第五話 初体験の思い出

第五話 初体験の思い出

梅雨入りした。毎日、雨模様のうっとうしい天気が続いている。
大輔と昌平の住む家の狭い庭にも、朝からしとしとと細い雨が降り続いていた。
昌平が丹精込めて手入れしている盆栽や、庭の片隅に咲く紫陽花の葉も、鮮やかな緑色に濡れている。
大輔は敷布団を広縁にひろげ、下着姿の昌平をうつ伏せに横たわらせて、マッサージをしていた。
梅雨の鬱陶しさを吹き払うように、縁側のガラス戸は大きく引き開けられている。湿気を含んだ空気が室内に流れ込んで、多少なりと冷房効果を生みだしているようだ。
肉の厚い手が七十六歳の肉体をもみほぐす。首筋をもみ、肩を丸くなでる。疲労を取るというよりは、快感を送り込むような手の動きである。
昌平が心地よいうめき声をあげた。
「ああ――いい気持ちだ。ダイちゃんは、アレも上手だけどマッサージも上手だな」
「そうかい。昌ちゃんのお褒めにあずかって、光栄だ。じゃあ、これはどうだい?」
大輔は手の平全体で、腰の窪みをグッと押さえた。
「ああ――いい――ダイちゃん、こんなマッサージ、いつ覚えたの」
「子供のときだ。爺さんを相手にな」
腰から下に手をずらせて、丸っこい尻を揉みながら、大輔が答えた。
それを昌平が、からかうように言った。
「へーえ、子供のころから、爺さんが好きだったんだね」
「ああ、爺さんが大好きだった――」
大輔は、遠くを見るような眼差しをした。それから、何が彼をそうさせたのか、祖父の思い出話をしだした。

「婆さんは早くに死んだので、爺さんは庭の離れにひとりで住んでいた。ぽっちゃりと太った、優しい爺さんでね。子供のころは、その爺さんの住む離れに、よく遊びに行ったものさ。あれは、おれが十歳のときだったな、爺さんの秘密を知ったのは――」
大輔は考えをめぐらすように、しばし口をつぐんだ。
「その日は何かの行事があって、小学校は昼までだった。学校から戻って昼飯を食べたあと、さっそく爺さんのいる離れに行くことにした。中庭を歩いているときだった。窓が少し開いていて、そこから爺さんの変な声が聞こえてくるんだ。
痛みを訴えるのではなく、妙に甘ったるい調子だったな。おれは子供心にも、胸がドキドキしてきたのを覚えている」
大輔は話しながら、寝そべる昌平の太腿の付け根からふくらはぎにかけて、丹念に揉みほぐした。
「ちょうどミカン箱があったので、窓の下に持って行って、それを踏み台代わりに、窓の中を覗いてみたんだ。そこで仰天した。
なんと、男がズボンをずり下げて、爺さんの上にのしかかっていたんだ。男は筋肉質のたくましい体つきをしていた。
おれはすぐに、その男が近所に住む、大工の平八さんだと気付いた。
おれのほうからは、剥き出しの大きな尻が、もくもくと爺さんの体に向かって動いているのが見えた。なにか餅つきをしているような、ついた餅をこねているような、そんな動きだった。
平八さんに押さえ込まれた爺さんは、仰向けになって、股を広げ、自分の足を抱え持っていた。ちょうど平八さんの肩の向こうに、爺さんの顔が見える按配だったな。
目を閉じ、口をあけて、しきりに甘ったるい呻き声をあげている。なんだか苦しいような、気持ち良いような、複雑な表情をしていた。
ふたりの体の間から、猫がミルクを舐めるような、ピチャピチャ、クチュクチュ、と濡れた音が聞こえていた。
二人が何をしているのか、十歳のおれでも理解できたよ。学校で悪ガキたちが言っていたこと――男と女が子供を作るためにやるアレを、おれの爺さんと大工の平八さんが、やっているんだ。
筋肉質の浅黒い肉体と、しっとりとした白い肉体が絡み合って、濡れた卑猥な音まではっきりと聞こえてくる――。
十歳のおれには、あまりにも刺激が強すぎた。
(でも男同士で、どうやってやるんだろう?)
おれは不思議に思ったが、繋がったところはよく見えなかった」

大輔はマッサージの手を止めると、昌平の尻をポンと叩いた。
「はい、マッサージはこれでおしまい」
と言うと、横にゴロンと寝そべった。自分の話に興奮したのか、ズボンの前が大きく膨らんでいる。
大輔は、両腕を頭の下に組んで、仰向けのまま話を続けた。
「それが男の世界を知った、おれの初体験だ。どうやら爺さんは、おれが見ていたことに、気づいていたようだ。次の日から、大人のチンポがどうしたら大きくなるのか、どうしたら気持良くなるのか、身をもって教えてくれた。おれに握らせたり、舐めさせたりしてね。
それが、爺さんとおれだけが共有する、秘密の遊びになった。
その後、おれが高校生になったとき、チンポを爺さんの尻に入れるようになった。だから、おれの初体験の相手は、女ではなく、爺さんだったってことだ」
昌平は話を聞きながら、大輔のズボンの前を開いた。すでに大きくなった肉根を取り出して、
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