(3)
尚と荒川は、パーティーの始まる予定時間から30分ほど遅れて到着した。目的の家は、優雅な邸宅が立ち並ぶ一角にある、ビクトリア朝風の大きな屋敷だった。
ふたりは、どっしりとした石の階段をあがり、奥行きの深いポーチに立った。
「さあ、これを着けてください」
荒川がポケットからマスクを取り出して、尚に渡した。仮面舞踏会で使うようなマスクだった。ふたりはマスクを顔につけると、壁にとりつけられたベルを押した。待つ間、荒川が親しげに、尚の腰に腕をまきつけた。
ドアについている小さな覗き窓がひらき、灰色の目が外をのぞき見た。それからドアが開いた。頭の禿げた、締まりのない体つきの大男が突っ立っていた。その背後にはもうひとりの大男がいた。
ふたりが中にはいろうとすると、男が行く手に立ち塞がって、ブスッとして言った。
「だれの紹介だ」
「あんたのボスのマクリーニーさんさ。ちょっと遅れちゃったけど」
荒川は愛想よく言った。
男がしぶしぶと脇にさがった。それから無愛想に言った。
「そこの部屋で服を脱いでくれ。下着まで全部だ。脱いだ服はロッカーの中に」
玄関ホールには、ふたりの用心棒のほかに人はいなかった。奥の部屋から、ロックの音楽にまじって、人声やグラスのぶつかる音がきこえた。その騒音からすると、かなりの人数があつまっているらしい。
尚たちはホールの脇にある小部屋に入った。木製のロッカーが並んでいた。
「感じのいい男たちでしたね」
ドアを閉めると、背後にあごをしゃくって、荒川が言った。尚は緊張のあまり、笑う余裕がなかった。それにまだ尻に、荒川の逸物が入っている感覚が残っていて、それが落ち着かない気分にさせていた。
荒川が服を脱ぎだすと、尚もあわててそれに倣った。
(虎穴に入ったんだ、恥ずかしいなんて言っておれない)
尚は自分に言い聞かせた。
裸になると、急に無力感に襲われた。彼の性器は縮こまって、薄い陰毛から丸い頭だけが覗いている。そっと荒川を見ると、筋肉質の立派な肉体、ギョッとするほど図太い性器、それらが目に入った。昼間すでに見ているとはいえ、あらためて尚は、どぎまぎした。
音の聞こえてくる奥の部屋に入ったとたん、尚はたじろいだ。
(ひどい――)
室内は、淫乱、放逸の修羅場で、太ったのや痩せたの、白や褐色、黒い肌の体が、入り乱れていた。
大きな部屋だった。タバコと大麻、酒のにおい、人の体臭で、息がつまりそうだった。
ロックミュージックが部屋の空気を振動させていた。煙が天井にたちこめ、シャンデリアのまわりで渦巻いている。
家具はほとんど片付けられ、低い寝椅子が数脚おかれていた。片隅のバーには、グラスが積み上げてあって、バーボンやワインのビンが並んでいた。
バーの横の壁ぎわに大型のテレビがあり、画面では老若ふたりの男が素っ裸になって、真昼の野原で性交していた。
部屋の中にいるのは、予想通り全員が男性だった。皆一様に、一糸まとわぬ全裸で、顔のマスクを外した男もいた。生白い包茎が多かった。中には割礼したのもある。ボリュームのある異国人の性器の陳列に、尚は尻込みする思いだった。
二ヶ所の寝椅子で、カップルが絡み合っていた。贅肉がつき、丸っこく脆弱な白い体と、筋肉質の細い体が、淫靡にうごめきあっている。それを取り囲んで、ほかの男たちが見物していた。
ふたりは、男たちの間をすり抜けながら、聡の姿を捜した。数人の男が、好奇心を顕わにしてこちらを見た。中には手を出して、尻や性器を触ろうとする者もいた。東洋人らしい若者も何人かいたが、尚の息子はいなかった。
「ここにはいない。2階に行きましょう」
荒川が、ささやいた。彼は若いだけに、部屋の雰囲気に刺激されて、勃起させていた。
よく発達した亀頭部は、こぶが盛り上がったように禍々しい形状をして、思わず見とれてしまうほど逞しかった。数人の男たちも気づいて、もの欲しそうに見つめていた。
部屋を出て、広い階段をのぼりながら、尚はかすれた声で言った。
「彼らは、どうやって集まったのだろう?裕福らしい年配者も、たくさんいるようだが」
「いいですか、ここは自由の国、アメリカですよ。ゲイにも市民権を、といった運動も盛んです。それに、類は友を呼ぶって諺もあるでしょう」
そこまで言って、荒川は口を閉ざした。ちょうど2階から、中年男が階段をおりてくるところだった。中肉中背、ハゲで赤ら顔の白人男だった。突き出た腹の下で、包茎のボリュームたっぷりの性器がぶら下がっている。
男はふたりを見ると、にんまりと笑いながら、腰を振った。哺乳ビンのような生白い性器が揺れ動いた。男は呂律のまわらない声で、尚に話しかけた。
「ヘイ、ダディ、おれとファックしようや」
「あいにく、おれがパートナーだ」
荒川はそういうと、尚の腰に腕をまわして、男の脇をす
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