターホールに出ると、盛山は鳥井に話しかけた。
「やっぱり始末する以外に無いな」
「4人ともですか」
「ああ、4人ともだ。事故死に見せかけてな。あの昌三とかいうフケは、ちょっと惜しい気もするが――」
「だったら、明日味わえばいいじゃないですか。わたしもゲイバーのおデブちゃんを、味わってみたい」
鳥井の提案に、盛山はほくそ笑んだ。
「そうするか。しかし今夜は先生のチンポを味わおうと思っていたが、いったんお預けだな」
「ちょっとくらいなら、これから楽しんでもいいじゃないですか。それに、今ふと思いついた考えがある。ベッドで気持ちのいいことをやりながら、話をしましょう」
そう言うと鳥井は、盛山社長の太った体に腕を回して、自分の部屋とは反対の方向に歩き出した。
――**――
昌三はまんじりともせず一夜を過ごした。カーペットを敷いているとは言え、床で寝るのは辛かった。それに
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