(5)

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男たちから解放された後、すぐ啓介の学校に電話をかけた。電話に出た教師には、急用だとごまかした。
「授業中だったのに。なんの用なの?」
電話に出た啓介は、不機嫌そうに言った。息子の声を聞いて、俺は安堵のため息をついた。
「きょうは何時に学校から帰るんだ?」
「お父さん!」
啓介は叫んだ。それから声を落として言った。
「そんなことを聞くために、わざわざ電話をかけてきたの?」
「何時だ?帰る時刻に福井さんが、学校の門のところで待つようにする」
「あの小さな小父さん?」
啓介の声が明るくなった。
「4時だよ。でもなんで小父さんが迎えに来るの?」
それには答えず、俺は言った。
「4時だな。じゃあ門のところで、福井さんが待っているからな」
電話を切ると、こんどは福井に連絡した。彼は客を乗せていたが、俺の申し出をあっさりと了解した。
二人に連絡を取り終わると、家に戻り、シャワーを浴びた。まだ梶山の逸物が、後ろに入っているような不快感が残っている。オカマを掘るのは慣れているが、掘られる側に回るのはとても馴染めない。
念のため、化膿止めのクリームを患部に塗った。それから服を着替えて、横浜市街にある、佳代の父親が経営する事務所に出かけた。

義父は不在だった。代わって、初老の男が対応した。池田という名前の、背の低い温厚な重役だ。義父の右腕で、二人は人に言えない親密な関係を築いている。俺は義父と付き合う延長線上で、この池田も抱いたことがある。
梶山にやられた尻を庇って、立ったまま話をした。
池田は親愛の情を満面に浮かべて、社長はまもなく戻りますと言う。
彼に梶山商事のことをそれとなく聞いた。横浜でビル事業をやっている義父の会社なら、なにか知っているかもしれないと思ったからだ。
梶山商事の名前を聞いて、池田は眉をひそめた。
「ご存じなのですか?」
俺は念を押した。
「ええ──二、三度、取引したことがあります」
俺は驚いた。
「どんな取引ですか?」
「ビルを建てるときに、隣地を買い増しする必要があって──その取りまとめを、梶山商事に依頼したのです」
池田の口振りは、どことなく歯切れが悪かった。何かあるなと思った。
「梶山商事は、なにをやっている会社ですか?」
「不動産会社です。地上げや、開発の許認可を主にやっています。最近は自社で、小規模の宅地開発をやっていると聞いています」
俺はカマをかけた。
「かなり乱暴なやりかたをする、会社だという噂ですが」
それに池田が乗ってきた。
「確かに、感心したやりかたではありませんね。うちの仕事のときも、隣の地主さんが脅迫されて、無理やり契約させられたという噂を、聞いたことがあります」
そこであわてて付け加えた。「単なる噂ですよ」
「梶山会長のことはご存知ですか?」
池田は眉をひそめた。
「詳しくは知りません。篠田社長なら、よくご存知でしょう。以前から、おつき合いされているようですから」
池田は多くを語らなかった。よほど梶山を敬遠しているのだろう。

しばらくして義父が戻ってきた。娘の死から立ち直ったのか、品の良い端正な顔には、いつもの落ち着きが戻っていた。と同時に、俺に対する思いが、前以上に強くなったようだ。
池田が部屋を出ていくと、義父は俺に近づいて、抱擁しながらそっと唇を重ねた。それから手を伸ばして、俺の股間をまさぐる。
5年前、俺が交通事故で半年間の入院生活をしたときから、全てが変った。俺は、女を死なせた自責の念から、女を抱けなくなっていた。女房の佳代でさえ駄目だった。
そんなとき義父が、急接近してきたのだ。
義父はこれまで隠していた男色嗜好を、それとなくほのめかし、俺が酔っ払って寝ているときに、義父の柔らかい口によって、最後の一線を超えた。
それ以来、義父との関係は続いた。義父が言うに、俺には年寄りの男を惹きつける何かがあるそうだ。いつしか俺も、溜まった性欲の解消のため、自分から進んで年輩の男と関係を持つようになっていた。

義父は、俺の体を触ることで満足すると、ソファーに落ち着いたあと訊いた。
「今日は何のようだね?」
「ちょっと近くまで来たものですから」
俺は、肛門に体重が掛からないよう、慎重に腰を落としながら言った。
「だったら、ホテルに行くか?ここよりくつろいで話ができる」
義父の思惑は分かっていた。久しぶりに肌を合わせたいのだ。しかし俺は、梶山にやられたばかりで、とてもそんな気分になれなかった。
「このあと予定がありますから――ホテルは又にしましょう」
「そうか──少しは落ち着いたかい?」
「ええ、啓介もだいぶ元気を取り戻してきたようです」
俺は答えながらも、義父のようすをそっとうかがった。
佳代の目鼻立ちに似た、上品な顔がこちらをじっと見ていた。きちんと七三に分けられたロマンスグレーの髪
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