(五)
高島一郎さんはひとり住まいでした。
彼が61歳のときに奥さまが亡くなって、ちょうど10年が経つということですから、現在71歳になるのでしょう。
六甲山の麓にある住まいは、古色蒼然とした山小屋風の洋館でした。
車から降りたとき、庭先のザクロの木に、花が咲いているのが目に入りました。緑の多い中で、朱色の花が鮮烈な印象を与えます。
わたしの家にもザクロの木があり、取るに足りないことでしょうが、お互いの家にザクロがあるという共通点で、なぜか嬉しい気分になりました。
家の中も味わいのあるものでした。
暖炉のある高い天井のリビング、キングサイズのベッドのある寝室、ゆったりと横たわって入れるバスタブのある浴室――すべてが欧米風の造りで、古い中にもよく手入れが行き届いておりました。
そして一郎さんの手料理も、すばらしいものでした。
コーンポタージュスープにキノコのサラダ、そして神戸牛のビフテキ。わたしたちは、豪勢な晩飯に舌鼓を打ち、神戸産のワインに心地よく酔いました。
夕食後は、居間のソファーにくつろいで、親子対決のチェスを眺めました。
高い天井でゆったりと回るプロペラ型の扇風機、室内に流れるモーツァルトのヴァイオリン協奏曲、板張りの壁に貼られたジェームス・ディーンの色褪せたポスター。
全てがひと昔前にタイムスリップしたような、セピアカラーのひとときです。
天井の照明は消され、部屋の隅にあるスタンドランプだけが点けられています。その暖かい明かりが、チェスに興じる親子の、彫りの深い横顔を照らして、なんとも言えないすばらしい光景を醸し出しています。
わたしと室井さんはごく自然に、二手に分かれて、それぞれのプレーヤーを応援していました。室井さんは紳一さんを、そしてわたしはお父さんの一郎さんを――。
一郎さんのくゆらすパイプの香りが、昔よく吸っていた祖父のなつかしい匂いを思い起こし、時折聞こえる親子の声が耳に心地良く聞こえます――。
夢を見ているようなひとときが流れ、そして就寝のときが来ました。
「寝室は、ふたつしかありません。じいさん同士、仲良く寝ますか」
一郎さんは言って、わたしに向かって微笑みました。
わたしはハッとしました。一郎さんの瞳の中にある、想いに気づいたのです。
(ああ――)
目くるめく感動に、わたしは立っているのもやっとの状態でした。
「その前に、イッちゃん――」
室井さんが横から声をかけました。「もう一度、シャワーを浴びようよ。わたしも入るから」
彼の言っている意味に気づいて、わたしはどぎまぎしました。暗に言っているのは、直腸を洗浄しなさい、ということです。
身体をきれいに洗って、それぞれの部屋に別れるとき、室井さんは、それじゃあ、と言ってわたしのお尻をそっと押しました。
多少の緊張感を持って、わたしは一郎さんの寝室に入りました。
わたしを見つめる一郎さんの目の優しさに、体の震えを押さえることができません。
一郎さんは、わたしをそっと引き寄せ、力強く抱きしめてくださいました。
「震えていますね。怖いのですか」
わたしは極度の興奮に何も言えず、大きな身体に埋めた顔を横に振りました。
「可愛らしい人だ。今夜は肌を合わせて、寂しさを慰め合いますか。いいですね」
彼はわたしの顔を仰向かせ、そっと唇を重ねてきました。体の芯がとろけるとは、こういう口付けのことを言うのでございましょうか。
冷静に見れば、気障な仕草だと思われる方もおられるでしょうが、一郎さんは、それが自然な形で様になる方でした。
そのあと一郎さんは、わたしの服を脱がし、自らも裸になると、わたしをベッドに誘いました。
一郎さんの裸を見たときから、わたしはすっかり自制をなくしていました。年相応に柔らかくなっていましたが、往年の筋肉質の名残がうかがえます。
そして股間には、ドキッとするほど陰影に富んだ性器が、重そうにぶら下がっています。
一郎さんは、ベッドの上でわたしをうつ伏せにして、優しく愛撫してくださいました。温かく逞しい指が、首筋を撫で、背中の窪み伝いに羽毛のタッチで這い下ります。お尻を撫でられたとき、ゾクッとする快感に、思わず声が出ました。
「きれいな肌をしていますね。こんなにそそられる身体は初めてだ」
心地良い声が囁きかけます。
わたしはうっとりとして、受身の歓びを噛みしめていました。
今度は仰向けにされました。
テーブルランプに浮かび上がって、鼻筋の通った面長の顔がわたしをじっと見ています。
涼やかな目や形の良い唇、柔らかい顎の線、目に入る彼の造形すべてが、わたしの心を虜にしました。
濡れて開く――。好きな男を前にした乙女の心境でした。
「本当にあなたは可愛らしい。本気で好きになりそうだ」
一郎さんは囁くと、そっと口づけしてくれました。それから手と
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