(エピローグ)

(エピローグ)

例年になく早い秋晴れのつづく9月の終わり、仲間篤志と古々呂忠は、グランパラダイスの従業員二人を誘って、西伊豆の大田子海岸に向かっていた。
稚加良強のところの古い大型ベンツを借りて、阿礼太が運転した。
朝、湯島を出発して、東名高速道路を走り、沼津インターチェンジで一般道に入った。
途中、観光がてら何カ所か寄り道してのんびりと過ごし、目的地のホテルに着いたのは、午後の3時過ぎだった。
ホテルは西伊豆の海岸線に迫った高台にあり、これまで篤志は何回か利用していたので、支配人は顔を覚えていた。
「ようこそお越しくださいました、仲間さま。東京からの道中はどうでございましたか」
「ああ、天気が良いので結構、混んでいました。相変わらず伊豆は人気がありますな」
「ありがとうございます。眺めの良い部屋をご用意しております。どうぞ、ごゆっくりおくつろぎください」

確かに眺めの良い部屋だった。障子を開けると、すぐ眼下に伊豆の海が迫っていた。
4人は窓際のティーテーブルを前に、ホテルのスタッフが入れてくれたお茶を飲みながら、ドライブ旅行の疲れを癒した。
「素敵なお部屋ですね。眺めはいいし、お部屋も広い。和洋二間ありますよ」
忠が感心したように言った。
床の間付きの10畳の和室と、襖を隔てて同じ広さの洋室があり、洋室にはセミダブルのベッドがふたつ配置されている。窓際の休憩スペースの脇には、外気に面して、部屋付きの洒落た風呂がある。
「それに、ホテルのサービスもビップ扱いやけん。会長と一緒にいると、ほんと、リッチな気分が味わえると」
洋児が多少、やっかみ半分に言った。
それに気分を良くした忠が、余計なことを口走る。
「本当にそうですね。これまで旦那さまとご一緒させていただいて、いつも贅沢な思いをさせて頂いています。お宿もお食事も、本当に旦那さまは素敵なところをご存知です」
「本当に」を連発して忠が褒めるものだから、洋児が反発した。
「ああ、会長と忠しゃんはよかと。いつでん、こぎゃん贅沢な旅ばして、大きなお屋敷に住んで、毎日うまいもの食うて、庭では趣味の盆栽ば作って――。
それに比べりゃ、うちら従業員は、毎晩遅くまでこき使われて、たまの休みばフンドシの洗濯や繕いもんばっかし。あーあ、やってられんけん。もう、グランパラダイスなんか辞めちゃる」
篤志は面白そうに聞いていて、洋児が話し終ると言った。
「ヨーちゃんも歳を取ったからな。じゃあ、店は太に引き継いでくれ」
阿礼太がびっくりして篤志の顔を見た。
洋児がしかめ面をした。
「憎たらしか。もう、会長ったら、いっちょん脅しが効かんのやけん」
「おや、脅しのつもりだったのかい」
篤志はとぼけて言って、洋児をからかうのをやめた。「じゃあ、そろそろ大浴場に行くか。屋上露天風呂だから、眺めがいいぞ」

まだ早い時刻なのか、大浴場は空いていた。
2層に分かれたタイル張りの浴槽の先に、床から天井まであるガラス張りの窓があり、その外は岩を組んだ露天風呂になっている。
篤志たちはガラスドアを抜けて、すぐ露天風呂に入った。
外気が肌に心地良かった。のんびりと湯に浸かっていると、洋児が熱っぽい目つきで、入り口のほうを見ている。
洋児の視線の先を追うと、太が露天風呂に入ってくるところだった。
明るい日差しのもと、いかにも健康そうな肉付きの良い裸体が輝いていた。まだ50歳だけに、乳白色の肌に艶がある。丸みをおびた太い陽物も、触れればすぐ生い勃ちそうな力を滲ませている。
「会長、今いけないこと考えとるやろ。フーちゃんはウチのもんやからね」
太を見る篤志の目つきに気付いて、洋児が言った。
篤志は別に否定せず、洋児をからかった。
「いいか、初夜権というものがあるんだ」
「初夜権てなんやろか?」
「中世のヨーロッパなんかであった、領主の権利だ。領地内の新婚夫婦の初夜に、領主が新郎より先に新婦を抱くことが出来るしきたりだ。グランパラダイスの領主はわたしだからな。あとは言わんでも分かるだろう」
「なんゆうとるばい!ほんと、会長はドスケベなんやけん。チュウしゃん、何かゆうたり」
話を振られた忠は、のんびりと答えた。
「旦那さまの浮気性は、じゅうぶん存じています。今さら私に、何が言えましょうか」

部屋に戻ったとき、洋児と太は明らかに欲情を催した顔つきをしていた。陽光のもとで白い裸体を見れば、当然の成り行きだろう。それに夕食までは、まだ時間がある。ちょっと乙なことでもやりたいのだろう。
それに気づいて、篤志は忠に言った。
「チュウ、ちょっと外に出てみるか。潮の香りを嗅ぎながら見る夕陽も、また格別だぞ」

二人は宿の浴衣姿のまま外に出て、ホテルの従業員に聞いた夕陽の絶景ポイントに向かって歩いた。
「――どうも人間は、思い出の中で生きてい
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