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警視庁に行った翌日、強羅警部から電話があって、江利戸社長の私邸近辺をうろつく不審人物がほぼ特定できたと連絡があった。さっそく真締を警部のもとに向かわせた。
昼過ぎに真締が戻ってきた。
強羅に預けたDVDのほかに、数枚の写真を持っていた。その写真には、サングラスをかけた男の姿が写っている。
「不審人物は二人いるようです。暴力団に詳しい組織犯罪対策部に見せたところ、どうやら下葉組の組員らしいということです」
写真はさほど鮮明でもなく、しかも男はサングラスをかけている。こんな写真から男を特定するのは、至難の業と思えた。
真締も同じようなことを言った。
「こんな写真から辿り着くんだから、さすが警察はプロですね。それでこの下葉組ですが、組員数人の小さな暴力団とのことです。でも、広域暴力団の男華内組に属しているそうです」
真締は、警察で聞いた暴力団の情報もメモしていた。
男華内組と聞いて、篤志はウムとうなった。
「分かった。ご苦労さん。DVDは社長に返してくれ。あとで必要になるかも知れんので、中身は消去しないように伝えてくれ」
言ったあと、篤志は写真だけを手元に残した。

真締が部屋を出たあと、篤志はすこし考えていたが、旧友の稚加良強に電話した。
「ああ、ツヨ。今日、空いているか」
「おれはいつだって空いているさ。お前と同じで、相談役はいつも暇なんだ」
「じゃあ今からそっちに行く。ちょっと相談があるのだ」

篤志は大木奈の車に乗って、渋谷に向かった。強は警察で警視正までなった官僚だ。
その後民間の企業に天下って、今は大手警備会社の相談役をやっている。
渋谷にある警備会社の本社に行くと、すぐ美人の秘書に案内されて、応接室に通された。
「おい、この前は無事だったか」
「何のことだ」
「お満の女将のことだ。だいぶ女房に絞られたんじゃないか」
会った早々、篤志は強をからかった。
二人は小学校から大学まで、ずっと同じ学校だった。
大学時代は二人でつるんで、さんざん悪さをした。ひと晩限りの女を共有したこともある。篤志の家に呼んで、男を知らない強に、惣吉老人の尻を試させたこともある。
博打などの極道も一緒にやった。
その後社会人になって、真っ当な道を歩み出したふたりには、悪さをした時代の経験が良いほうに作用したようだ。共に、そこそこの地位まで上がったからだ。
そんな二人だから、話す内容も遠慮がない。しばらく雑談して、篤志は本題に入った。
タバコ屋の土地取引の経緯から強羅警部に調べてもらった結果まで、すべてを話した。
じっと聞いていた強は、組んだ両腕を解いて、つぶやくように言った。
「鉄男も少しは役に立っているというわけか」
「ああ、見かけはごついが、頭は切れる。さすがお前の甥っこだ」
言ったあと、篤志は問いかけた「で、このあとどうするかだ」
強は考えながら言った。
「男華内組まで辿り着いたとなると、あの男しかいないな」
「ああ、だからお前に相談に来たのだ」
「よし、おれのほうで頼んでみる。少し時間をくれ」
「頼む。この写真は監視カメラに映っていた不審人物だ。下葉組のものらしいが、必要なら持っていってくれ」
そう言って、篤志は強羅警部から回ってきた写真を、強に渡した。

あの男とは、屋久佐平次のことだった。
小学校が同じだったが、その後しばらく音信不通になっていた。
再会したのは30代半ばのときだった。
屋久は、親がやっていた型枠大工の会社を継がず、男華内組の組長と舎弟の契りを結んでいた。彼は極道者だが、義侠心の強い男だった。ある悪徳不動産屋を半殺しの目にあわせ、警察に検挙された。そのときの警察側担当者が強だった。
そして数年後、刑務所から出た屋久を、強と篤志が待っていた。ふたりは屋久が更生して、型枠会社を復活するのを手伝おうとした。小学校の同窓生という縁よりも、屋久という男の一本気が気に入ったのだ。
その意味では、強も篤志も風変わりな人間だった。彼らは、世間体を気にして、人生を小さく押し込めていく気はさらさらなかった。
しかし、会社の再生資金を集めるのは、前途多難だった。前科者に金を貸す銀行など、どこにもなかった。
そのとき篤志は、一世一代の大博打をした。
彼は株や金融商品に興味を持ち、少額の投資をして小遣い稼ぎをやっていた。しかし反面、その怖さも知っていた。ハイリスク、ハイリターン。へたをすれば投資額がゼロになるどころか、その何倍もの額の負債になって返ってくる。そんな例は、まわりにいくらでもあった。
篤志は屋久と強を集め、金融投資の説明をした。
その上で、ふたりの決意を確かめると、3人でかき集められるだけの金を集めた。
――そして相場を張った。
幸いにも相場は大当たりして、投資額は何倍にもなって返ってきた。薄氷を踏むような博打だった。
こう
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