(5)男の見極め
ある日の夕方、昌輔は天山に連れられて、町の銭湯に行った。
番台で金を払って脱衣場に行くと、数人の裸の男たちがたむろしていた。皆一様に前を隠しもせず、のんびりと会話をしている。
昌輔は天山にうながされて、服を脱いだ。昌輔が裸になると、雑談していた年配の男性たちが目配せして、一斉に昌輔の方を見た。
その視線を感じて、他人の前で裸になることに慣れていない昌輔は、恥かしさでいっぱいだった。浴室に入るとき、すれ違った老人が昌輔の股間を見て、ギョッとしたような表情をした。
浴場は薄暗く、秘密めいたムードがあった。十数人の男たちが、浴槽や洗い場にいた。
昌輔は天山に倣って、浴槽のふちで前を洗い流し、それから湯船に入った。湯はどんよりとたゆたって、しびれるほど熱かった。それでもじっと我慢していると、身体の芯から、のびのびとしてくる。
「どうだ、銭湯もいいものだろう」
天山が首までどっぷりと漬かって、声をかけた。禿げあがった額に汗が浮き出ている。
「今日はおまえの眼力の訓練だ。ここにいる男たちをよく観察しろ。年齢、体つきや顔つき、肌の色、体毛の有無――すべてだ。それから男の道具もよく見るんだ。大きさや形、色艶、軟らかいのか固いのか。すべてを目に焼き付けろ。いいか、マラだけでなく玉袋もだ」
昌輔は、どうしてそんな訓練が必要なのか理解できなかったが、とにかく浴場にいる男たちの裸を観察した。
背の高いのや低いの、太ったのや痩せたの、色白や浅黒いの、年寄りや中年男。まさに千差万別だった。
そして気付いた。男たちの性器は、必ずしも体つきと比例していなかった。堂々とした体格の中年男が、カタツムリのような皮被りだったり、逆に貧相な体格をした老人が、亀頭の剥けきった長大なモノをぶら下げていたり、その取り合わせはさまざまだ。
「昌輔、男の違いが分かってきたか」
天山が立ちあがって、浴槽のふちに腰掛けながら言った。
目の前の裸は、全身がきれいなピンク色に染まって、図太い男根や、大きな玉袋から雫が垂れている。それを見ながら昌輔は答えた。
「ええ、体つきとアレが、必ずしも似ていないという事が分かりました。でも、お師匠さまの場合は、よく似ていますね」
天山は自分の下腹を見やって、眉をひそめた。
「ふん、見かけは似ていても、下の道具のほうがずっと逞しいぞ」
それから、昌輔を睨めつけた。「いいか、見かけだけでなく性能も推理するんだ。いざというときに、貫通できるほどおっ立てられるのか。それともフニャチンなのか。早漏なのか、タフなのかだ」
昌輔は目を丸めた。
「そんなこと――見ただけじゃ分かりませんよ」
「それが素人の浅はかさだ」
天山は顔をめぐらせた。「たとえば、あそこのふたりだ」
昌輔は師の視線を追った。
50代半ばの中年男と、70代と思われる老人。先ほど気づいていたが、ときどき天山の屋敷に来ているふたりだ。
中年の方は、すべてが丸っこいイメージの男だった。背が低く、ゴム毬のような弾力があって、ころころと太っている。丸く後退したおでこと艶のある頬、人の良さそうな小作りの目鼻立ち――。
体毛のない丸味を帯びた肌は、しみひとつなく健康的で、全身ピンク色に染まっていた。太くて丸っこいイチモツは、ぽってりと膨らんだ玉袋の上に乗っかって、ちょこんと前に突き出ている。
一方、老人の方は中背、なで肩、線の細い肉体をしている。眉毛が薄く、とらえどころのない顔つきだが、唯一、大きな鼻が特徴的だ。
そんな子供っぽい体つきに反して、灰色の茂みから垂れ下がった男根は、ぎょっとするほど長大だった。しかし、力感に欠けていた。先端部はすっぽりと薄皮でおおわれ、熟れすぎた茄子のように伸びきっている。
ふたりを観察していると、天山が聞いた。
「ふたりともタチをこなすが、どちらがウケを悦ばせるか分かるか」
昌輔は迷った。大きさから言えば、老人の方だろう。しかし、勃起させることが出来るのだろうか。逆に中年の方は、まだまだ活力がありそうだが、丸っこいお道具は、いかにも力感に欠ける。
「どうだ」
天山がふたたび聞いた。
結局、昌輔は、老人の方を選んだ。
「ふたりとも、ウケをさほど悦ばせるとは思いませんが――どちらかと言えば、お年寄りのほうだと思います」
「よし、おまえが正しいかどうか確かめろ」
天山は浴槽から出ると、男たちに近づいた。昌輔が呆気に取られて見ていると、天山は男たちに何やら話しかけていた。
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