シーン(8)

シーン(8)

伊藤社長が倒れて1カ月ほど経った休日の朝、鬼籐健一のアパートのチャイムが鳴った。
ドアを開けると、伊藤千秋本人が立っていた。
「イーさん――」
あとは声が出なかった。涙がとめどもなく流れ出る。
「ほれ、早く私を中に入れろ。病み上がりの老人なんだぞ」
千秋がいつもの温顔で、待ちかねたように部屋にあがった。

小さな食卓で落ち着くと、お茶を飲みながら千秋がのんびりと言った。
「私の家に来たらしいな。家内が言っていた」
「ああ、直接お見舞いに行かなくてごめんね」
「いいんだ。病院できみが会社の連中と鉢合わせしたら、かえって面倒なことになる。それよりケンちゃん、久しぶりだ。そろそろやろうか」
「ええっ、いいの?だって病み上がりでしょう」
「心配するな。もうやってもいいって、医者のお墨付きだ」
「ほんとう?医者がそんなこと言うかなあ」
「深く追及するな。ほれ、やるぞ」

千秋は事前に風呂で体を清めたらしく、顔も体もつるつるで美しかった。
健一は、千秋の裸を見た時からすっかり自制を失くしていた。
イーさんの豊満な肉体を押し開いて、隅々まで舌を這わせた。そして最後に、薔薇の蕾にとりかかった。
肉がたっぷりとついた幅広の尻を開くと、ピンク色に染まった蕾。念入りにほぐされたそこは、早く入れてと催促するように、ひくひくと蠢いている。
まずはバックから挿入しようとした。
四つん這いになった千秋のうしろ――でっぷりとした白い双丘が、誘うように大きく開かれている。
欲望で打ち震える肉棒を広大な谷間の中心部にあてがい、思いを込めて押し入れる。
破裂しそうなほど膨れ上がった亀頭が、やわらかい窪みにすこしずつ埋まっていく。
極太棒を小刻みに抽送させながら、奥へと進ませた。熱を帯びた内部がすぐ馴染み、侵入した太い肉杭を根元までくわえ込んだ。
「ああっ、いい――」
千秋が甘い喘ぎ声をあげた。
膨れあがった陽根が、濡れた音を伴って柔らかい腸内を滑脱する。それに応えて腸壁が、亀頭や竿にまとわりつき、微妙な収縮をくりかえして揉みつづける。
気が遠くなるほど気持ち良かった。
やわらかい結合部の摩擦につれて、遠慮がちだったしめやかな音が、濡れた賑やかな音に変わる――。

しばらくして体位を変え、正上位で結合した。
千秋の顔はつやつやと輝いて、小さな目が眼鏡の奥で潤んでいた。その顔を見ながら、力強くピストン運動を始めると、千秋がすすり泣きしだした。
その声を聞きながら、よりいっそう深く力強く腰をうねらせた。
亀頭が結腸付近を深くえぐった。
千秋が大きく口を開けて、感に耐えきれぬ表情をする。
腰の動きがますます速くなる。
千秋が、嫌々するように顔を左右に振った。
動きは速く、速く――もう、何もかも分からなくなった。
健一は雄叫びをあげ、奥深く突き入れたまま、溜まりにたまった熱い甘露を噴出した。



二人はベッドの上でぐったりと横たわって、房事の余韻に浸っていた。
呼吸が整ったところで、おもむろに千秋が言った。
「ああ、久しぶりに堪能した。おかげでお通じが良くなった気がする」
そこで、鋭い視線を健一に送った。「ところで、きみはさっき、いく瞬間、ショウちゃん!って叫んだな。あれはどういうことだ」
「あれっ、ぼく、そんなこと言ったっけ」
「確かに言った」
伊藤は断言すると、声色を変えて表現した。「ああーっ!いくう、ショウちゃん!――って」
健一はちっとも動じず、シレッとして言った。
「きっとイーさんの勘違いだよ。それより今度の連休に――」
「話を逸らすな」
「いいじゃない、そんな些細なこと」
「良くはない。こういうことは、はっきりとさせておくべきだ」
「どうしてそんなに、こだわるのかなあ。そんなこと言ってると、ケツの穴のちっちゃい爺ちゃんだと思われちゃうよ」
とたん、千秋は声を荒げた。
「だれのお陰で、正社員になれたと思ってるんだっ!」
「あれっ、ちょっと待ってよ、イーさん。それって、恩に着せてるわけ」
「バカ、私がそんな下世話なことをするか!」
「だって今、イーさんは言ったよね、誰のお陰で正社員になれたかって。――もっとも、あれはぼくが頼んだ訳でもないし――」
「なにおっ、この恥知らず!」

かくして二人の痴話喧嘩も再開された。
なにしろ、ともに一筋縄ではいかない二人。この先、順風満帆の人生なのか、はたまた、波乱万丈の人生なのか、天のみぞ知る、である。
                               おしまい
17/10/08 07:23更新 / 神亀

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