シーン(4)

シーン(4)

ある晩、伊藤社長が顧客との付き合いを終えて帰宅していると、運転手が先に気づいた。
「あれっ、鬼籐さんじゃないですか」
窓から外を見ると、鬼籐健一が千鳥足で夜の街を歩いている。さっそく車を停めさせて、健一を乗せてやった。
「やあイーさん、奇遇だね」
後部座席に落ち着くと、健一が機嫌よく言った。少し呂律が回らなかった。
「ご機嫌だね、ケンちゃん」
「そうです、ご機嫌ですよ。新入社員の歓迎会があったんですよ」
「でも、酔っ払って夜の街をふらついてると危ないぞ。近頃は変な奴が多いからな」
「変態のお爺ちゃんもね」
千秋は健一の手を握って、運転手がいるんだぞ、と言うように力を込めた。
アルコールが入って、好色な気分になっている健一は、(今晩どう?)と言うように、指先で千秋の手のひらにサインを送った。
(ダメ)千秋が健一の掌に、バッテンのサインを送り返す。

すっかりその気になっている健一は、ズボンの前合わせを開いて、欲求不満のかたまりを解放した。
健一は、(ほうら、これが欲しくないの?)というように、いきんで半勃起状態の男根をひくつかせた。
旬のマツタケを思わせる肉根が、ピクンピクンと蠢いている。熱気と生々しい匂いまでも伝わってくるようだ。
千秋はゴクンと唾を呑みこんだ。
彼はチラリと運転手の後頭部を見ると、上体を屈めて健一の股間に顔を埋めた。口に含んだ肉根が、みるみる隆起してくる。
(おいしい――)
千秋はうっとりとして味と感触を楽しんだ。そして我に返った。
(いかん、いかん。このままじゃ、歯止めが効かなくなる)
千秋は上体を起こすとハンカチで口元をぬぐい、健一の太いレバーを握って、上下左右に操作しながら、何食わぬ顔で運転手に言った。
「高木くん、私を家まで送ったら、ついでに鬼籐くんをアパートまで頼むよ」

翌朝、夫人に見送られながら家を出た伊藤は、運転手の様子がおかしいのに気づいた。
まるでお尻にデキモノでも出来たように、動きがぎこちない。
「どうした、高木くん。腰でも痛めたのか」
「はあ、ちょっと」
高木運転手はあいまいな返事をした。昨夜のことを思い出して、思わず顔を赤らめる。
(あんなこと、とても社長に話せることじゃない)

昨夜、社長を自宅に送ったあと、鬼籐健一のアパートに向った。
この頃には高木も、鬼籐が単に伊藤会長のスケッチ仲間だけではなく、伊藤物産の社員であることも知っていた。会社で何度か鬼籐の姿を見かけたし、鬼籐も親しみを込めた合図を送り返していた。
社長邸から車を出すとき、鬼籐は助手席に移動して、なにかと話しかけてきた。高木はいつのまにか、ターさんと呼ばれていた。
「ターさんって、頭が薄いじゃない。禿げの人は、あっちが強いって言うからなあ」
「そんなでもないですよ。もう62歳です。めっきり衰えました」
「またまた謙遜しちゃって。おでこなんか艶々してるじゃない。まだ奥さんと、毎週やっているんでしょう」
そこまで言われると、高木のおしゃべり好きが頭をもたげた。
「そりゃあ、毎週でもヤリたいですよ。でも、女房がやらせてくれないんです」
「それは可哀そう。どのくらいやってないの」
「1ヶ月ほど」
「ええっー!1ヶ月もやってないの。ターさんみたいないい男が、もったいない」
「仕方がないんです。女房の奴、最近、外出ばかりで。今も北海道に旅行しています」
「じゃあ、今夜はひとりぼっちなんだ。ターさん、ぼくのアパートに寄っていく?」

鬼籐健一のアパートに寄ると、焼酎を勧められた。運転するからと断ると、泊まっていけばいい、と強引に引き留められた。
もともと酒の好きな高木は、酒の誘惑にも弱かった。本来の根アカに戻って、大いに酒を飲み、大いにおしゃべりをしだした。それから勧められるままに、風呂に入った。
そこまでは良かった。
寝る段になって、鬼籐が同じ布団に潜り込んできた。
そのあとの記憶は定かではなかった。とにかく、めくるめく官能の世界に引きずり込まれたのは確かだった。
裸に剥かれ、乳首から男根にかけて、触られ、舐めまわされて――。
「ターさん、きれいな肌をしているんだ。それに元気の良いチンポ」
鬼籐の声が、霞のかかった頭に入ってくる。
確かに高木は、ムチムチした固太りの肉体をしていた。それにきめの細かい肌は、女のように色白だった。
湿った温かいものが、赤く染まった肉根をなぶり、かわいらしく丸まったタマタマを覆う。
禁欲していた高木は、もどかしそうに身悶えした。
器用な舌が、蟻の門渡りをくすぐりながら通りすぎて、ぷっくりした皺の集合体を舐めだすと、耐えきれずに声を上げた。

――その後の記憶は、ぼやけている。
うつ伏せにされ、尻を開かれたまでは覚えている。
あとは引き裂かれるような苦痛――。
「ほらほら泣かないで、さあ
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