(2)

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次の土曜日、4人は2班に別れて行動を開始した。
篤志と稚加良強は、不動産屋の丸山海老造のところに行った。その日、強はどういうわけか濃いサングラスをかけていた。スキンヘッドで高邁なお坊さんに見えていた彼は、一変してその筋の危険な人物に変貌していた。
篤志は強と同行することに、若干不安だった。なにしろ強は、海老造に絡まれたとき脳梗塞で倒れたのだ。今回は事情が事情なだけに、強がどんな仕返しをするか分からない。
しかし、篤志の心配は杞憂におわった。肝心の海老造がいなかったのだ。彼の女房が言うに、法事で親戚の家に行っているという。

いっぽう、御膳念須巳と鬼律忠司は、教えられた住所にレインボー企画が本当にあるのか、調べに行った。
住所は台東区の入谷で、JR鶯谷駅から比較的近いところにある。
目的の場所に行くと、小さな7階建てのビルで、1階にコンビニが入っている。屋外階段の脇に通路があり、数段あがったところに狭いエレベーターホールがあった。その横の壁に、郵便受けが取り付けられている。
「ご前、これですね」
忠司が郵便受けのひとつに、レインボー企画の名前を見つけた。名前の横に3Fと書かれている。
二人はエレベーターに乗って3階に行った。外廊下に面して3つのドアがあって、一番手前のドアに、レインボー企画のプレートが貼られている。鉄のドアなので、中の様子は分からない。
「アッちゃんが連れて行かれたのは2階って言っていたから、ここではないですね」
忠司はこのまま引き返すのを期待して、そっとささやいた。
しかし、御膳は大胆なことを言った。
「せっかくここまで来たんだ。なかを覗いてみるか」
「えっ、ちょっと待って――」
忠司が止める間もなく、御膳はドアノブに手を伸ばした。鍵は掛かっていなかった。

中は事務所らしく、ひとりの中年女性が事務机についていた。女が顔を上げて、どちらさん?という顔でこちらを見た。
御膳は愛想よく言った。
「えっと、山川さんはいますか?」
「山川さん?」
女が怪訝そうな顔で尋ねた。
「そう山川さん。10時に事務所に来いって言われました」
御膳は架空人物の名前をのうのうと言いながら、室内の様子をうかがった。
事務机が3つに応接セットがひとつ、壁際にファイルキャビネットがある。ほかは給湯設備とトイレブースがあるだけだ。事務所としては簡素過ぎるほどの作りだった。
「山川さんって人、うちにはいませんけど」
女が答えて、御膳は善良そうな老人の困り顔で言った。
「えっ、おかしいなあ。名前を聞き間違えたかな――」
「その山川さんって人、どんな人ですか?ここには私のほか、二人しかいませんけど」
「えっと、50代の男性で、体の大きさはこの人くらい」
御膳は、背後でおとなしく控える忠司のほうを振り返った。
「じゃあ間違いですね。代表はでっぷり肥っているし、もうひとりは背が高いですから」
「そう――。そのお二人には会えるのですか?」
「あまりこちらに来ませんから――でも、連絡はできますよ」
「いえ、それは結構です。どうやらわたしの勘違いのようでした」
御膳は丁寧に礼を言って、忠司を促しながら部屋を出た。

ビルの前の通りで、忠司はあきれたように言った。
「まったく無鉄砲なことをするんだから。後ろで聞いていて、ひやひやしましたよ」
「だけど、そのお蔭で様子が分かったじゃないか。ここの事務所はダミー会社みたいなもんだ。悪いことをやっているのは、他の場所だ」
「じゃあ、戻りますか。アッちゃんに電話してみます」
そのとき御膳は、何かに気を取られた。ちょうど二人の男が、横を通り過ぎて行ったところだった。
「あの角刈り、写真の男だ。たしか槍辺って名前だ」
忠司も見たが、後姿なのでよく分からない。御膳はすぐ行動に出た。
「ターさん、あとをつけるぞ」
「えっ、ちょっ、ちょっと待ってよ!」
忠司は慌てて先を行く御膳のあとを追った。

男たちはなにやら話しながら、駅とは反対方向に歩いていた。よほど仲が良いのか、笑い声まで聞こえてくる。ほどなく、寂れた感じのところにある、古いアパートに入った。
御膳たちが外から見ていると、男たちは玄関ホールから脇の階段室に入って行った。
その後を追おうとする御膳の腕をつかんで、忠司は言った。
「ご前、ここまでにしておこうよ」
「大丈夫だって」
御膳は忠司の制止を振り切って、男たちのあとを追った。
階段は上まで伸びていたが、二人はいったん2階の外廊下に出た。廊下には男たちの姿がなかった。
「男たちの足音からして、上の階に行ったとは思えんな」
御膳はつぶやきながら、2階の外廊下を歩きだした。ドアの脇にあるネームプレートを、ひとつひとつ確認した。
「会長が連れてこられたのは、ここじゃないかと思う。目隠しをされていたが、2階の廊下を歩
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