第三話 浮気の虫

第三話 浮気の虫

桜の花もすっかり散って、日一日と緑の色が濃くなってきた。
天気の良い日曜日だったが、ふたりは外出しないで家に居た。
大輔は日当たりの良い縁側で、敷き布団を引き出して、その上に伸びのびと横たわっていた。彼はのんびりと昌平に声をかけた。
「昌ちゃん、水原先生はどうだった?」
昌平のほうは、大輔の質問にすぐ答えられる状況ではなかった。なにしろ彼の可愛らしい口は、膨れ上がった肉根で塞がれていたからだ。
「どうだったって、なに?」
大輔の性器からいったん口を離すと、昌平は逆に聞き返した。それから、一刻も惜しいというように、再び大輔の股間に顔をうずめた。
「だから、あの先生、よかったのか?」
今度もすぐには答えず、昌平は巨大な男根に舌を這わせた。
瘤の盛り上がったようなカリの円周をぐるりと舐めまわし、プリッとした唇のような尿口に吸いつく。それから蜜袋の二つのタマの間を、じんわりと舐めさげる。
昌平好みの玉袋だった。タマが大きいので、垂れ下がるのではなく、丸々と膨らんでいる。
舌を使いながら、指先で菊門にいたる蟻の門渡りを刺激すると、大輔が気持ち良さそうにうめき声を上げた。
「あ、そこいい――で、先生、どうなんだ?」
やれやれと言うように、昌平は顔を上げた。
「なんで水原先生のことを、そんなにこだわるの?まあ、先生のセックスは、可も無く不可も無しってところ。――それより、先生の本命はダイちゃんだよ」
「なんでおれが本命だ。あの先生、タチだろ」
「ウケもやるようだよ。それもでっかいチンポが大好きみたい」

水原医師は昌平の主治医だが、過去の大切な思い出の人に似ていた。そのことを、軽い気持ちでダイちゃんに言ったのが間違いだった。ダイちゃんは、勝手に医者と渡りをつけて、昌平を医者の家に送り込んだのだ。
しかし、医者の家で一夜を過ごした時、この五十年配の男が、本質はウケではないかと思った。昌平を抱きながら、大輔の大きさをしきりに聞いてくるのだ。そのときの医者の目は、恋する乙女のように艶めいていた。
「へーえ、あの先生が俺になあ――」
医者に惚れられていると聞いて、大輔はまんざらでもない顔つきをした。
その顔を見ながら、昌平は言おうかどうしようか迷っていた。
あの晩、医者は、昌平の後ろで昇り詰めることが出来ず、最後は自らの手で扱きだした。そのとき医者は、なんとも太い張型を取り出して、それを後ろに入れてくれと言ったのだ。
しかもやってみると、すんなりと入った。よほど愛用している証拠だ。
そんなことをダイちゃんに言おうものなら、さっそく先生の後ろを試しに行こうとするのは、目に見えている。
そこで話題を変えた。
「ダイちゃんこそ、昇さんはどうだったの?」
「なんのことだ?」
「わしが先生のところから朝帰りした日、昇さんを抱いただろう?」
「あれっ、気づいてたの?あれは口止めのためだ。どこかの爺さんが医者の家から朝帰りしたのを、ノンちゃんに目撃されたからな。ノンちゃんがどこで言いふらすか、知れたもんじゃない」
「底の浅い言訳だな。昇さんは口が堅いから、そんなこと言わないよ。でもいいや、少なくとも、この家に昇さんを引っ張り込んだ訳じゃないんだから」
「昌ちゃん、その話はもう勘弁してくれよ」

今でこそ二人は、相棒がほかの男と寝ても、それを受け入れる包容力があるが、最初のうちはそうではなかった。
とくに昌平は、愛人関係にあった男を振ってまで、大輔のもとに来たのだ。大輔に注ぐ彼の愛情は、並々ならぬものがあった。
ところが根っからの浮気者、大輔のほうは違った。彼は昌平と同棲生活を始めたのちも、ときどき他の老人をつまみ食いした。
もちろん大輔とて、昌平に悪い事をしていると思っている。しかし彼は、あまりにも精が強すぎた。きれいな肌をした好みの年寄りを見ると、つい、ちょっかいを出してみたくなるのだ。
ふたりにとって最大の危機は、昌平が法事で里帰りしたときだった。
二泊の予定だったが、早く大輔に会いたくなって、一日予定を早めて家に戻った。
胸躍らせて玄関のドアを開けた昌平は、客の靴があるのに気付いた。それにしては、家の中が妙に静かだった。居間に行っても誰もいなかった。
そのとき、奥のほうから、かすかに声が聞こえてきた。大輔の寝室からだった。
そっと近づくと、ドアのすきまから聞きなれた声が聞こえてきた。
「――ささ、四つん這いになって、お尻を見せてごらん」
「こんな昼間から――なんか恥ずかしい」
「恥ずかしがる年か――そうら、もっと足を開いて――」
「――ねえ、ダイちゃん。カーテンを閉めてよ」
「カーテンを閉めたら、ノンちゃんの可愛らしいお尻が見えなくなるじゃないか。ささ、お尻をあげて――うん、相変わらずきれいな菊の門だ」
「ああっ!くすぐったい――」

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