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日曜日の午前10時、篤志と真締忠義は池袋の喫茶店で、元経理部の社員、華下満須夫に会っていた。真締は休日出勤になるが、不平の素振りひとつも見せなかった。
「ほほう、これは――」
華下満須夫を見たとたん、篤志はうなった。
それほど美形の青年だった。うるんだような黒い瞳、小ぶりだが形の良い鼻、薄紅色のつややかな唇。頬はなめらかに張って、異質の色の白さだ。ふと、家にある童の博多人形を思い浮かべた。しかも、背の低い中肉の肢体は、衣服を着ていても、たおやかな弾力と吸い付くようなぬめりを予感させる。
フケ好きの篤志でも、ゾクッとくる興奮を覚えた。稚児好きの男色家なら、思わず犯したくなるような欲望を覚えるだろう。

真締ひとりが来ると思っていた青年は、篤志の姿を見て警戒したようだ。彼は非難するように、真締を見た。またその目つきが、思わず惹きこまれるような艶がある。
「わたしは仲間篤志という者です。3年前に日間梨産業をやめて、また今度、相談役に返り咲いた。だから、きみはわたしを知らないと思うけど、いま真締くんと一緒に仕事をしている」
篤志は、相手を安心させるように、できるだけおだやかに話した。
「存じています」
華下はぽつりと言った。それだけでは足りないと思ったのか、補足した。「入社したとき、仲間常務のお名前はうかがっておりました」
「そう、じゃあこれから2、3質問させていただくけど、これは非公式の会合だということを、最初にお断りしておく」
店員がコーヒーを持ってきたので、しばし話を中断した。

「まあ、コーヒーを飲みながら、話をしようじゃないか。真締くんは、きみが1千5百万円もの金を競馬につぎ込んだとは思えない、と言っているけど。何か事情があるようだね。よければ話してくれないか」
華下は黙り込んだ。かすかに口元が震えている。そのピンク色をした初心っぽい唇を見ていると、思わず吸い付きたくなる。
同行する真締は平然としているが、そのことが不思議でならなかった。見ているだけで男の本能を奮い立たせるような雰囲気を持つ青年に、真締は何も感じないのだろうか。
篤志は、相手の表情を見ながら言った。
「きみ、誰かに脅されてやったのじゃないだろうね。それとも――好きな人のためにやったのか」
若者は感情を表に出さないようにしているようだが、年季の入った篤志の前では、あまりにも幼かった。ほんのわずか、ハッと息をのみ、好きな人と言ったときは、はっきりと口元を震わせた。
「どちらでもありません。わたしがひとりで使いました」
華下は下を向いたまま、か細い声で言った。
青年の様子を見ていて、ふと、頭の中で、嗜虐的な想いが浮かんだ。
この稚児のような若者の体を組み敷いて、一枚一枚服を剥ぎ取りながら、白状するまでじんわりと折檻する。
(――まだ言わぬか。ふふふ、これはどうじゃ)
(――ああっ!お許しください)
(――許さんっ!さあ、言わぬとひどい目にあわすぞ)
妄想を振り払って、篤志はおだやかな声で言った。
「まあ、きみが話したくないのなら、無理には訊かない。でも、きみが話したくなったら、いつでも電話をしなさい。そのときは、できる限りきみの手助けをしてあげよう」
華下のホッとした様子を見て、篤志は言った。
「ところで今は何をしているの。新しい仕事は見つかったのかい?」
今度の質問は答え易かったのか、華下はすらすらと言った。
「理容学校に通っています。もともと手先は器用なほうでしたから、理容師になろうと考えています」
「ほう、理容師ねえ。一流大学出のきみがもったいない気もするけど」
そこで、ふと思いついた。「湯島で従業員を探している床屋を知っているよ。もしきみが望むのなら、紹介してあげよう」
「でも、ぼくはまだ理容学校の生徒ですから」
「大丈夫だ。その床屋で修業をしながら、学校に通えばいい」
初めて華下は、にっこりとした。
「じゃあ、よろしくお願いします」

篤志は真締を帰すと、華下満須夫を連れて、湯島にある右舞百八の店に行った。日曜日なので、客で混んでいた。百八と熟年の従業員がそれぞれの客にかかりきりで、待っている客もふたりいた。
それでも百八は、篤志のために時間を割いて、奥の居住部分で話を聞いてくれた。
篤志は手短に話した。華下満須夫を住み込みで、店に置いてくれ。理容学校に通っているが、空いた時間は店で修業させて――云々。
百八はあっさりと承諾した。それから華下に向かって「修業は今からでもいいよ」と言って、表の店に戻っていった。
驚いたことに、華下はなんの躊躇もなく、さっそく店の手伝いを始めた。よほど百八が気に入ったようだ。
それだけ見届けると、篤志は床屋を出た。

――◇――

華下満須夫は、仲間重役のような円熟した大人の雰囲気のある、年配の男性にあこがれを持っ
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