(十六)対決前夜

(十六)対決前夜

二人は淡い期待をいだいて、横浜にある昌三の自宅に戻った。しかし、家には誰もいなかった。
家にいないということは、二人が敵方に捕まったという可能性が強くなった。やつらに捕まったのなら、どこに連れて行かれたのか?
「ああっ!」
ふいに昌三が、大声をあげた。鉄平の携帯に出た、男の声を思い出したのだ。トイレで尋問した茶髪の兄ちゃん――。
(やっぱり鉄平は、やつらに捕まったんだ。今ごろ二人は――)
そう思うと、居ても立ってもおれなくなった。
ふたりは銭湯に行った。そこで気持ちを落ち着かせるように、時間をかけて体を丹念に洗った。帰りにコンビニに寄って、弁当を買った。
家に戻って、食事の間も昌三は、物思いに沈んでいた。国見の話にも上の空だった。
「昌三さん、明日は、きっと二人を見つけ出すよ。だから、さあ元気を出して」
「ああ――」

その夜、二人は昌三のベッドで寝た。国見の、相手を包み込むような柔らかい肉体を感じていると、つかの間、息子に対する心配が和らいでくる。
「クニさん、やろうよ」
昌三は、国見に声を掛けて、そっと柔らかい体に腕を回した。それから口づけしながら、おたがいの下着を脱がせあった。
風呂上がりの肌は、清潔で、しっとりと艶めいていた。肌と肌がじかに触れあい、興奮が募ってくる。二人は心配事を忘れるように、行為に熱中した。
逆さ絵の格好でお互いを慰めあいながら、国見は無意識に、鉄平の若い性器と比較していた。
いっぽう昌三は、やわらかい狭間に指を進入させながら、ゴリラ男にやられたという痕跡を探っていた。腫れは引いているようだが、心なしか以前よりもゆるくなっているように感じた。
「クニさん、痛くない?」
「ああ――もう大丈夫」
指先で微妙な刺激を与えつづけていると、そこが、しっとりと潤ってきた。
やがて国見が両脚を抱え、自分から差し出した。昌三は豊満な肉体の中に突き入れて、ゆっくりと腰をうねらせた。
動きが滑らかになると共に、二人の自制心が失われていく。
肉を穿つ湿った音――甘ったるい喘ぎ声――リズミカルな抽送運動の中で、すべてが溶け合った。動きは、早く、早く――。
久しぶりなので、強烈な精力の奔流が昌三の体を貫いた。快感が怒濤のように、あとから、あとからと、押し寄せてくる。
なにもかもが、めくるめく快楽に包まれた。
最後の瞬間、昌三は、豊満な臀部をしっかりと掴み、深く突き入れた。
ほとばしる熱い精液が、直腸内に充満した。

二人はベッドに横たわり、じっと天井を見つめていた。
窓の外から、夜道を歩く男女の笑い声が、かすかに聞こえてきた。それ以外はシンと静まり返って、お互いの鼓動さえも聞こえてきそうだった。
「鉄平たち、今頃どうしてるかな?」
昌三が、ぼんやりと言った。
「それは、明日考えようよ。今は忘れたほうがいい」と国見。
沈黙が流れた。しばらくして国見がぽつりと言った。
「昌三さんとやったの、久しぶりだね」
「ああ――」
国見がそっと聞いた。
「もう大丈夫なの?」
「なんのことだ」と昌三。
「昔の悪い思い出――ときどき、うなされていたじゃない」
「ああ――」
昌三はため息をついた。「大丈夫とは言えないな。でも、やってるときは思い出さない」
「そう――鉄平くんたちが家に居たら、こんなにおおっぴらに、抱き合っておれないね」
昌三は、ふっとほほ笑んだ。
「それもそうだ。鉄平はともかく、あの松岡にだけは知られたくないね」
「――」
「ところで、クニさん。鉄平とはいつから出来ていたんだ」
「何?」
国見は少しうろたえた。
「とぼけなくてもいいよ。おれに隠れて、鉄平とやっているんだろ」
少しの間があって、国見は「ああ」と言った。
「一ヶ月ほど前、たまたま昌三さんが留守だったときに――」
「やっぱりな。で、どうだった?」
「どうだったって――それは、鉄平くんは若いから、すごく固くて――昌三さん、わたしに何言わせるんだよ」
「で、おれと鉄平と比べて――そのう、どっちが良かった?」
「――それは、昌三さんに決まってるよ。なにしろ経験が違う。昌三さんのほうが、はるかにじょうずだ」
「ま、素直に喜んでおくか。でもな、クニさん、鉄平とはあまり深い仲にならないで欲しいんだ」
「どうして?」
「子孫繁栄のためだ。あいつが女と結婚して子供を産ませた後なら、いくらやったっていい」
「了解。それまで、出来るだけ控えるようにします」

その夜、昌三は夢を見た。男たちに尻を乱暴に引き上げられ、筋張った肉根を突っ込まれていた。引き裂かれるような激痛――。
目を覚ました昌三は、体を丸めて震えた。その横では国見が、幸せそうな寝顔で眠り込んでいた。
17/11/01 06:53更新 / 神亀

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