(3)

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坂本千秋は、義父の河合俊郎と新幹線に乗っていた。これから京都で1泊したあと、神戸の上原景を訪ねる予定だった。
川に落ちた上原景を家に泊めて以来、景から二度、手紙が届いた。ぜひ神戸に遊びに来てくれと書いてあった。千秋は景の手紙を見ても、さほど気にかけていなかったが、義父が会いに行くと言いだしたとき、思わず自分も行くと言っていた。
なにしろ夜中に、千秋のベッドにもぐり込んで、強引に男色の世界に引きずり込んだ義父のことだ。若者に対して何をしでかすか心配だった。

横の座席から義父が、のんびりと話しかけた。
「上原景って男は、どんなタイプの男だ?」
「そのへんにいる普通の若者ですよ。ま、十人並みってとこ」
千秋は言いながら、ずぶ濡れでベッドに横たわる若者の姿を思い浮かべた。「それに、ちょっと、おっちょこちょいですかね」
「ふーん。で、あの若いのとはどこまでいった?」
「なんですか、どこまでいったって?」
「だから――キスぐらいしたのか?」
「お父さん、なにを言うんです。彼とは初めて出会ったばかりですよ」
「そうか。じゃあ――」
俊郎はいたずらっぽく千秋の顔を見た。「もしも神戸で、あの男が迫ってきたら、どうする?」
「お父さん、なにを言うんだ!自分の感覚で人を見ちゃあ駄目ですよ。あの若者は、全くのノンケなんだから」
俊郎は、婿の顔を疑わしげに見た。
「ふーん、どうだか。お前、あの男のでかいちんぽを見て、何も感じなかったのか?」
千秋はあわててまわりを見た。そして声をひそめて言った。
「何も感じませんよ」
千秋は断言したが、あの夜、若者の衣服を脱がしたとき目にした男性器を思い浮かべ、顔を赤らめた。あんなでかいのは、いくら義父だって受け入れられるはずがない。
しかし俊郎は、赤面した婿を見て、違うことを考えていた。
「あ、いやらしい。やっぱりお前たち、何かしたんだろう」

ふたりは京都に着くと、清水寺の近くの宿屋に泊まった。木造の古びた宿だったが、従業員のしとやかな京都弁によるもてなしを受け、関東とは違う、まったりした京都の夕べを過ごすことができた。
その夜、久しぶりに義父が、千秋の布団にもぐりこんで来た。義父は小柄だが、女のようにしなやかな肉体をしている。その体を愛撫しながら、千秋はいつになく充実していた。(所変われば、慣れたエッチもまた新鮮だな)
背後から一体になったとき、義父が感に耐えきらない喘ぎ声をあげた。
「ひいっ、すごい!お前、今日はどうしたんだ?」
「清水寺にお参りしたご利益ですかね。さあ、お父さん、一緒に飛び降りますよ」
「お前と心中はまだ早い。まだまだ遊び足りないからな。あ――ああっ!」
千秋は本格的に義父を攻め立て始めた。深夜の和室で、濡れた卑猥な物音と荒い息遣い、それに密やかな善がり声が絡まった。

「神戸にようこそ。お疲れさまでした」
景の明るい顔を見て、千秋はふいに胸のときめきを覚えた。背が高くて、ハンサムで――綿の半袖シャツに細身のジーンズが、いかにも似合っていた。義父のほうは、若者の股間のもっこりとした膨らみが気になるようだ。
「景くん、神戸で見るとまた一段とハンサムだね。足が長いんで、まるで外人さんだ」
俊郎が言って、景が微笑んだ。
「ぼくには、8分の1、イギリス人の血が入っています。おばあちゃんがハーフなんです」
俊郎が年に似合わず、妙に軽い声をあげた。
「へえ、かっこいい!」
景は照れ笑いを浮かべた。
「おじいちゃんだって、格好いいですよ。旅行姿が様になっています」
「おやっ、きみは口もじょうずだね」と嬉しそうに俊郎が言った。
ふたりのやりとりを聞いていた千秋が、冷ややかに言った。
「75歳の年寄りが格好いいって?それにまた、見え透いたお世辞を真に受けちゃって」
「黙れ、52歳!やきもちを焼くんじゃない!」
俊郎がぴしりと言ったところで、景が我に返った。
「あ、ごめんなさい。これから北野町の異人館に案内します。それから南京町で中華料理を食べましょう」
景は先に立って歩き出した。
俊郎はすっかり景が気に入ったようだ。彼は千秋の前で、若者の腕にしがみついたり、腰に抱きついたりしている。その様子は、孫に戯れる祖父というよりは、歳の離れた恋人にまとわりつく小柄な婆さんのようだった。それを千秋は、苦虫をかみつぶしたような顔で見ていた。
ときおり景が、千秋のほうを見て、しょうがないな、というように肩をすくめたが、千秋は素知らぬ顔を通した。

一日が過ぎ、景がふたりをホテルに送り届けたときには、あたりはすっかり暗くなっていた。しかし、河合老人はまだ遊び足らないようすだった。
「おい、もう別れちゃうのか。だってまだ9時だぞ。せっかく神戸に来たんだ、夜の港に行ってみようよ」
「どうしますか?」
景も名残惜しそうに、千
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