(一)河合親子
男色の悦びを覚えたての河合鉄平は、中年男の柔らかい背後を犯していた。相手は、父親行きつけのゲイバーのマスター、国見佳明だ。
鉄平は年配者のでっぷりとした尻を抱えて、深く入れず、じらすように浅く突いていた。
国見が焦れて、尻を後ろに突き出しながら、喘ぐように訴えた。
「ああ――もっと奥まで入れて――」
「了解」
鉄平は、左右に開いた尻の狭間めがけて、ググッと腰を押し付けた。膨れ上がった先端が、腸壁を押し広げながらズググと突き進む。
それから、大きく深くピストン運動をはじめた。
国見が、むせび泣くような声を上げはじめた。
粘膜の摩擦がもたらす快感が、急上昇していく――。
鉄平は我を忘れ、軟らかい肉壺の中に、跳ねハンマーのように激しく打ち込んだ。
熱いマグマが押し寄せる。筋肉が震え、息詰まる痙攣が襲った。
次に気がついたとき、相手の豊満な肉体にしがみついていた。
二人はベッドに横たわって、動悸のおさまるのを待った。
肉体関係を持ちだして、1ヶ月余りが経つ。始まりは、国見が家に訪ねて来て、鉄平の父親が不在だったときだ。
21歳の若々しい肉体と、52歳のポッチャリとした肉体。誘ったのは国見だった。
外から信号機の鳴る音が聞こえてくる。チンチン、チンチン――。擬音と文字が重なり合って、国見がつぶやいた。
「卑猥だな」
「なに?」
鉄平が気だるげに聞いた。
「信号機の音だよ」
国見は、含み笑いをした。「チンチン、チンチンって、いやらしいじゃないか」
「ばーか」
鉄平は寝返りをうった。
「ところで、鉄平くん、新宿駅に行ったとき、手荷物をとってきてくれないか」
国見は、脱ぎ捨てたズボンから、小さなキーを取り出した。
それを受け取りながら、鉄平は聞いた。
「なんだい、手荷物って」
「わたしも知らないんだ。友達のものなんでね」
「ふーん」
鉄平は、キーをテーブルの上めがけて無造作に投げた。そのとき、玄関ドアの開く音がした。
「やばい!」
二人は跳ね起きて、大慌てで服を着た。それから何食わぬ顔で、鉄平の部屋を出た。
久しぶりに大穴をあてて、河合昌三は上機嫌だった。上着のポケットは、札束でふくらんでいる。
競馬場での興奮が、また蘇る。その馬の肌艶を見たとたん、彼にはピンときた。こいつはやるぞ。そしてねらいどおりの大穴だ。
賭け馬がゴールを走り抜ける瞬間を思いだして、昌三は身震いした。
「あ、父さん、お帰りなさい」
鉄平の声に、昌三は、すっかり大人の体つきになった息子を見た。なんとなく落ち着かない気分になる。半袖から突きでた筋肉質の腕、丸石を詰め込んだようなジーパンの前のふくらみ。やりたい盛りの男気を、ムンムンさせている。その肉体を目の前にすると、忘れようとして忘れられない、過去のあのことを思い出す――。
「おじゃましています」
国見のすこし恥ずかしそうな声。コロコロと太った姿は、いつ見ても、暖かい空気に包まれたような気分になる。
「ああ、クニさん、来てたの」
昌三の頬が自然に緩む。
「じゃあ、父さん、バイトに行ってくるよ」
鉄平が、スニーカーを履きながら言った。
「わたしも店を開ける準備をしなくちゃ」と国見。
「じゃあ、おれは銭湯だ」
二人を見送ったあと昌三は、洗面用具をとりだした。
銭湯に行くと、まだ早い時刻もあって、客はまばらだった。なじみの番台に回数券を渡して世間話をしていると、背後から町内のご隠居の声がした。
「昌ちゃん、きょうは早いね」
「ああ、仕事が早く終わったんでね」
町内の人間に対しては、ビルの管理人をやっていることになっている。その実、昌三は、人に言えない商売をやっていて、この春ようやく足を洗ったところだ。
服を脱いで、風呂に入る前に、大鏡の前で自分の体を映した。56歳。身長160センチ55キロの小柄な体。なで肩、骨細の体は、今やうっすらと脂肪の層でおおわれ、体毛といえば、股間にほそぼそと生えた黒い陰毛のみ。ぶらさがった性器は、頼りない体つきにしては不似合いなほど、ズル剥けカリ高の立派な形状をしている。
昌三は、自分のやわな肉体に舌打ちし、浴室のドアをあけた。すれ違った兄ちゃんが、好奇の目で彼の股間に一瞥をくれた。
(けっ、若いのはお呼びじゃないよ)
彼はもう一度舌打ちした。
湯は、しびれるほど熱かった。それでも我慢して肩までつかっていると、のびのびとしてくる。そこに先ほどのご隠居がやってきた。
「近頃、いやなことが多いね。むかしは平和な町やったのに」
老人は、前を流しながら話しかけた。しなびた性器と玉袋がグンニャリと伸びきって、先端から水が滴り落ちている。
ご隠居が昨夜の全裸落下事件のことを言ってるのは分かっていた。
昌三はあいづちをうった。
「ああ、いやな世の中やね。あれは暴力団の仕業やろうか」
ご隠居は
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