(六)
次の日から新之輔は、毎晩のように妙窓と交わった。そして老僧から、衆道についての多くを教わった。
「衆道は、される側が一方的に苦痛を耐え、献身的に尽くすように言われがちですが、拙僧はそうは思いません。する側も相手の身をおもんばかって、される側の感覚を知るべきです」
「される側の感覚――でござるか」
「さようです。される側の苦痛も含めてです。それを知れば自ずと、どうやれば相手が痛がらずに悦ぶか、ということも分かってまいります」
妙窓は説明したことを、閨で実践した。
新之輔は下帯を解いて、仰向けに床に就いていた。
「さ、さ、新之輔さま、片膝を立てて、股を大きく開いて」
「こうでござるか――なにやら恥ずかしゅうござる」
「ここに居るのは、あなたさまとわたくしだけです。恥ずかしがることはございません」
「――ああっ!」
いきなりへのこを口に含まれて、新之輔は喘いだ。器用な舌になぶられて、男の分身がみるみる力を漲らせる。その間、手慣れた小さな指が、ふぐりから尻の割れ目へと撫でまわしてくる。
「あっ、そ、そのようなところを――」
菊肛をまさぐられて、新之輔はあわてた。
「新之輔さま、そのままに。これがされる側の感覚でございます。今宵は、この感覚を存分に味わっていただきます」
小さな指がゆっくりと、円を描くように動いた。その接触部分から、奇妙な感覚が這いずり上がってくる。
(これがされる側の感覚か――)
尻の狭間で、異様な触覚がざわめいた。
新之輔は、いつしか目を閉じていた。
指が小さな円を描きながら、押し入ってきた。滑り薬でもつけているのか、その指はツルリと菊門に入ってしまう。
「うおっ!」
新之輔は思わず声をあげた。
指が、身体の中で動いた。ツルリ、ツルリ、と抜き差しする。
なんの痛みも感じなかった。今までに覚えたことのない、不思議な感触だった。しかしその感触は、未知の領域へと連れていかれそうな、不安な昂ぶりを覚えるものだった。
ふいに二本の指が、ググッと突き入れられた。
「くっ、い、痛い――」
すかさず妙窓の声が聞こえた。
「どうですか、このように急に太いものを入れると、痛いのがお分かりでしょう。ですから、優しく、徐々に、慣らしながら行うのです」
「新之輔さまは、心根が優し過ぎます」
僧房に来て五日ほどが経ったころだった。妙窓が改まった口調で言った。「優しいだけでは、相手を悦ばせることができませぬ」
新之輔がいぶかしげな表情をすると、妙窓が説明を始めた。
「人の好みは様々です。たとえば、手籠めにされて悦ぶ男もいるのです。自分が懸想する人に折檻され、無理やり犯されて、はじめて悦楽を得るのです。そんな男と契るときは、あえて手厳しく扱わねばなりませぬ」
妙窓は話をつづけた。
「またそんな男でなくとも、される側には、逞しい男に無理やり犯されたい、などという気持ちが多少なりとあるものです。かく言う拙僧も、そう思うひとりでございます」
「でも拙者は、和尚と心の通い合う契りを結べたからこそ、至福の悦びを得ることができました。――それをあえて無理やりに犯すなどと、拙者には到底思いもつきませぬ」
「では新之輔さまにお聞きします。新之輔さまは、わたしと夫婦の様に一生添い遂げるお気持ちがお有りでしょうか」
「そ、それは――」
ふと昌造爺や小壺芳美の顔が浮かんで、新之輔は口ごもった。
妙窓は、にこやかに言った。
「ほほほ、無理にお答えなさらなくとも結構。戦のある世なら、衆道も真剣なものとなりましょう。しかし、今は天下泰平の世の中。衆道は慰め事、と気楽に構えられればよろしゅうございます」
その夜、妙窓は、閨にほかの男を呼んだ。僧房の御師、双恵だった。
妙窓がきっぱりとした口調で言った。
「今夜はこの双恵を相手にしていただきます」
驚く新之輔を尻目に、妙窓は多少厳しい口調で中年男に訊いた。「双恵、身を清めてきたか」
「はい、お師匠さま。なれど、このお方は、たいそうご立派なお身体をされています。とてもわたくしごときが、お相手出来るお方ではない、と存じますが」
「案ずるな。苦しみに耐えてこそ、功徳が施せるというもの」
妙窓はきっぱりと言うと、新之輔に向き直った。
「新之輔さま、この男は手籠めにされて悦ぶ類の男でございます。最初のうちは拒むやも知れませぬが、それは演技でございます。いかにこの男があらがおうと、またいかに苦しもうと、どうぞご存分にお責め下され」
新之輔に抱き寄せられて、双恵は身悶えしてあらがった。しかし、その抵抗は必死の様子がなく、力の弱いものだった。
(やはり、手籠めにされて悦ぶ演技であろうか?)
新之輔はあえて手荒に男を押さえつけ、身ぐるみ剥いでいった。
「ああ、お武家さま。ご勘弁下さい」
「許さぬ。大人しく言うことをきけ」
「ああ―
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[*]
感想