(7)

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翌日から、会社に出勤した。佳代に誓った意志を忘れないために、朝晩のランニングは続けることにした。ただし朝は1時間早めて5時起きにした。
早起きはつらかったが、気合で起きた。
外に出ると、あたりはまだ夜のうちだ。しかたなくコースを変えて、明かりのともる大通りを走った。
さすがに夜の冷気は、身にこたえた。それでも走っているうちに、じっとりと汗ばんでくる。右膝はあいかわらず痛みを訴えつづけていたが、ランニングをやり始めたころに比べれば、ずっと楽になった。
走っていて、池上との会話が頭をよぎった。ひょっとして、今現在も、俺に尾行をつけているのだろうか?俺はニンマリした。(ご苦労なこった)走る途中でそっと背後をうかがったが、それらしき姿は見つけられなかった。
ランニングから戻ると、ざっとシャワーを浴びてスーツに着替えた。その姿のまま、コーヒーを入れて、啓介と自分用のハムエッグとサラダを作った。始めた頃に比べれば、ずいぶん手際が良くなったと思う。
トーストを焼いて朝飯を食べていると、啓介が起きだしてきた。まだ6時半だというのに、ずいぶん早い起床だ。
「お早う。父さんは今日から会社だ。7時ごろには帰って来られると思う」
俺が言うと、啓介は「ああ」とそっけなく言って、洗面所に行った。

会社の仕事は、たっぷりと貯まっていた。12月も中盤にさしかかって、冬の商戦、真っただ中と言ったところだ。
休み中の遅れた分を取り戻そうと、その日一日、目いっぱいに働いた。仕事に没頭している間は、佳代が死んでからの気がかりなことも忘れることができた。

夜、家に戻ると、太田が来ていた。啓介は食卓について、天丼を食べていた。
俺が聞く前に、太田が言った。
「わしが出前を頼んだ。お前の分もある。先に食事をすませなさい」
俺は素直に礼を言って、食卓についた。
先に食べ終わった啓介が、ものも言わずに席を立ち、自分の部屋に行った。おそらくこの前の会話のことで、まだ怒っているのだろう。
啓介と入れ替わりに、太田が向かいの席に腰掛けた。彼は、啓介の姿の消えた階段のほうをチラリと見て、しょうがないなというように肩をすくめた。
「やれやれ、お前たち親子は、まだ仲直りができていないようだな」
「それは先生のうがった見方だ。啓介は、家事の手伝いをやってくれるようになった」
「晩飯はどうする。お前がいくら早く帰っても、7時は過ぎるだろう。それまで啓ちゃんは、すきっ腹で待たせるのか?」
痛いところを突かれて、すこし詰まった。(食事の支度やなんか、女手がないと大変だろう――)義父に言われたことが、思い出された。
俺はボソリと言った。
「――啓介は、おそい夕食には慣れていますよ」
太田は、あきれたように両手を広げた。
「いいか、あの子はまだ12歳なんだぞ。育ち盛りの子供が、7時過ぎまで空腹を抱えて、ひとりぼっちでいるんだ。ちっとはあの子の気持ちも考えてみろ」
「だったら、どうしろって言うんです!」
俺は思わず語気を荒げた。
太田が驚いて眉をつりあげた。
俺は気を取り直して、声を落とした。「俺だって、できれば早く帰って来たいよ。でも、啓介のためにも、働く父親の姿を見せたいんだ」
太田は、のんびりと言った。
「まあ、落ち着け。――お手伝いでも雇ったらどうだ?」
彼の言うことは、考えないでもなかった。そのことについて、啓介の意見を聞こうとして、言いそびれていたのだ。
「それは考えているよ」
俺はあいまいに言った。「ところで先生、今夜はそんなことを言うために来たんじゃないでしょう。用件はなんですか?」
太田は、得意そうにふんぞり返った。
「梶山商事の情報だ」
「なに?」
「ある筋から聞いた話だが、梶山商事は資金繰りに困っていた。原因は、宅地の開発用地を安く買い叩いたが、肝心の開発許可のほうが進まない。どうやら、重要な開発規制の要件を見落としていたようだ」
「――」
「梶山商事は、あの手この手で当局にプレッシャーをかけて、開発許可まで持っていこうとしたが、結局は断念せざるを得なくなった。そうなると、大枚払って先行取得した土地は、二束三文の価値しかない」
俺は口出しした。
「ちょっと待てよ。土地の買収資金は、どうやって出したんだ?」
太田が、待ってました、というようにニンマリした。
「いいところに気がついた。お前も、まんざらバカじゃないな」
そこで彼は、二人きりなのに、声をひそめてつづけた。「実は、梶山商事は浜銀行から融資を受けている。10億円もの大金だ。今持っている事務所や、梶山本人の自宅を抵当にしてな」
俺は驚いた。なんで太田がそこまで知っているんだ?
「おい、先生。そんなこと、どこで聞いたんだ?」
「わしは顔が広い。情報源はいくらだってあるさ」
太田は威張って、ソファーのうえでふんぞり返
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