(2)昌輔と天山
大内昌輔は晩婚だった。彼が47歳のとき、町内会長の家にいる出戻りの娘を娶った。
女房はひとまわり若く、美人ではないが、しなやかな肉体をしていた。昌輔は仕事から帰ってくると、待ちかねたように新妻と愛の交歓をした。それから風呂に入って、食事をとり、そして早めの床に就くと、ふたたびじっくりと交わった。
まるで長年の禁欲生活を、一気に発散させるような新婚生活だった。
彼はすでに40代の後半になっているが、毎晩、女房を抱くことを苦とも思わなかった。いやむしろ、女房のことを思うと、仕事中でもズボンの中を硬くした。一度結婚してほどよく男を知った女の体は、良くこなれて、それこそ、えも言われぬ味わいがあった。
昌輔は中背太め、女もうらやむ肌理の細やかな、色白の肉体をしている。童顔で、実際の年齢より若く見えた。
しかし、その風貌からは想像もつかない、図抜けた絶倫男だった。
体つき同様、性器も色が白かったが、目を惹く大きさで、それが勃起したさまは、まさに圧巻だった。
小動物の心臓のように肉感的な亀頭は、鈴口からカリにかけて力強く湾曲し、縁の部分は肉のコブが盛りあがったように張り詰めている。
カリから深く切れ込んで竿に繋がり、そこは血管がのたくるように浮き出て、ふてぶてしい太さがある。裏側の尿道海綿体のふくらみが、竿の造形美に力強さを添えている。
それが重力に反して、弓なりにグンと反りかえるさまは、思わず生唾を呑む迫力だ。
しかし、昌輔の夢のような生活は、2年間で終止符をうった。
女房が病死したのだ。直接の原因はクモ膜下出血ということだが、夜毎の激しい房事も、原因のひとつであったことは否めない。
女房の死後、昌輔は、魂の抜け殻のようになっていた。仕事も手につかず、それがもとで会社もクビになった。
ある日、昌輔は呼ばれて、母方の叔父にあたる加納天山という男を訪ねた。住まいは浅草のはずれにある、平屋建ての大きな屋敷だった。
天山は70に近い老人で、背は低いがでっぷりと太っており、お月さまのように福々しい顔をしている。一見したところ、大きな寺の住職のような雰囲気がある。
叔父の前で昌輔は、現在の境遇をぼそぼそと語った。その間、天山は泰然とした様子で、甥の話を聞いていた。象のように慈愛に満ちた細い目が、昌輔をじっと見ている。
昌輔の話が終わると、天山は軽くうなずき、まずは風呂に入れと言う。
民家にしては大きな風呂だった。透明な湯を湛えた浴槽に、中庭に面した大きな窓から明るい外の日差しが入っていた。
石鹸を使って体を洗っていると、天山が浴室に入ってきた。その裸はでっぷりと太って、日に当たったことがないように色白だ。
天山は湯にどっぷりと漬かると、洗い場の昌輔に話しかけた。
「ほう、お前はいい体をしてるな。肌もきれいだ。何歳になる?」
「ちょうど50歳になります」
昌輔は答えながらも、値踏みするようにこちらを見る老人の視線を意識して、落ち着かなかった。
「死んだ女房とはうまくいってたのか」
その質問を夜のことだと勘違いして、昌輔は恥ずかしそうに言った。
「それはもう、毎晩――」
そこまで言って昌輔は、ハッとした。
天山が、豪快に笑った。
「ハ、ハ、ハッ、正直なやつだ。それにしても、立派な男の道具をもっている。さぞかし腰が立たなくなるほど、女房を可愛がったんだろうな」
昌輔はなんとも答えようがなかった。黙っていると、天山が言った。
「ところで、お前は職が無いと言ったな。どうだ、しばらくこの家に住んでみるか」
仕事のあても無かったので、昌輔は素直にうなずいた。
天山が湯から出た。その裸体は、脂肪の層に覆われてふっくらとしていたが、しみひとつない健康的な肌艶で、ぬめるようにしっとりとしている。
ふくらんだ腹の下では、体つき同様、太太しい陽根がぶらさがっていた。大きな亀頭は、色も形も、皮を剥いたゆで卵のようだ。その背後に鎮座する玉袋は、まるでタヌキの置物のように大きい。
自分と身体的特徴の似た叔父を見て、昌輔は親近感を覚えると同時に、何かときめきに似たものを覚えた。
次の日から昌輔は、加納天山の屋敷に住みついた。天山は日本画家で、画壇ではそこそこ名の知れた人物だった。
屋敷には、ひとりの年老いた使用人がいた。洋平という72歳の男で、白髪、端正な顔立ち、お公家さんのように薄い眉毛と穏やかな目をしていた。この老人には、男とも女ともつかない中性的な雰囲気があった。
昌輔は、洋平爺の手伝いをして、家や庭の掃除をしたり、一緒に買い物に出かけたりした。
家の主、天山は、奥の離れをアトリエとして使っていた。彼は日中、ほとんどそこに引き篭もっていた。
穏やかな生活がつづいた。しかし、昌輔の困ったことがひとつある。それは、性欲のはけ口だった。女房が死んで以来、
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