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ここはマイアミビーチの高級リゾートホテル。
中年のフロントは、がっしりした体格の白人と、その後ろにでこぼこコンビのような二人連れの東洋人が、こちらに向かって歩いて来るのに気付いた。
白人は黒い手帳をチラリと見せ、ポケットから1枚の写真を取り出して、事務的な口調で言った。
「FBIだ。こちらにこの男が泊まっているか?ミスター・オシという日本人だ」
フロントの男は写真を見て、即座にうなずいた。
「ああ、ミスター・オシですね。ここに泊まっていますよ」
「何号室だ」
「711です」
「じゃあ、ちょっと捜査に協力してくれ――」

雄士利輔は、ルンルン気分でホテルに戻ってきた。先ほど、可愛らしい白人の爺さまと、明日のデートを約束したばかりだ。
(明日はまず、サウスビーチのナイトクラブに行って酒を飲ませ、そのあとホテルに連れ込んで――)
彼はひとり、ほくそ笑んだ。
マイアミの郊外には、全米各地から金持ちの老人たちが、暖かい気候を求めて引っ越してくる。中には彼好みのゲイの爺さんも多い。やらせてくれるし、小遣いもくれる。まさに趣味と実益を兼ねた付き合いだ。
フロントの男が妙な目つきでこちらを見ていたが、無視してエレベーターに乗った。
7階のスイートルームは快適な住み心地だ。ベッドルームと広いリビング。海の見渡せる眺望も良い。
部屋に入ったとき、何か違和感を覚えた。そこで気づいた。なんとリビングのソファーに、見知らぬ3人の男がいたのだ。
(なんだ?こんなこと、あり得ない)
彼は呆然と立ち尽くした。
東洋人らしい男が立ちあがった。かなり背が高い。男は日本語で話しかけてきた。
「やあ、ミスター・オシ。やっと戻りましたね」
雄士はにわかに警戒した。
(何なんだ、こいつらは?)
大きな体つきの白人が立ち上がって、ドア側の位置に移動した。雄士は不安になった。
(こいつら、何をするつもりだ?)
先ほどの日本人が、自己紹介した。
「私はチカラ、彼はFBIのボブ、ソファーにいるのはキリツだ。私とキリツは日本から来た」
FBIと聞いてドキッとしたが、雄士は沈黙を守った。
「単刀直入に言おう。きみが華下満寿夫を脅して、日間梨産業から横領した1千5百万円を返してもらいたいのだ」
(どうしてそんなことが分かったのだ?)
雄士は動揺を押し隠して、何食わぬ顔で言った。
「何のこと?ぜんぜん覚えがないけど」
「陳腐な言い草だな。嘘をつくなら、もっとスマートに言い訳したら」
チカラは、せせら笑った。「でも、こちらは暇じゃないので、簡潔にいくぞ。――いま、きみの銀行口座には1千4百万円ほど残っている。差引百万円不足だが、われわれの経費も2百万円ほどかかっている。これもきみに負担してもらわなくちゃならないから、合わせて3百万円不足だな」
(なんのことだ?それに、なんでおれの預金額を知っているのだ?)
雄士は動揺を隠せなかった。
その彼の肩に手を置いて、チカラはソファーの方に押しやった。
「立ったままじゃ何だから、座って話すか」

雄士を囲むようにして全員が座ると、チカラが話を続けた。
「きみの選択肢はふたつある。ひとつはボブがきみを逮捕して、FBIに連れて行く。そのあと日本の警察に引き渡す」
チカラはひと呼吸置いた。
「もうひとつの選択肢は、口座に残っている金を華下満寿夫の親の口座に振り込む。残り3百万円は働いて返す。これできみは、無罪放免だ。あ、それから、われわれはマイアミでもコネクションがあるので、きみの働く先も用意してあげる」
雄士がボソッと言った。
「働く先って?」
「アクターの仕事だ。きみは、なかなかのハンサムだから、映画に出演してもらう」
「映画俳優――?」
「ああ、ハリウッドとまではいかないが、マイアミの映画会社だ」

結局、雄士は金を返すほうを選択した。ここは海外だ。彼は用心深い男だが、もともと自己顕示欲も強かった。そこで、映画に出るのも悪くないな、と思ったのだ。
トランクケースひとつでホテルをチェックアウトした。それから最寄りの銀行に行って、言われた口座に1千4百万円を振り込んだ。
そのあと、男たちの車に乗って、映画会社に向かった。
そこはヒスパニック系の人間がたむろする、胡散臭いところだった。
部屋には痩せた背の高い白人と、背が低くでっぷりと肥った中南米系の男がいた。前もって話が通じていたのか、彼らは値踏みするように、雄士の体をじろじろと見た。
それから、交渉が始まって、英語とスペイン語が飛び交った。背の低いキリツという日本人が、チカラの通訳をして、スペイン語交じりの英語で話していた。

途中で、チカラが雄士に言った。
「きみの給料を決めているのだが、彼らはきみがきれいな体をしているか、心配しているんだ。なにしろ、俳優は体が資本だからね。それで、ちょっ
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